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「あなた、コロナにかかってますよ」13話

さて、この話あたりから、読んでくださる方によっては「あり得ない」出来事ばかりになってまいります。もしかすると信じてもらえないかも。
でも、私にとっては紛れもない真実なので、そのまま書いてます。

入院一日目の夜、大部屋に私ひとり。

もはや夢か現実かわからない中で、いろんな人たち(ゾクッ)が登場するショーを観覧中--(詳しくは12話をご覧ください)。念のためお話ししておきますが私、これまでユウレイみたりとか、何か声が聴こえたとか、まったく経験ありません。むしろそういった能力とは真逆の、クリーンでストレートな人生を送ってきた……つもり。(笑)

そんな私がいま……みえないハズの人たちを次から次へと見せられている。しかも大して驚きもせず。ただそんな感じだからか、寝られない。熱はさがったハズなのに安眠することができず、ベッドに横になっている。
そんな私がふと我に返った。

これからどうしよう……

あんな幻覚みたいなのみせられてて、よくこんな現実的なことに思いが至るなぁと自分でも驚きだが、考えだしたら止まらない。

「今はいい。入院していればご飯は食べられるし、子どもたちは元オットがみてくれている。でも退院したら?
私の仕事、バイトだから働かなければ収入もない。熱で倒れたあの日から一日も働いてない。退院できたとしてもすぐ働けるような気がしない。いや、こんな状態にまでなって、働けるわけがないじゃない。
どうしようどうしよう。」


「……もう、子どもたちは元オットにお願いして、私は実家に帰ろうか。自分ひとりで育てるって決めたけどムリだ、限界だ。そもそもそんなことできるわけ無かった。逃げ出すみたいになるけど仕方ない。ここを出たら相談してみよう…うん、そうしよう。」

ひとしきり考えを巡らし、自分なりに結論づけて納得した。と思った瞬間。

パーンと、ほんとにパーンとその場の空気をスパッと切るような、こんな声が聞こえてきた。

何言ってんだよ!
オマエまだ何にも死ぬ気でやってねぇじゃん。
そんなんで逃げてんじゃねえよ、もっと本気出せよ!!

あまりにもはっきりと、タイムリーにそしてクリアに聞こえたその声に、さすがの私もハッとして声のした右側を見てしまうのであった。が、当然そこには誰もいなくて。
(だよね、ここってアタシひとりだよね。でも今のって、めちゃくちゃハッキリ怒鳴られたねぇ、だよねぇ……)
ボーっとしながらも、しばし呆然とする私。
とはいえ、その声のご指摘に対し、実は私は大いに身に覚えがあった。

「いつまでそこにいるの?あなた、そんなところで働いてる人じゃないよ」
「もっと自分を活かせるところで仕事してください」

そう。私はバイトで働いていた約2年間、いやその前から、私をよく知るいろんな人(フツーに人間の皆さま)から何度もそんなことを言われていたのだった。そして、何度も言われていたのに向き合おうとしなかったのだった。「今の仕事が楽しいからいいじゃん」「必要とされてるんだからいいじゃん」そう思ってスルーしてきた。
それをとうとう、”みえないヒト”に指摘されてしまったのである。
彼は続ける。

オマエはすげーんだよ。もっともっとすげーことすんだよ。だけどまだなんもしてねーじゃん。もっと自分の持ってるもん出すんだよ!


「……そうだね、確かにそうだね。私死ぬ気でやってこなかった」

ちょっと信じられないかもしれないが、
このシチュエーションで!
唐突な指摘にもかかわらず!
私は妙に納得してしまっていたのだった。
そう、普段から素直すぎるところが私の特徴ではあるんだけど……。

いや、認めよう。自分のなかでも(このままでいいのかなぁ)という思いがずっとどこかにあったのだ。バイト先でマネージャーになるためのトレーニングを受けてる過程でも私はどこかで(そろそろジャマが入るんじゃないかな……ほんとにこのまま進むの?)と思っていた気がする。
私は彼に説教されながら素直に「じゃあ、退院したらこういうことしてみるってのはどうかな」「いいんじゃねーの」なんて会話をし、いつしか眠りに落ちていたのだった。。。

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