部屋

朝には大丈夫になっていると言い聞かせる。相手の手の感触がどんなだったかもうわからなくなっても朝は来る。乾涸びたトカゲの尻尾をトカゲが覚えていないのと似ている。
真っ暗な隣の部屋にいる自分より弱い生き物に意識的な愛情を向けることが日課。生きて、と願う。これが呪いのようになれと思う。
この家を自分の心象風景にしてはいけない。抱っこしていい?ゲームをしている背中に呼びかけて抱き締める。ゲーム画面は止まらない。私は蘇生をされていないのに生きている。このゲームにクリアはない。これはバグ。
コップは常に蛇口の下にあった。表面張力はどうなっているか確認しなくなった。コップに穴が空いていることに気づいた。コップを持ち上げると水が漏れることは容易に想像がつくから隠していた。
簡単に流されたくない気持ちを簡単には伝えたくない。簡単でいたい気持ちは常にある。
掃除機で髪の毛を吸い込まれている夢をよく見る。悲鳴をあげている最中に聞こえる。この掃除機は自動的に絡みをとることができるんですよ。
足の裏に血がついている。何を踏んだのだろう。床についた血を辿ると私がいた。

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