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恋は熱が冷めるまでが楽しくて。

自分の気持ちに、素直になるべきなのは同感だけど。その選択肢をしたからといって、必ずしも正しくなるとは思えない。そういうのは傲慢に感じているくらい。自分の感情という強欲さの蓋を、自分の為に取っ払うべきだとする、そんな正しさを取るくらいなら、と。僕は言えばよかったタイミングで、彼女へ素直な自分の気持ちを伝えなかった。

そうやって、言わなかったからこその後悔とかの感情は、やっぱり渦巻いていたけど。でも、そんなの大抵の人間は永遠に引きずるわけでもないだろうし、その気持ちを忘れてしまうか、慣れてしまうぐらいの結果に落ち着くのだろうって思ってる。僕にはどのような選択をしたからと言って、これが一番正しかった答えなんて、ないんじゃないかとさえ思う。

今、そうして僕は久しぶりに、そんな気持ちをようやく忘れられた最中。過去に好きだった彼女とお酒を交えながら話していた。そうした、過去の自分の気持ちへ自己認識をしていながら、楽しく時間を過ごしている。

確かに過去に感じていた、彼女に対する好意とかそういうものが、僕にはあったけど。そんなものを、今になっても引きずっているわけでもないのを確信し。むしろ笑い話に出来るくらいの程度じゃないかとさえ思ってる。好きとかそういう感覚を忘れてしまったからこそ、楽しく過ごせてるように思う。

直近の話で、彼女には彼氏もできたみたいだけど。僕が知らない場所でも誰かの時間は確実に進んでいるんだとか、無駄にどうでも良いことを考えていたくらいに。とりあえず「おめでとう」と一言を言えて。彼女は、幸せの真っ只中なことなのだろうと想像しては、共感する気持ちを含めながら祝うようにしていた。

そこで僕はそういう相手にはなれなかったと、さりげなく思いながら。そうした事実に悔しくは感じず。気持ちを忘れられていたおかげで、人の幸せも喜べるようになっていたのだと思える。

だからこそなのだろうか。自分への可能性のようなものが、更にゼロに近いたような確信が更にまして。歯車がカチリとハマるような感覚があって。それは悪く思うようなことではなく、むしろ気が楽になったような。たしかに、僕は消えていった過去に感じていた感情が、ようやく他人事のように思えていた。だから、そうした気持ちを、もう言葉に出してしまってもいいんじゃないかと思えていたくらい。

それは確かに僕の感情であったけど、今には全くないような。そんなに思い入れもなく、深刻さもないからこそ。僕は当時に抱いていた彼女に対する好意を、ただの酔った勢いにでも任せてしまったかのように、会話のネタとして口に出していたかった。

でも、それで何かが払拭されるわけじゃない。

それは、付き合えたらいいなとか、あわよくばの感情とかも込められてない。なんとなく、過去のあの時に僕は彼女と付き合って見たいとか、欲望を考えていた時のことを喋りたかった想いがあって。お互いに歳もとったし、空いていた期間にも僕の知らない彼女なりの人生の岐路もあって。僕にもそうした心の変化のような経験をしたから、別に、今になってから過去が変わるわけでもないって分かっているが。

それでも無駄にでも隠していたモノを、どうなってもいいこのタイミングで共有してみたかった。どこかで自分には素直になっておきたい感情があるから、客観的にはタイミングが今ではないだろうとか思えるだろうし。こういうことを言うのは、きっと人によっては「余計な一言」として扱われるのだろうかとかも考えたけど。

どうしても嫌われるのなら今の方がいいだろうと僕には思えてしまい。余計な一言だったとしても、これが最後の一言になろうが「まぁそれでもいいか」と言う投げやりな気持ちで伝えてしまっていた。

そう言うことを聞いたら、普通の人ならなんと思うのだろう。でも、少なからず彼女の場合は驚いたような反応を少しは見せていたけど、冷静になってから「もしかしたら君と、付き合う可能性があったのかもしれないんだぁ」とか軽い反応をされた。でもそのような反応の方が僕には嬉しかった。なんとか引かれてないようすで、僕は何より安心している。

彼女の言動から僕が思えたことは、案外今からどうしようという衝動的な感情さえも別に湧いて出てこなかったこと。でも当時に抱えていた、自分の中にあった強欲な好意みたいなものが僅かにでもあったら、そんな言葉を聞いてから泣いていたかもしれないって思えきていて。

僕は彼女に対する気持ちがなくなっていたからこそ、明確に好きだった事実を伝えられたのだろうけど。もしも、未だに彼女に未練でも抱えていたとしたら、絶妙に重い空気でも流れて。ただ単に重い奴...とでも思われ、妙に嫌な記憶を一つ作りだしたのだろうと思える。

人間、恋愛をしたくなるほどの感情があるほど、相手への迷惑をかけるような態度をとってしまうのだと思うが。僕は、気持ちのない言葉を、ようやく本人にへと伝えられてから。

全ての熱が冷めた気がして堪らなかった。

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