見出し画像

2004年 読売ジャイアンツ(3位)

「4番打者だけ揃えても野球は勝てないよ」とはよく言ったもので打順にはその打順ごとに役割があってその役割を果たすことで初めて線になって繋がると私は思ってるんですよね。
ところで本当に「4番打者だけ」で打線を組んだらどうなるのでしょうか。
プロ野球史には強力打線として後にも語られる打線がたくさんありますが今回見ていくのは2004年の読売ジャイアンツの「史上最強打線」
この年の巨人のチームHR数は歴代最多の259HR。メンツも豪華でまさにスター集団と言って差し支えのない打線は果たして優勝したのでしょうか。
今回は2004年の巨人を見ていきたいと思います。


史上最強打線爆誕

2002年に巨人は原辰徳監督のもと1年目にして優勝・日本一を果たします。
しかしこのオフに絶対的4番の松井秀喜がMLB挑戦。攻守においてトップレベルであることに加えチームの精神的柱であった松井の流出をなんとか埋めるべく、巨人はヤクルトから7億2000万(これは当時の最高年俸額)でロベルト・ペタジーニを獲得しましたが、本職のファーストには清原和博がいたため無理くり外野守備で起用。するとペタジーニはあさっての方向にバックホームする「ペタキャノン」を連発し、攻撃面では良かったものの守備では松井の穴を埋められず、結局2003年は阪神の独走を許し3位で終えました。

するとこの年限りで原監督が電撃退任。前年日本一に導いたとはいえ1年結果が残せなかっただけでこの仕打ちは厳しいと思いますが常勝軍団ってこういう感じなのでしょうか(実際は原監督とフロントの関係の悪化があったとされるが)。
後任には巨人黎明期のエース・堀内恒夫が就任。
堀内監督は就任会見で「私の野球は投手を中心にした守りのチーム」「ファンの方にわかりやすく、楽しい、厳しい野球をお見せします」と話しました。
ところがその意に反してフロントはダイエーの主砲・小久保裕紀を無償トレードで、近鉄を自由契約になった01年HR王で03年は51HRのタフィ・ローズを相次いで獲得。小久保に関してはは03年は大怪我でシーズン全休、フロント陣との不和もあってトレードに至ったわけなのですが…

ただこれで当時の巨人は生え抜きの強打者(高橋由伸、阿部慎之助などなど)と他球団で4番を打っていた小久保、ローズ、清原和博、江藤智、ペタジーニが在籍しており、長嶋茂雄終身名誉監督が「史上最強打線」と称するなど開幕前から期待が高まっていました。

小久保浩紀

野手陣

まあそりゃこんなえげつないことになりますわな。
2桁HRを放った選手が9人いるというやばさもありますが、その上30HR以上放った選手が4人。40HR以上が2人というとんでもない状態に。
新加入の小久保は巨人右打者史上初の40HRとなる41HRを放ち、前年出場なしからの復活を遂げカムバック賞も受賞。打率も3割乗せてるのえぐい。
ローズは45HRを放ち、期待に応え2年連続のHR王に輝きました。
ペタジーニも30HRにはギリ届きませんでしたが素晴らしい成績。
生え抜き組も仁志敏久が28HR、清水隆行が打率3割に乗せ、高橋由伸、阿部慎之助は3割30HRを達成しています。「なんか二岡智宏打ってなくね?」と思えてくるくらい異常な打線ですね。
ってかこれに代打で清原和博(12HR)、江藤智、元木大介が出てくるのかよ…

ただこんだけ打ってる割には100打点してる人いないんですよね。これには3倍打点ニキもぶち切れでしょう(まあ理由はどんな場面でもタイムリーじゃなくてHRで解決しちゃうからなんですがね)。
あと大砲を並べた弊害で盗塁数がかなり少なく、「チームで」僅か25盗塁(チーム内盗塁王は鈴木尚広の9盗塁)でした。阪神の赤星憲広(64盗塁)にダブルスコア以上をつけられてます。

とはいえHR数は歴代最多の259HR打点も719打点とどちらもリーグ1位。チーム長打率は.483と5割に迫り、OPSは.822とリーグ内で突き抜けていました。

タフィ・ローズ(36)
36歳で45HR打つ怪物(意味不明)

投手陣

「じゃあなぜ優勝できなかったんだ!」と聞かれたら間違いなくここでしょう。
先発陣では上原浩治が防御率2.60で最優秀防御率、13勝5敗(.722)で最高勝率のタイトルを獲得していますが、上原以外の先発陣が防御率4点台~6点台のオンパレードとなってしまったことでしょう。(逆にラビット全盛期に狭い東京ドームでいい結果残せてる上原が凄いまである。)
巨人って結構意外に思えるかもしれないですが投手も強みにしていた球団なんですよ。2002年も投手力も良かったし(防御率もリーグ1位だし)。
もともと投打のバランスが良かったチームなのに巨人が低迷してた(球団比)2003~2006年は打に全振りしてたかなあと思います。

またこの年痛かったのは守護神の固定ができなかったことですね。
チーム内最多セーブが久保裕也(8S)なんですが、実際ずっと救援をやっていたわけではなくもともと先発でしたし、それに次ぐ5Sを挙げた2年目の木佐貫洋もまたもとは先発。
チーム内最多登板はロッテから移籍したB.シコースキーの62登板でした(5S)。
というかそもそも大差の試合が多くてセーブ機会なんてなかったのでは…

上原浩治
黒田博樹(広島)もそうだけどラビットボール全盛期に
狭い球場を本拠地に最優秀防御率とか獲るの本当に凄いなと思う

シーズン振り返り

開幕カードの阪神戦では3タテを喫してしまいます。
4月13日の中日戦では最大6点差をつけられながらも打線が爆発し、延長12回にサヨナラ勝ち(11x-10)するこの年の巨人らしい試合がありました。
なんといっても4月は阿部慎之助が絶好調。4月だけで16HRを放つ大活躍でした。
しかしチームとしては借金1で4月を終えました。
6月4日のヤクルト戦では清原和博が2000本安打を達成。しかしこの試合で敗れ8連勝がストップすると6月下旬に5連敗と4連敗で6月は負け越し。特に23日の中日2連戦とヤクルトの試合で3試合連続2桁失点と投手が大炎上しました。
オールスターでは仁志、ローズ、小久保、高橋、二岡、阿部、上原、工藤の8選手が選出されました。
7月25日の横浜戦では巨人が8点差を大逆転するも、金城龍彦のサヨナラHRで敗れるなど7月もそこまで勝てず。
8月17日、この試合で先発した工藤公康が200勝目を達成。しかもこの試合の決勝打となったのは工藤自身のプロ初HRとなる2ランだったんです。
個人的に巨人の歴史の中で最も好きなシーンなので動画置いときます。
何が凄いって工藤、この年41歳なんですよ…(どういうことや)

ただこういう試合がありつつも勝敗は5割ペースで推移していました。

一場事件

8月13日に球界である不祥事が明るみに出ます。一場事件です。
明治大学の一場靖弘に栄養費という名目で球団から裏金を渡していたことが発覚したのです。当時のドラフト制度には自由獲得枠というのがありましたが有力選手を獲得するために億単位の裏金が横行。そのため資金力のある球団がかなり得をした制度でした。この結果渡辺恒雄オーナーが辞任。原前監督とも対立した三山球団代表も辞任するなど大きな騒動になりました。
ちなみに渡辺の辞任はこの年球界に巻き起こった球界再編騒動に大いなる影響を与えることになります。

ちなみにこれは7月の出来事↑
本当にハメ取材だったのか()

話を戻しまして22日、広島戦でローズが40号HRを放ち4年連続40HRを達成。
9月22日にはプロ野球新記録のチーム250HRを達成するも敗戦。
翌23日には小久保が40号HRを放ち、巨人右打者として初の40HRを達成しました。
9月以降2位は堅いかと見られていた巨人ですが9月は勝率5割で、3位のヤクルトが終盤戦にかけて勢いに乗ったこともあり、結局捲られ3位でシーズンを終えました。
皮肉なことにこの年セ・リーグで優勝したのはリーグ唯一のチーム防御率3点台と投手力を活かして落合新監督のもと大型補強もしなかった中日。実際その中日には五分で大きく勝ち越せなかったこと、また4位の阪神に対し借金7と苦戦したこともあり(実際03~05くらいは阪神が巨人をカモにしてた)、首位と8ゲーム差の3位で終了。史上最強打線は259HRを放ちながら優勝できなかったわけです。

悪夢の2005年へ

こうして2004年の戦いを終えた巨人。
04オフの大きな関心事の1つが清原和博の残留問題でした。
清原はこの年2000本安打を達成したものの、6月に死球を受け骨折、長期離脱を余儀なくされました。シーズン終了後には堀内監督の構想から外れたことが分かると清原は滝鼻卓雄新オーナーに直談判。「編成権は監督にあるのか、フロントにあるのか」と話したところ巨人との契約が残り1年あったこともあり、残留することになりました。どうやら清原は球団から直接話してくれなかったことを不安に思っていたようで点滴を受けるほど追い込まれていたそうです。清原自身「泥水をすする覚悟で」と背水の陣で翌年への巻き返しを誓いました。
一方清原と同じくファースト被りだったペタジーニが退団することになりました。
またこの年はローズが外野の要であるセンターで起用されたり(←!?)、守護神の確立ができませんでした。
そこでディフェンス強化に向け2004年に広い守備範囲と強肩でWS制覇に導いたゲーブ・キャプラーを獲得。また守護神には前年アストロズで74登板24Hをマークしたメジャーリーガー、ダン・ミセリを獲得。
ドラフトではシダックスの野間口貴彦八戸大学の三木均を自由獲得枠で獲得。このように補強を十分に行った巨人は「あの」2005年のシーズンを迎えるのでした。

デーブ・キャプラー

いいなと思ったら応援しよう!