【書評】TeamGeek
はじめに
この本はGoogleのプログラマである著者が、ソフトウェアエンジニアリングチームの働き方に関する講演のネタを1冊にまとめたものです。
お硬い本ではなく、ラフな話口調で読みやすい。エンジニアリングチームの「あるある話」を題材に著者や著名人の言葉で語られます。
「わたしの悩みって、Googleで働いている人も感じていたのか、こう考えれば良かったのか。」と今までモヤモヤしていた感情がすこしスッキリした。
例えば、「〇〇さんのせいで自分の生産性が落ちている。」と他人のせいにした経験はないですか?
そうではなく、自分でチームを良い方向に導くためのコツを本書は教えてくれます。
・他のプログラマとチームで仕事をしている
・チームメンバーと健全な関係をつくる方法を知りたい
・チームをリードする方法に悩んでいる
こちらに当てはまる方はぜひ読んでほしい本だと感じました。
本当に多様なパターンで語られているので、読者の立場によって響くエピソードは全く違うと思う。この書評では自分が心に残ったことを書いていきます。
面倒くさい人間関係をどうするか
まず最初に共感したのは下記の文章。
これだけは言っておきたい。社会的問題は難しい。人間はよくわからないし、予測できないし、付き合うのも面倒だ。そんなことよりも予測可能はコンパイラと遊んでいる方が気が楽である。どうして人間関係なんかに頭を悩ませなきゃいけないんだろう?
人と話すのが苦手なプログラマが言いそうなセリフ。コミュニケーションが好きな私でも共感してしまうくらい、人間関係ってめんどくさい。
前職ではホテルのフロント(チェックインしたり、客室管理したり)業務をしていたので人間の面倒くささは嫌というほど経験している。
プログラマはコミュニケーションを取らない時間があって楽だなぁと思うくらい。
本書では面倒くさい人間関係についてこう言っています。
人間関係の力を過小評価してはいけない。確実にプロジェクトよりも人間関係のほうが長続きするし、なにかを成し遂げるためには必要。
これは私の経験からも納得の言葉だった。困った時は、見知らぬ誰かではなく、見知った(時には面倒くさいと感じていた)人が助けてくれる。
プログラマという職業上なりがちな「コード書いてるんだからほっといてよ」「コミュニケーションは最低限にしてほしい」なんて悲しい事を言われない/言わないようにしたい。
エゴをなくす
「エゴ」とは「自我、自尊心、利己主義、うぬぼれ」という意味。
「わたしの言っていることは正論だし、経験則から間違っていないのになぜ会社はわかってくれないんだろう」と思ったことはないですか?
また、そういう相手に態度を改めてもらいたいと思ったことは?
本書ではこう書かれている。
「謙虚」は自分の意見を言わず黙ることではない「自信」はあったほうが良いがひけらかしてはだめだ。自分のやり方で行くというエゴを主張すると小さなトラブルと戦うことになる。これはムダな努力!
組織を自分の仕事に使うことを学べば、組織を自分のやりたいよう変えられる
つまり、エゴは捨てて視野を広げ、組織をうまく使って自分のやりたい方向へ導けってことかな。
先輩エンジニアが納得しないのに、「前のプロジェクトではこの設計でうまくいったから、今回もうまくいくはずだ!」と自分の意見を押し通すのはエゴだと思う。でも、「前のプロジェクトではこの設計で成功した」という情報共有はするべきだと思う。
自分の発した一言が「エゴな発言」か「プロジェクトに必要な発言」かを考えながら議論したい。
接し方で他人は変わる
わたしは友人からこんな愚痴をよく聞きます。
「彼氏の行動が子供っぽくて嫌。付き合う前は男らしかったのに。」「子供が生まれてから旦那も子供のようになってしまった。ずっとゲームしていて家事も手伝ってくれない。」
これは友人が彼氏・旦那さんを子供のように扱うからだと感じた。
これを仕事に置き換えると、「部下が頼んだ仕事しかしてくれない!」かな。よく聞く愚痴の一つだと思う。
本書は良いマネージャについてこのように説明しています。
マネージャーが親のように振る舞えば、エンジニアは子供のように振る舞う。マネージャーがエンジニアを「信頼」すると、エンジニアはポジティブなプレッシャーを感じてその信頼に応えようとする。
どうやってタスクを完了させるかではなく、リーダーはチームのために道を作る。チームの安全と安心に気を配る。(どうやってタスクを完了させるかはチームに考えてもらう)
確かに上司から子供扱いされると、甘えてしまい仕事に身が入らないことがある。
これを読んで自分なりに考えた良いマネージャーは、最初からタスクのやり方を教えてあげるのではなく、「困った時に聞きやすい雰囲気を作れる」や「助けを求められた時に対応できる余裕がある」「事前にドキュメントを整備しておく」なんて人だと思う。
自分はマネージャーではないが、他人へタスクをお願いする時にやり方を伝えすぎていると思う。それは自分のやり方がある人にとってはムダな時間となってしまう。謙虚・信頼・尊敬の気持ちで相手に仕事を任せる・任せやすい環境を自分が作る、という仕事の仕方をしていきたい。
さいごに
本書が読者に伝えたいのはソフトウェア開発に限った話ではないと感じました。
ソフトウェア開発を題材にしているので、他業種の方は共感しずらい箇所があるかもしれない。けど「何を考えているか分からない他人へどう接するか」を本書は教えてくれると思う。
たまたま私がエンジニアを職業としておりこの本と巡り会えて良かったと感じました。