下着がその人の印象になる
ちょっと恥ずかしい話だが、この2年ほど、私はおへそまで隠れるパンツを愛用していた。
恥ずかしいというのは、別に丈だけの問題ではなくて
(おへそが隠れる丈でもシンプルで洗練されたデザインのショーツはある)それが、補正下着だったという点にもある。
ことの始まりは、「下着の買い付けが得意なバイヤーさんに取材したら
この補正ショーツがヒップアップにいい!と太鼓判だったらしい」という噂から。
仕事仲間の間でジワジワその評判が広まり、
私も履いてみる!との声が相次いだ。
体型悩みが尽きない私も、もれなくその流れに乗っかった。
そのショーツは本当に優秀で、補正下着であるのに全くきつくなく、
血流も滞らず履き心地抜群だった。
もう20年以上前、ローライズのデニムが流行った時代から、
ショーツといえばローライズが定番と思っていたが、
おへそまですっぽり覆う形は、思いの外、冷え対策にも良く、
なんてあったかくて安心感があるんだろう、とすっかり気に入り、
2年くらいつい、そればかり履いていた。
のだが。
ある時、青木良文さんというファッション業界のみならず、
占い界隈でもその名を轟かせている大人気ライターさんが
とあるランジェリーブランドのインスタライブに出演され
「下着はその人の印象になる」と仰っていたのを聞いて
かなりドキッとした。
最初はヒップアップ目的で履き始めたそのパンツが、
いつしか「ラクだから」履くものになっていたからだ。
通販で買えるので、買い替えがラク。
いつでも買えるという安心感から、つい少しゴムが緩んだものも
平気で履くようになった。
お揃いのブラはないけど、これを履いていればヒップアップするはずだから上下ちぐはぐでも気にしない。
生地が丈夫なので、乾燥機にもガンガン回すし、それにつられて、
手洗いしていたブラも、洗濯機で回すようになった。
なんだか、おかしい。
「スタイルよくなりたい」「きれいになりたい」と思って
履き始めたものなのに、
いつしか緊張感も向上心もすっかりなくなっている。
例えば本当に、「初めまして」の人から、
この、使い古したショーツみたいなイメージで見られているのだとしたら、
嫌だな、とハッキリ思った。
そうして私は久しぶりに伊勢丹のランジェリー売り場に行って、久しぶりに体を計測してもらい、新しい下着を買った。
寄せてあげたいわけではなく、胸はなるべくすっきり見せたい。
洋服を着た時に透けたり邪魔にならない感じがいい。
デザインはシンプルなタイプ、レースなども控えめが好み。
しばらくノンワイヤーで楽なブラジャーを愛用していたこともあり、
つけ心地もソフトなものを希望している。
要望を伝えると、いかにもベテランです、という風情の頼もしい、
素敵なマダムが体を計測してくれ、
希望ぴったりのブラジャーを一発で持ってきてくれた。
Yueというワコールの比較的新しいブランドで、デザインがすっきりしていてワイヤー入りなのにそれを感じさせないつけ心地が好みだった。
肝心のショーツは、ペアのものは数種類あって、
安いもので8000円〜で、もう1本ブラが買える!と慄いたけれど、
これが自分のイメージになるという話を思い出し、
一番欲しいなと思った肌触りがよく、
股上が浅すぎないシルクのショーツを1枚買った。
これ1枚で、以前買っていた補正下着が、6枚も買える価格だ。
結局上下合わせて2セットの下着を購入して、
お会計は4万円を超えてしまった。
財布にかなり痛かったけれど、ちょうど誕生日だったので
決意新たに、ということと自分へのプレゼントと言い訳をしてみた。
そして帰宅して、補正ショーツとノンワイヤーのブラジャーを全部捨てた。
履いていればきっとスタイルアップするという、その効果と心地よさに
あぐらをかいて、いつの間にか、雑に扱ってしまってごめんなさい。
以降、私は、生理用のサニタリーショーツと、
元々持っていたレースのショーツ数枚の他、
日常ではその2セットでやりくりをしている。
ショーツは傷みが早いので、頃合いを見て、買い足す予定だが、全て手洗いしているので、意外となんとかなっている。
時々、これが今の私が「初めまして」の人に会っても
恥ずかしくない、目指したいイメージなのかなと自問する。
華美すぎず、主張しすぎない、シンプルだけど洗練されている物腰。
窮屈だったり圧迫感もなくて、でも、気になるところや多少の粗は拾って
包み込んでカバーしてくれる包容力。
ありそうで、なかなかない少しくすみのあるカラーが
ちょと洒落ていて目を引く。
そして何より、くたびれていない清潔感が大事だ。
うん。確かにそうなれたら素敵かも。
そんな自分を目指して、
数年ぶりに下着に投資してみたい気持ちになっている。
無理はしない、続けられる心地よさはキープしながら、
毎日面倒でもさっと手洗いする丁寧に扱う行為が、
下着だけでなく、私の少しだけ背伸びしておしゃれする気持ちも、
長持ちさせている気がしている。
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