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連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その43


43.   世界三大料理



優子さんの夕御飯を美味しく、
そしてお腹いっぱい食べ終えて、
明日の朝刊のチラシを整えていた。


毎日が幸せいっぱいの新聞配達員である。


しかも私はいつも一番最後。
いつも一人だった。


なんの煩わしさも、しがらみも無い状態。
とんだ幸せ者である。


チラシとチラシの間に息を吹き掛けていたら
賑やかな話し声と足音と一緒に
外からお店に戻って来たのは、
由紀ちゃんとしーちゃんだった。


「おー、ちょうど居るじゃん。」


私の顔を見るなり話し始める馴れ馴れしい二人。


「真田くんは今、何ポイント?」


「ポイント?」

私はそう言って壁のほうを見た。


ずっと掲示板に貼ってある【拡張コンクール開催!】の
青空色の優子さん手作りのポスターを改めて思い出した。


「あー、拡張コンクールのポイントね。まだ0ポイント。
そして、まだまだ0ポイント。これからもきっと0ポイント。」

「ははは、なにそれ?全然拡張してないんじゃないの?」

「うん。ハワイは遠い存在のままで居て欲しいしな。」

「私達、今月がんばってんだよねー!ねー!本城!」

「うん。」


「急にどうしたんでっか?」

「いやさ、ちょっと行きたいお店があるからさ、
二人で一緒に拡張回って5ポイント目指してんの。」


「今、何ポイント?」


「もう4ポイントだよ。ふたりとも。
楽勝だよ。二人で回ったら取れる取れる!
ねぇー!本城!」

「うん。」


「真田くんも行こうよ!」

「え?どこへ?」

「えーっと・・・」


「あー!言ったらダメだよ本城!教えなーい!」

「なんと!」


可愛らしいケチンボに、
完全に仕事の手を止められた私。


「キャハハ!5ポイント取ってからのお楽しみとか面白いね!」


「そうだね!さすが先輩!」

「いやいや、そんな目隠しされたまま食べる闇鍋みたいな感じでは
5ポイント獲得には燃えられないですぞ。」


「じゃあヒントだけ教えよう!」

「お、お願いします!」

「ヒントは・・・世界三大料理!」

「世界三大料理?はて?フランス料理か?」

「ブッブー!」

「イタリア料理?」

「ブッブー!!」

「あとなんだろう?中華料理かな?
ということは横浜の中華街か!」


「ブッブっぶ〜!!」

「えー!分かんないなー。
結局、和食だったりして。匠ってことで。」


「ちがうなぁ〜。やっぱ目隠しだね。
テーブルに座って料理が運ばれて来てもまだ取っちゃダメだからね。
口に運んでモグモグしてたら、いつか分かるんじゃない?
正解するまで目隠し取れないってどう?」

「ははは!あーおかしい!」

ずっと横で笑っている由紀ちゃん。

さすが、しーちゃんである。
ジャーナリストを目指しているだけあってか
国際色豊かな発想である。


「今月の休刊日の前の日曜日に行くつもりだからね。
それまでに5ポイント取っておいてね。」

「じゃあ、よろしくー!」


肩で風を切るように、颯爽とお店を出ようとする二人。
私はチラシを持ったままで質問した。


「ん?今からどこ行くん?」


「拡張に決まってんじゃん!この時間が一番居るんだよね!」


「そうそう、そんでさ、早くテレビ見たいからって、さっさと契約済ましてくれるしね。」

「そうそう、昼間だと時間あるから長話しになるんだよね。」


なるほど、なるほど。
夜、行けばいいのだな。
そして、テレビが好きそうな人の所に行けばいいのだな!

誰かと一緒に行くべきなのかな?
まあ、いいや。一人で行こう。


よしっ!目標が出来たぞ!
5ポイント目指して拡張だ!



そして、
目隠しして世界三大料理だ!


〜つづく〜

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真田の真田による真田のための直樹。 人生を真剣に生きることが出来ない そんな真田直樹《さなだなおき》の「なにやってんねん!」な物語。

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