エンドロールにおける番手と序列は、時に制作陣をも悩ませる
脚本家・壽倉雅(すくら・みやび)でございます。
一昨日、テレビ朝日系列で放送されました『マツコ&有吉 かりそめ天国』内の「映画のエンドロール、いつまで見る?」というトークコーナーの内容の監修をさせていただきました。
監修内容は「番手」のこと、「トメ」のこと、「特別出演」と「友情出演」の違い、の3つです。
番組は、5月24日(金)20時までTverで見逃し配信されていますので、ぜひご覧ください。
https://tver.jp/episodes/epqc19wmli
今回は、監修させていただいた4つの言葉の解説も踏まえて、エンドロールにおける番手と序列のお話をしていきたいと思います。
専門用語を、まずはご紹介します
「番手」
「番手」とは、エンドロールで流れてくる順番のことを指します。1番手・2番手などのキャストの序列を示します。
「トメ」
「トメ」とは、主役と同等あるいは重要な役を演じた人が、エンドロールで一番最後に表示されることを指します。
「特別出演」
「特別出演」とは、物語の中で重要な役割を担う役を演じたり、芸歴の長いベテラン俳優がワンシーンなど少しの出番で圧倒的な存在感を見せるときに表記されます。また、上記の「トメ」と同等のベテラン役者が出演した場合に、序列を曖昧にするために使われることもあります。
「友情出演」
主演や監督が仲の良い俳優さんに出演をしてもらう、もしくは俳優さん側から自ら出演をオファーするときに表記されます。この場合、出演料(ギャラ)が少し安いもしくはノーギャラということもあるとか。また、別の作品からのクロスオーバーという意味合いで表記されることもあります。
ちなみに特別出演について、女優・淡島千景さんは以下のように述べています。
NHKでは、「特別出演」も「友情出演」も使われない代わりに、スクロールの場合は線を、点滅式では名前を出す前後に空白の時間を設けるといった手法を用いて、特別感を出します。
誰をトップにし、誰をトメにするのか
数々のドラマがある中で、この番手と序列は、意外と頭を悩ませるものでもあります。このクレジットを決める工程は、パズルゲーム並みに難しいことがあります。
今回は、クレジットの序列における作品エピソードを5つ、ご紹介いたします。
主演俳優が映画界を追放された~映画「不信のとき」~
1968年に映画公開された「不信のとき」(大映配給)。
当時宣伝用に刷られたポスターの序列は、トップ1番手に岡田茉莉子氏、トップ2番手に加賀まりこ氏、トメに若尾文子氏、トメ前に田宮二郎氏。
この序列に異議を唱えたのが、田宮氏。この序列では、田宮氏は事実上の4番手扱いとなります。当時、大映映画で数多く主演を務めていた田宮氏は自分の扱いが4番手であることに不満を抱き、撮影所長や大映副社長などに相談。結果的に、田宮氏を1番手に変更したポスターが刷り直されましたが、この一件で当時の大映社長と一悶着が起こってしまい、田宮氏は大映を解雇され映画界追放となってしまいました。
出演回を被らせない措置~大河ドラマ「花燃ゆ」~
2015年にNHKで放送された大河ドラマ「花燃ゆ」。
今作に出演した時代劇のベテラン高橋英樹氏と北大路欣也氏は、クレジットの優劣をつけさせないために、二人が同時に出演する回が作られませんでした。
2名とも出演した回は全てトメを死守。高橋氏が出演するときは北大路氏の出番がなし、北大路氏が出演するときは高橋氏の出番がなし、という脚本になっていました。
ちなみに2008年に放送された大河ドラマ「篤姫」でも、28話までは高橋氏がトメ(この回で高橋氏が演じた島津斉彬が死去)。勝海舟を演じた北大路氏の初登場は32話からと、こちらも出演が被らないようになっていました。
五十音順?~ドラマ「女たちの忠臣蔵」~
1979年にTBS系列で放送された、日曜劇場1200回記念番組「女たちの忠臣蔵」。
今作では、クレジットは優劣を避けるために五十音順となっています。このように、大型時代劇などキャストが多く、また序列の優劣がつけられないときに、五十音順にするパターンは珍しいケースではありません。
放映時の実際の序列をよく見てみると、何かがおかしいのです。実際の序列をご紹介します。
(縦書き画面左から右へのスクロール形式)
渥美清→→新克利→→池内淳子→→(中略)→→渡辺篤史→→山岡久乃→→山田五十鈴→→山村聰
新克利(あたらしかつとし)よりも渥美清(あつみきよし)が先に来ており、渡辺篤史(わたなべあつし)よりも後に、山岡久乃(やまおかひさの)、山田五十鈴(やまだいすず)、山村聰(やまむらそう)となっています。正式に言えば、五十音順になっていません。役柄を重視するためか、役者としての優劣をはっきりさせるためか、正確な五十音順になっていない理由は不明です。
主役以外は登場順~ドラマ「やすらぎの郷」~
2017年及び2019年にテレビ朝日系列で放送された「やすらぎの郷」及び続編の「やすらぎの刻~道」。
本作は往年のスターだけが入れる老人ホームが舞台となっており、ベテラン俳優女優が数多く出演しています。
そのため、序列の優劣がつけがたい状態になっています。ホームページ上での人物紹介は主演の石坂浩二氏以外は五十音順に、ドラマ本編のオープニングでは石坂氏以外は登場順に名前が表示されるようになっています。
主人公以外の序列を曖昧にするために、登場順で表示するのは、ある意味では平等な表示方法で、誰も傷つかない方法と言えます。
テンプレを崩した女優~ドラマ「十津川警部シリーズ」~
TBS系列で放送されていた「西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ」。今作は、トップが十津川警部演じる渡瀬恒彦氏、トメが亀井刑事を演じる伊東四朗氏と決まっていました。
ですが一度だけ、例外に渡瀬氏と伊東氏がW主演扱いで連名トップになった回がありました。それは2004年12月に放送された回で、渡瀬氏の元妻でもある大原麗子氏がゲスト出演をされ、エンドロールではトメに配置される異例の回でした。
一説によると、大原はクレジットにとてもこだわりを持っていたとか。五十音順表記だったドラマ「源氏物語」で、2008年の再放送が決まった際には、自分の名前をトップに持ってほしいとプロデューサーの石井ふく子氏に要望をしたほどです。石井氏は、趣旨が違うからと断ったとか。
以上、5つの作品エピソードをご紹介しました。
クレジットの序列というのも、これまた難しいものなのです。
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次回もお楽しみに!
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