家元

すき焼き道はじめました。

家元

すき焼き道はじめました。

最近の記事

vol.7 すき焼き記録アプリを作った

これまであちこちのすき焼きを食べに行っては食材や調理の流れを記録してきている。記録方法はお店の方にお断りをしたうえで写真や映像に収めていたのだが、写真を撮るにしても1時間弱の食事で数百枚も撮るのであとで見返すのがものすごく大変で、映像に至っては1時間の映像を何度も見返す必要があるし、よく見えない部分があったりで結局もう一度食べにくことも少なくないのだ。 食べる側にいるとそれほど動作が多くないように思えるが、実際にはこまめに火力調整しゲストの取皿に気を配りつつ次の食材を鍋に入

    • vol.6 食べる順番と作法

      食べる順番に興味を持ったのは、伊丹監督の映画「たんぽぽ」を観たのがきっかけだ。 映画の中でラーメンの食べ方を講釈するシーンがある。 最初はまず、ラーメンをよく見ます。どんぶりの全容を、ラーメンの湯気を吸い込みながら、じみじみ鑑賞してください。 スープの表面にキラキラと浮かぶ無数の油の玉。 油に濡れて光るシナチク。早くも黒々と湿り始めた海苔。浮きつ沈みつしている輪切りのネギたち。そして何よりも、これらの具の主役でありながら、ひっそりとひかえめにその身を沈めている三枚の焼き

      • vol.5 すき焼きとフードペアリング理論

        美味しさを追求するための科学的アプローチとして、AIの普及によって実践的な発展をみせているフードペアリング理論というものがある。 美味しさは食材の組み合わせによって引き出されるというもので、食材の味や香りの類似性や対称性などで食材を組み合わせることでこれまでに食べたことのない新しい風味を発見することが出来るという理論らしい。 ある論文によると、この食材の組み合わせというのは食べる順番が大切とのことだ。混ぜ合わせて食べるのではなく個別に舌に感じる風味の順序によって味の感じ方

        • vol.4 Notation:02

          今回もまた東京にある老舗だが、こちらのお店はもともとは関西の料亭からの流れを汲む関西風寄りになる。関西風寄りと表現したのは典型的な関西風とはまた異なる独自のすき焼きを考案されているからである。 食材 このお店は季節によって食材を変えず、年中常にこの食材構成である。旬の食材を入れるほうが良さそうに思えてしまうが、食材を固定することで食材の特徴を掴みやすく常にクオリティを一定に保てるというメリットも大きい。また玉ねぎを使うのは関西風の特徴ともいえる。 ①牛肉(宮崎牛リブロース

          vol.3 Notation:01

          東京にある某老舗すき焼き屋のSUKIYAKI Notationを見てみよう。こちらのお店はいわゆる関東風のすき焼きになる。 食材3月に提供されていたすき焼きを譜面化したものなので、たけのこや春の山菜のうるいが入っている。それらを除けば基本的なすき焼きの食材といえる。 ①牛肉(リブロース) 8枚/2人 ②青ネギ       8本/2人 ③白滝        2人前 ④たけのこ      2片/2人 ⑤焼き豆腐      4個/2人 ⑥椎茸        2個/2人 ⑦うるい

          vol.3 Notation:01

          vol.2 SUKIYAKI Notation

          概要 以下はすき焼きの流れを譜面としてビジュアライズしたもので、SUKIYAKI Notationと呼んでいる。この譜面にはどの食材・調味料をどのタイミングで鍋へ投入しどのゲストに給仕するかを図示しており、また各フェーズごとの鍋の中の配置も示している。つまりこの譜面からすき焼き全体の流れとその特徴が分かるようになっている。 譜面の構成 譜面は以下のように5つの構成から成る。読み方としては上から下へ時間軸が流れていて横の罫線はタイミングを表しているが正確な時間配分ではない。詳

          vol.2 SUKIYAKI Notation

          vol.1 すき焼きの多様性と譜面化

          すき焼きが好きでよくお店に食べに行く。 お店で食べる楽しみは、それぞれのお店によってすき焼きの作り方が異なるところにある。 すき焼き屋には仲居さんが卵を割るところから最後まで給仕してくれる店とそうでない店があるが今回の話は前者のフルサーブしてくれるお店の話。 すき焼きをフルサーブするということは、つまり目の前で調理から配膳まですべてオープンに行われるということである。他に客前で調理するものとしては、鮨や天麩羅、焼き鳥や鉄板焼きなどが思いつくが、いずれも職人やシェフなどの調

          vol.1 すき焼きの多様性と譜面化