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「あなた、コロナにかかってますよ」9話

PCR検査陽性により保健所とのやり取りで結局入院が決まった私。「ホテルは受け入れ先を決めるのに時間がかかるんですが、病院は比較的すぐ決まる」そうで、入院決定連絡が来たのが10時半ごろ。そして13時にもうお迎えのタクシーがやって来るという。

えー、そんなに早く!?
どうしよどうしよ!!

パニックパニック!!

何がってもちろん荷づくりが、だ。
ここまでのやり取りでもう、私の体力は限界に達している。
電話でのやり取りだけでこれだけ疲労困憊なのに、その上荷づくり……持ちものそろえてカバンにつめるとか……考えただけで倒れそう。しかもなんだか、コロナなおかげなのか子どもたちも遠巻きに見てるだけ。私も他の病だったらさすがに手伝ってもらうけど(もしうつったら……)と思うと強要もできない。がしかし、頭は働かないし身体も動かないのも事実だ。
しばし固まっていたものの、そうもしていられないと気を取り直した私、やっとの思いで保健所から言われたモノを準備しようと動き出す。すると今度は実際入院する病院からの電話連絡。事務を担当していると思われるその男子は、入院時の注意事項やら持ちもの一式やらをそれこそ書類見ながら読み上げているようなのだが、これがもう本当に慣れていない様子で彼の言ってることが全く頭に入ってこない。

スマホを耳に当てたまま、ただただ無情に過ぎてゆく、不毛な時間……。

文章(というか単語?)を読み上げるということが、これほどまでに難しいことなのだということを知り、ヘンに感動。これも立派なスキルなんだなぁ。

……彼のたどたどしい説明がますます思考能力をうばってゆく。あまりにもしんどくて、もう途中からメモを取ることは放棄した。「はい…はい」と彼の話は聞くだけ聞いてネットで調べることにする。だけど着替えのTシャツとかタオルくらいはなんとかなるけども、シャンプーとかドライヤーとか……普段使ってるの丸々持ってくんかい!!ってなる。しかもドライヤーなんか我が家には一台しかないし。持っていっていいか家族に相談したけど、案の定却下される。
(あぁ、、、なぜ私はモノをこんなに少なくしてしまったんだ!せめて化粧品のサンプルはとっておけばよかった~ついこの間まであったのに!!ドライヤーも旅行用に小さいのをひとつ置いとくんだった~)
まさか”入院”というシチュエーションでドライヤーが必要になるとは。
他にも、ネットで調べた”入院時に必要な物リスト”にはいろんなものが書いてあったけど、もう正直限界だ。どうにもならず、いよいよ子どもたちに助けを求めようかとも思ったが、モノの在りかを知っているのは私だし、もう説明したり会話をするのさえもイヤだった。しゃべるのって身体の筋肉を思った以上に使うのだ。仕方なく目に付くモノだけ手に取り、一応荷づくりを終える。

さて、コロナ感染が確定した場合、移動に公共機関は使えない。どうするのかというと、なんとタクシーがお迎えに来てくださるのである(私の住んでいる地域だけかもしれないが)。実は正直、病院までの移動やら交通費やら入院費やら、あれこれと心配していたのだが保健所とのやり取りで徐々に(ん?これはひょっとしてタダなのでは?しかも専用タクシーというのがあるの、かな?)といった具合に懸案事項が解決していくにつれ、ほんのわずかではあるが不安は取り除かれてゆく。荷づくりの苦労などは相変わらずだがなんともゲンキンである。
タクシーのお迎えは13時。何度もいうが健康な状態なら余裕なはずの荷づくりが、モタモタしていて時間がかかるかかる。しかもタクシーはすでに12時半ごろには我が家の前に着いていたようだ。
「準備でき次第、出ていらしてください」
と電話で丁寧にプレッシャーをかけられ、子どもたちにきちんと別れを告げる間もなく(てかそもそも、遠巻きなんだけどね)バタバタと家を出ると、マンションのエントランスにタクシーが横付けされていて、そこだけはなんだかちょっぴりリッチな気分になったのだった。

タクシーに乗り込んだ瞬間、なぜだか少しホッとする。これまでのどっちつかずだった立場からもう、自分の進む先が決まり『腹をくくった』という感じだったのかもしれない。

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よっしー@自分軸セラピスト
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