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横山彰人
2019年10月9日 17:55
第3話 記憶の原風景武夫と咲子が始めて出会ったのは、武夫が就職して四年目に咲子が新入社員として同じ総務課に配属され、近くのイタリアンレストランでの歓迎会の時だった。咲子は部長からあいさつを促され緊張した顔で、「上田咲子と申します。京都で生まれ育ちました。京都しか知らへん女どす。東京の会社に就職するのは両親は反対どしたけど、なんか東京の空気を吸って一回りも二回りも自分を大きゅうしたいと思いまし
2019年10月8日 14:58
第2話 町屋の家咲子の生まれ育った家は京都市上京区西陣で、両親は高級織物で有名な西陣織を扱う小さな問屋を営んでいた。西陣は江戸時代以前においてすでに一つの機業地として存在し、幕府の保護もあり、絹織物の産地として、歴史と伝統は古く、絶頂期には五千軒もの織屋があったという。近年においても、戦争中及び戦後の沈滞期はあったものの、日本の復興、高度成長と共に西陣は益々隆盛を極めた。その時代に咲