経験が豊富そうな女。
「私、男の人は嫌いなんだよね。」
経験の豊富そうな彼女がそんなフレーズを僕に言って、どのような意図があったのかと僕は考えた。彼女の、その不必要な告白が、ロクでもない自己紹介のように僕は捉えた。
こんなワンフレーズにどんな心理が含まれてたんだろう。きっと彼女は、そんなマイナスな印象しか人に与えないようなフレーズを、口走らせなければよかった気もするが。そうではなく意図的だったのであれば、なにかしらを感じて欲しいのか、なにかしら考えて欲しいのか。結局のところ、このフレーズがこの人にとっての自己表現の一種なんだろう。
きっと経験は豊富な女性であったが。ただ、この人から感じる闇っぽさは、きっとこれまでに出会ってきた人達が悪かったからだろうと思わされる。"男の人を嫌い"になるほど、これまで、あまり"良い男"との出会いがないんだろうとの裏返しに感じた。
それなりに多くの恋愛の経験を積んで、そしてその過去の経験を並べて比べて。それが自分の首を絞めてきました、かのような。
経験だけは重ねてきたけど、偏った人達との出会いを多くして、偏った考え方に陥った自己紹介。そんな彼女的には凄く人の深い部分、本質に辿り着いた気になって"人間にはもう呆れた"かのような、その雰囲気には自信を感じて。でも、それがちっとも僕には深く思えず、ただ問題を放棄したような人に思えて。
僕に映る彼女の姿は、寂しそうな人に見えるが。きっと本心では、そんな過去をも救ってくれそうな人を探しているように感じさせられて。もしかすると彼女は悲劇のヒロインのよう、騙されてきた女の人のように見せて、自分を正当化していたいのだろうか。
実際のところは知らないが。どんな過去があろうと、深入りしたら沼にハマるような気がしたから。素直に聞けば彼女思う壺のように、このフレーズに罠の感じが凄くあって。
別にそうした過去が悪いわけではないが。意図的にもそうした事実を、彼女本人が受け入れないのが問題なのかもしらない。きっとそれが、この人にとっての落とし穴を作って、目を逸らした結果のような。
このような考え方になれる人なのだから、それほども苦労せずに、受け身でも過去には恋愛経験を軽く積めてきたのだと思う。目の前に価値があるから、こんな罠にもハマる男は、わざわざハマりに行くんだろうな。だからこそ、彼女は余計でロクでもない経験を増やしてるんだろうな。
そして受け身でも恋愛できる余裕が彼女にはあるからこそ、わざわざ初めのフレーズさえ、突き放すように発言さえできてしまうんだろう。
なんら苦労もせずに。それはきっと容姿が良いからだとして、表面的に恋愛出来てしまえるデメリットのような。数だけ増やして考えもせずに、溺れるかのように気持ちよさだけ味わい。簡単に理想恋愛を繰り返し出来てしまえるから、堂々と変なことができて。
単純に自分の強みである武器の価値を彼女は知っているからこそ、汎用性のない彼女独特の世界観を作り出していたきがして。
出来ることなら彼女は、悲劇のヒロインのように振る舞った方が良いと考え、呆れをみせながら寂しさを抱えてるように思わせて。結局、意図的さがどうしても僕には伝わってくる。
どのみち、この女性に関しても何かしらの寂しさを感じているからこそ、そんな不自然に感じたテクニックさえ扱うんだろう。また、どっかしらで彼女が感じている、その彼女なりの寂しさは埋められるように、またどこかしらの誰かに同じ事を繰り返すんだろうか。
とにかく、彼女は誰かに求められては愛されていたかったんだろう。
何となく、地雷の女って感じが漂ってた気がしてならなかった。