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設計者はワタシ~U邸家づくりルポ~第3回

●其の3 いよいよプランを練る、練る!からのどきどき打合せ の巻

U様から敷地の測量図が届いたので、敷地の図面を作ります。
最終的には近隣の建物の位置や窓の位置・高さまで細かく測るのですが、まだご提案段階なので、そのあたりは目視での想定で作ります。

さて、いよいよプラン開始。
まず二世帯の大きなゾーニングです。
U邸は戸一枚で繋がり、それぞれにキッチンもお風呂もある、いわゆる完全二世帯です。玄関も二つ。電気・ガス・水道メーターも全て二つずつです。一階も二階も最大の床面積は法規によって決まっているので、一階が親世帯と子世帯の玄関と部屋の一部、二階は全て子世帯というが自ずと決まります。それからそれぞれ南向きにテラスと居間(リビング・ダイニングキッチン)を配置してみます。

全ての部屋が良い日当たりにできれば理想ですが、なかなか都会ではそんな土地はありませんよね。
設計でできるだけカバーしたいところですが、ある程度の割り切りは必要。ならばどのスペースを優先させるか?
ワタシなら「朝食を摂るところ」です。
リビングルームはどちらかというと一日の疲れを癒す夜の落ち着きのほうが大事で、日当たりではダイニング優先、と考えています。もちろん、リビングで過ごす休日の昼下がりが何より大事という方も、燦々と日が注ぐ玄関から外へ出て行きたいと考える方も、朝爽やかに入浴するのが一番楽しみという方もいらっしゃると思いますので決まりはないのです。

プランを練る…の初期。
ざっくりとラフスケッチを描いてみてだんだん考えを進めます。
この段階での作業は紙とペンさえあればいつでもどこでも出来るので、移動の電車の中、ランチが運ばれてくるまでの時間、歯医者の待ち時間など、隙間の時間も使ってひたすら練ります。

ラフスケッチ 二階
ラフスケッチ 一階

平面的に考えを少し詰めたら、断面図(建物を縦に切った図)を考えてみる、という作業を繰り返します。いわゆる「間どり」だけを先に考えることはありません。提案するのは「間どり」だけだとしても、立体的に考えておかないと後で困ったことになります。

ラフスケッチ 断面

このまま際限なく考えを詰めていきそうになるところで、打合せのため一度まとめに入ります。
まだまだまだ練りこみ足りないものの、ラフプランをまとめて、U様とお会いします。かっちりとした図面に取りかかる前に、この方向に進んで良いかを確認するためです。初めて敷地と要望に対する設計者としてのワタシの回答をご提案する打合せです。どきどきします。

二階 平面図
一階 平面図

U邸においてワタシが一番重視したものは、テラスに繋がる明るい食事スペース、反対に割り切ったものは、玄関です。このプランでは「明るく広々とした玄関」は完全に諦めています。道路から玄関へのアプローチも玄関自体も必要最小限の広さとし、二世帯とも南の正面ではなく隣の家が接近した東の脇から入っていく計画です。その分南側は全て居室にし、できるだけ庭を広く確保することを優先しています。この構成に対しU 様から「いやいや、狭い玄関なんて全然ダメですって!」と言われれば、どんなに内部を詰めても意味がありませんので、まずはそのあたりをご確認いただきます。
幸いこの方向で良さそうで安心しました。

次に親世帯の広さです。
このプランではトイレ、洗面、脱衣を一つのスペースにまとめ、居間は畳敷きでコンパクトにしてありますが、果たしてこのくらいで良いのかどうか。ちょっと狭いかなぁ。二階全て子世帯なのは決定ですが、一階の親子境界次第で全体のプランは変わってきます。U 様の子世帯については、以前「住まいの計画書づくり」で皆様そろってお会いし、3日計5時間お話していますので、ある程度イメージができるのですが、お母様とはこの時点ではまだお話ししていませんでした。ご要望を伺った上で進めていくこととして、お持ち帰りご検討いただくことにしました。

ちなみに、ワタシはどちらかというと少し狭いと言われるくらいで初めはご提案します。その後打合せを進めてイメージを共有しながら、必要な広さを探していきます。U 様へのご提案も床面積を最大としたものではなく、調整できる部分を残しています。最初から床面積いっぱいにしてしまうと後で調整が難しいこと、狭くするほうが抵抗があること、もちろん広ければそれだけ建築費が上がることもあります。

次回はさらにプランを練っていきます。

(その3 終わり)
執筆 住まいのナビゲーター/一級建築士 古屋英紀


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