こうして愛は循環する ②
ちょっと間に挟みましたが、つづきです。
Give awayの贈り物選びに苦戦していると、あるものがすっと私の視界に入りました。
それは私にとってあるのが当たり前すぎて、「贈り物」という言葉とは結び付かなかったのかもしれません。
そんなつもりはないのに、それはいつも部屋の一番良い場所に陣取っています。
ああ、これだったのか、と妙に納得しました。
このポスターに出会ったのは、実家を出て一人暮らしを始める決心がようやくついて、コロナの真っただ中に単独引っ越しを決行したときに、新生活に必要な家具を覗きに訪れた家具屋でした。
私が訪れた時、ちょうどそのお店では期間限定のヴィンテージポスターショップのスペースがあり、たくさんの素敵なポスターが展示されていました。
食品、美容品、宝飾品、雑誌や新聞など、海外の様々な企業の広告が美しい線描と色合いで表現されています。
ちょっとした美術館みたいです。
そのスペースに惹きつけられて、家具を見るのを忘れてしまいそうでした。
そういえば、自分のために絵なんて買ったことないな。
素敵だけど結構高いなぁ。
たくさんの美しいポスターたちを眺めながら、自分には手の届かないもののように感じていた時、このポスターが私の目の前に現れました。
鮮やかな赤をまとった凛とした女性の横顔に、何の心構えもしていなかった私は一瞬で心が惹きつけられました。
完全に一目惚れです。
私のフィルターを通してみたそのポスターは、なぜか他のどれとも違って見えました。
何が違うのかよくわかりません。
でも、すごく魅力的。
新しい部屋にこのポスターほしいな、と思いました。
でも、そのポスターは他のどれよりも魅力的に見えただけあって、他のものよりさらに少しお高かったのです。
これから生活用品揃えなきゃいけないし、なくても生活できるものにそんなにお金つかえないな…素敵なんだけど。
せめて目に焼き付けておこうと思い、もう一度そのポスターをじっくりと眺めていると、なんとなく
" ほんとにそれでいいならいいけど、ほんとにそれでいいの?"
と言われているような感じがしました。
私に寄り添うように、というよりは、私には関係のないことだから私はどっちでもいけど、あんたほんとにそれでいいの?みたいな。ちょっと煽られてるような雰囲気。
当時の私はやっと少しずつ自分のためにお金を使えるようになってきたところで、まだ " どうしても必要ではないけど好きだな、ほしいな " くらいの、でも金額は必需品でもちょっと躊躇してしまうくらいのものを買おう!!と即決できるほど軽い気持ちでお金を使うことができなかったのです。
めちゃくちゃ後ろ髪を引かれながらも、なんとなく必要な家具の見当をつけて、その日は買わずに帰宅しました。
つづきます。