遠藤周作『沈黙』―将来の救済を信じる者は眼前の苦難をどう捉えるか―
突然の苦難が襲ったとき、神による将来の救済を信じる信仰者は何を考え、どう生きるのか。このテーマの探究はユダヤ教・キリスト教の聖典とされる旧約聖書に収められている『ヨブ記』にはじまり、ごく最近ではテッド・チャンの短編SF作品でも取り上げられている。 キリスト教神学においては普遍的なテーマであり、カトリック作家遠藤周作もまた、このテーマを中心に据えた『沈黙』という作品を著している。この「将来の救済を信じる者が眼前の苦難をどう捉えるか」という問題は前述のキリスト教に限らずあらゆる