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『建築をめぐる三人家族の物語』

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これまで、「家の構造」や「間取り」がいかに人間の精神や行動に、そして家族の暮らしに影響を与えるかを、著書をはじめ様々な機会を通してメッセージを送ってきました。  しかし、これか…
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#毎日note

建築をめぐる三人家族の物語

建築をめぐる三人家族の物語

第17話 何が間違いだったの?
咲子は、もうこれ以上耳をふさいで聞きたくなかった。「やめて下さい」と叫びたかったが、必死で我慢し三つ目の原因の話を待った。

「三つ目は、これが一番やっかいな問題でもあります。光君が名前を呼んでも反応が鈍かったり、話しかけても話さないというこの状態は、恐らく公園に連れて行っても、友達と一緒に遊ぶことすらできない状態ではないでしょうか」

 確かに光は、友達と一緒に遊

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第16話 高層階の罠
小児科の先生の話は続いていた。病名を告げられ動揺を必死で抑えている母親が取り乱さないように配慮をしているのか、目に笑みを浮かべ光の病状、原因、今後の対策をゆっくりかみ砕くように説明してくれたが、咲子は半分も理解できないでいた。理解しようとする冷静さを失って、黙って聞いていた。

「まず無気力症候群といっても、表れてくる症状は人によって違います。光君に特に見られるのは、会話力が

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第15話 引越し
引越しの前の一ヶ月は、目の廻るような忙しさだった。リフォームの打合せ、引越しの準備や整理、引越しセンターの見積り、マンションの引渡しまでの事務手続き、そして近隣の挨拶まで、一切咲子一人で行わなければならなかった。

 武夫は年度末という会社が忙しい時期にぶつかったせいもあるが、家のことはお前に任せてあると言わんばかりに、日曜日の休みの日ですら、引渡しの立会や工事中のマンションにも

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第14話 リフォーム
ようやく契約をしたのは、初めてマンションを探し始めた日から一年と二ヶ月目の十二月上旬、街にジングルベルの音楽が流れている頃だった。渋谷の文化村界隈や道玄坂の街路樹には、ブルー、白、赤の様々なイルミネーションが輝き、東京で一番といわれるファッションの発信基地渋谷の街が、さらに一段と光輝く季節だった。

咲子は、ようやくマンションが決った安堵感と共に、二ヵ月後にはこの街から離れる

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第13話 手付け
 翌日、吉川と駅で四時に待ち合わせをし、マンションまで歩けば十五分程だというが、夕方なのでタクシーで向かった。ワンメーターで、車の窓から見る街並も新しく美しい。

目的のマンションに着き、カードを差し込むだけでドアが開き入って正面の中庭には、現代風の彫刻がありそばには噴水があった。間接照明が中庭全体を包むように浮かび上がらせていた。エントランスロビーの床と壁は、落着いた茶系の御影

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第12話 めったに出ない物件
武夫が帰って、今日の吉川との話をしたら、「いろんな要望の中で諦める項目があれば、その分だけ物件が見つけやすくなるということなんだろ。とすると、ドアツードアで会社まで一時間以内という条件をやめ、二時間以内にしようかな」と言い出した。
「だめよ、会社まで二時間なんて。ますます帰りが遅くなって、私や光との会話が少なくなるじゃない。光とのスキンシップもこれ以上少なくなったらか

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第9話 マンション探し
マンションを選ぶには、とにかくいろんなマンションに足を運び見ることが大切だと聞いて、咲子はこの一ヶ月の間、頼んでいる不動産会社の担当者吉川と、五軒ほど光をつれて見て歩いた。五軒のうち、武夫と一緒に行ったのは一度だけ。仕事が忙しく、継続して見に行くことは出来ないのだ。

咲子が見学を通じて分ったことは、確かに吉川が言った通り足を運び見ることは、たとえ条件が合わなくても無駄とい

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第7話 親の援助
購入資金の半分程度なんとかなれば、住宅ローンと合せれば希望に合ったマンションを購入できるのではないかと、咲子なりに考えていた。

武夫は、子供のためという言い方が気に入らなかったが、仮に五年先に購入を延ばしても頭金をためるのがせいぜいで、咲子が希望するマンションも買えないことは年収からいって分っていた。内心咲子の父親から援助してもらえるのなら願ってもないことだと思ったが、何となく

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