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1998年 千葉ロッテマリーンズ

「大型連敗」

応援しているチームが大型連敗するとファンとしては気持ちも沈みますよね。(俺も阪神が開幕9連敗したときは気が狂いそうになりました。)
大型連敗すると一気に優勝争いから脱落するだけでなく、ほとんどの場合最下位、良くてもBクラスは確定ですし、そこからの巻き返しは容易なものではないでしょう。
ところでプロ野球史上最も長く連敗したチームはどこでしょう?
プロ野球ファンにとっては簡単かもしれませんね。ということで今回はNPBワーストの18連敗を記録した1998年の千葉ロッテマリーンズを見てみましょう。


前提:バレンタイン(1次)解任後

ロッテは暗黒の中にいました。86年に4位に終わると94年まで8年連続Bクラス。しかし95年に後にロッテを日本一に導くボビー・バレンタインが監督になるとチームは2位と躍進します。
ところがバレンタインは広岡達朗GMと揉めた末この年限りで退団。96年には広岡子飼いの江尻亮を監督にしますが、チームは5位転落。江尻は退任。広岡も責任を取らされGMを退任。この時広岡は「ロッテは10年優勝する機会を逃した」と語ったとされています。

ロッテは93年から3シーズン横浜の監督をしていた近藤昭仁を監督に就任させます。しかしこの頃のロッテといえば選手層はとても薄く、特に捕手と先発投手陣は悲惨でした。
捕手だと定詰雅彦が阪神へトレード、ベテランの田村藤夫はダイエーにFA(これはロッテ初のFA移籍選手)、山中潔が引退。
残ったのは中日の第3捕手で出番がなくロッテに来た吉鶴憲治、この年のドラフトでロッテ逆指名した清水将海[青山学院大]くらいです。
先発では2年連続最優秀防御率の伊良部秀輝がフロントと揉めメジャー移籍。2年連続2桁勝利を達成したエリック・ヒルマンも球団への不信感から巨人に移籍。
そんな感じで迎えた97年は最下位。成本年秀・河本育之のダブルストッパー体制を組んでいたものの成本が右肘の腱が切れ1年は出場できないし、即戦力捕手のはずの清水も故障。主力の初芝清や堀幸一も不調でした。
ただ若手の藪田安彦は規定投球回を投げ、新人の小坂誠は56盗塁という新人最多記録を樹立して盗塁王、福浦和也もこの年初の1軍出場を果たしました。

98年シーズン開幕前

ドラフトはこんな感じで即戦力投手が多めですね。
また前述の通り成本が復帰困難なため守護神候補でS.デービソンを、先発候補でJ.クロフォードを獲得しました。
また巨人から小原沢重頼、中日と小島弘務+樋口一紀⇔岸川登俊+南渕時高のトレードで投手を確保。(※小原沢はオープン戦で故障します。)
野手では中日から無償トレードで椎木匠(捕手)を獲得。
また95年オフのバレンタイン解任騒動の中退団したフリオ・フランコが復帰しています。

フリオ・フランコ
マット・フランコとは関係もないし、フリオ・ズレータとも関係はないぞ。
95年には.306 10HR 58打点、GGとB9も獲得した(98年で40歳になる。)

野手陣

実は打率だけ見たらリーグ1位なんですよね。ただ得点数581はリーグ5位です。結構みんなアベレージ特化型でHRは少ないイメージです。
初芝清が25HR、J.フランコが18HRと長打が打てるのはこの2人くらいであとは(平井光親を除き)長打率は3割台です。
また小坂誠が43盗塁で2年連続の盗塁王を獲得。プロ入り2年で99盗塁ってまじで化け物すぎる

投手陣

投手陣の柱となったのは黒木知宏と小宮山悟でした。
黒木はチームが18連敗したのにも関わらず13勝を挙げ最多勝、勝率.591で最高勝率を獲得しています。そんな黒木より多くイニングを投げたのが小宮山で202 2/3回を投げています。小宮山といえば精密機械と言われるくらいの制球力を持った投手ですが、836打者に対して27四球、BB%は3.2%ととても良いです。あとは武藤潤一郎が8勝してなんとか持ちこたえていましたが、藪田、クロフォード、新人の礒が乱調でした。
救援陣で最も登板したのが新人の藤田宗一の56登板。防御率2.17と安定感ある投球を見せました。
ただこれからわかる通り新人が1番使われるくらいには救援陣は厳しく、18連敗中には先発だった黒木を守護神起用したりしていました。
またS.デービソンはほぼ役に立たず、6月にブライアン・ウォーレンを獲得。このウォーレン、24登板で防御率0.93という素晴らしいピッチングをしており、翌年の契約を勝ち取りました。

悪夢18連敗

「18連敗もしたんだから最初っから調子悪かったんでしょ?」と思ったかもしれませんがこの薄い戦力ながら5月には一時首位に立つなどシーズン初めは上位に食らいついていました。しかしだんだん成績が下降しており、連敗が始まる前の試合では5位、借金は2でした。
悪夢の始まりは6月13日のオリックス戦でした。先発はちょっと前に自動車事故を起こしていた小宮山。その影響もあったのかなかったのかは分かりませんが、その日は4回途中5失点で敗戦投手になります。

~12連敗

この頃のロッテは救援陣が不安定で延長まで行けばほとんどの場合不利になります。この18連敗期間サヨナラ負けを4度食らっているのはその証明でしょう。6月19日の日本ハム戦後、近藤監督は先発の一角である黒木を抑えに転向させることを決意。しかし20日には1点リードの8回に2点を取られ逆転負け、21日には乱打戦の末、9回1点リードで出た黒木が田中幸雄にサヨナラ2ランを打たれ敗戦、26日の近鉄戦では11回に登板した黒木が吉田剛に2点決勝タイムリーを打たれ敗戦と抑え黒木は大きく失敗してしまいました。

連敗は止まらず26日の敗戦で20年ぶりの2桁連敗を記録。しかし連敗はさらに止まらず、30日の西武戦で引き分けますが7月3日のダイエー戦後には球団オーナーの重光昭夫が千葉神社から神官を呼びお祓いをするも4日、5日とダイエー打線に2試合連続10点を取られる大敗を喫しついに当時のプロ野球ワーストとなる16連敗に並びました。

14連敗目の翌日の試合前に行ったお祓いの様子。
今でもシーズンに入る前にお祓いをするチームはよくあるけど、
大概は球団が神社に行くもんで、神官が球団側に来るのって珍しいというか
異常ですよね()

7月7日、GS神戸でのオリックス戦のロッテ先発は黒木。ロッテ打線は3得点すると黒木も8回までオリックス打線を1点に抑えます。しかし9回2アウトからT.ニールに安打を許すとバッターはH.プリアム。ただ追い込み連敗脱出まであと1球とした場面。
投げたボールをプリアムが弾き返しレフトスタンドへ着弾。まさかまさか土壇場で同点になったのです。マウンドにうずくまる黒木、もう投げられる状態にはありませんでした。延長12回満塁の場面で広永益隆がサヨナラ満塁HRを放ち3-7と敗戦。ロッテはプロ野球ワースト記録を更新する17連敗を記録しました。これが「七夕の悲劇」です。

サムネの画像 うずくまっているのが黒木。
当時40℃に迫る神戸で全ての力を振り絞って投げた黒木だったが
プリアムに被弾してベンチに戻ったときには痙攣などの熱中症の症状が出ていたという。
ただ小宮山は「最後まで、全てが終わるまで、諦めちゃいかんよ、クロちゃん」
と黒木に言ったらしい。小宮山悟らしすぎる。

翌日も負け18連敗まで伸ばしますが9日についに勝利。ロッテ打線は9点を取り、小宮山も9回5失点と魂の完封。最後の勝利は6月12日、約1ヶ月負け続けたチームは後半戦は比較的頑張りますが、この18連敗が重くのしかかり首位西武とは9.5ゲーム差で最下位に沈みました。(意外とゲーム差詰まってる件)

↓動画後半で黒木コーチがレフトスタンドを背に当時のことを語っています

↓プロ野球ワースト記録を更新する17連敗をオリックス視点で見れる割と貴重な映像

山本功児政権へ

2年連続最下位に沈んだ責任を取り、近藤昭仁監督が退任。退任会見では「もっと強いチームでやりたかった」と心境は察するけどそれ言っちゃおしまいよみたいな発言をしています。皮肉にも以前自分が監督をしていた横浜は近藤監督期に多く起用した選手が育ち、この年優勝・日本一をしているし個人的にまあなんとも運がないなって思う監督ですね。

さて次期監督には97年から2年間2軍監督をやっていた山本功児が内部昇格で就任します。山本浩二ではありません。山本功児です。
ドラフトでは弱点を埋める指名をします。前述の通り、この頃のロッテの弱点は捕手と守護神候補でした。捕手の層が薄すぎて清水将海が顔面死球を受ける怪我をしたのに2日後のゲームに途中出場してたり、18連敗期間中もそれ以外も成本年秀・河本育之が離脱中は救援が完全崩壊していました。

そこでロッテは逆指名を2枚使って小林雅英(投手・大阪ガス)、里崎智也(捕手・帝京大)を獲得します。
みなさんご存知の通りこの小林と里崎は00年代以降のロッテを支えることになります。小林は守護神、幕張の防波堤として05年の優勝・日本一を支え、里崎は03年から1軍に定着し始めるとそこから正捕手の座をしっかりと掴み06年のWBCに選ばれるなど日本を代表する捕手に成長。(里崎が自分で「ロッテで1番良い捕手」と言っていたが割とそうだと思う)
2選手ともに素晴らしい戦力になったドラフトですが当時の評価はめちゃくちゃ低かったそうです。(里崎は「逃げのドラフト」と書かれていたと言っている)

中央にいるのが小林雅英(大阪ガス)
その右隣に里崎智也(帝京大)がいる。


ロッテはまだ低迷が続きますがかつて広岡達朗が「ロッテは10年優勝する機会を逃した」ということにはならず、かつての指揮官、ボビー・バレンタイン監督のもとこの7年後、優勝・日本一を掴み取るのでした。

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