ミュージカル『四月は君の嘘』のこと(ネタバレなし)

私と『四月は君の嘘』との出会いは、実は何年も前で、コミックスの1巻が発売されたときだ。
本屋でたまたま手に取ったのがきっかけだ。裏表紙にはなんの物語の説明もなかったけれど、その場でジャケ買いした。

当時私のなかでは近代文学ブームで、横光利一『春は馬車に乗って』、夏目漱石『思い出すことなど』とか、そういうちょっと詩的な題名が好きだった。
『四月は君の嘘』という印象的な題名に惹かれたのだ。

すると、なんと偶然にも私の大好きなピアノの話だったのである。

『四月は君の嘘』は、「ピアノ」と「自分の過去に対峙する主人公」を軸に、幼なじみ、親子、友人、師弟、ライバル等々の人間関係を濃密に描いている。

スポ根ピアノ漫画でも、トントン拍子にうまくなっていく漫画でもない。恋愛だけを描いているわけでもない。

主人公の男の子がある少女との出会いをきっかけに、たくさんの人に支えられながら、何度も挫折しながらも、ある理由で一度やめてしまったピアノと向き合っていく話だ。

脇役の登場人物の背景もしっかりと描かれているため、とても数時間の舞台にはおさまりきらない。

そうすると、どこを捨ててどこに焦点をあてるのかというのが問題になってくる。

今回のミュージカル版は、主に「青春のかけがえのない瞬間」にスポットをあてて話をまとめているように感じた。

作品をよく知らずに見た人にとっては分かりにくい部分もあった。

あの重要なシーン、あの大事なセリフ逆に飛ばすのかい?ってところもたくさんあった。

原作のそのものの良さが全員に伝わるかというと微妙である。

しかし、キャラクターたちが作品そのままに生き生きと動いて歌っている。
映画のレビューで、内容の重みよりも全体的な盛り上がりを重視した作品を『祭り』と表現することがある。
「お祭り映画だった」という具合に。

今回は祭りというほど軽くもなく、かといって原作の息苦しい重みもそれほどなく、ミュージカルという「歌」に突出したものを作ろうとするとこんな感じなのかなと思った。

と、冷静に書いてみたが、内心では終始

小関くん、顔ちっさ!!!遠近法狂う!!

と衝撃を受けていた。

(ネタバレあり感想につづく)



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