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「あなた、コロナにかかってますよ」7話
ついに、PCR検査というものを体験してしまった。
これまでメディアでしか知らなかったもの。そのせいであまり現実味を感じてなかったもの。コロナなんて本当にあるのかな、そんな風にさえ思っていたのに。
検査をうけるということは結果が出るということ。検査を受けたその瞬間から私にどっちかのジャッジが下るということだ。そうなれば人間、「どっちなんだろう……」という思いが常に頭の片隅を支配することになっても仕方ない。自分が陽性になるなんてあんまり想像つかないけど、かといって絶対陰性だという確信もまったく持てず、とりあえずもらった薬を飲むことで少し症状がマシになった気持ちでいた。
検査を受けた次の日は結局なんの連絡も来なかった。
(陰性だからかな?陽性だったらすぐ連絡くるよね?)
もらった薬を飲んでもまったく熱が下がらない事実に気づくこともなく、私は判決を待つ囚人のような気分で、でも、もしかしたらだからこそ、良くならない症状に気が向かずに済んでいたのかもしれない。
検査を受けた2日後。その日は土曜日だった。ふとスマホに目をやると検査を受けたクリニックからの不在着信通知。どうやら気づかなかったらしい。すぐ折り返した。名乗ると
「ちょっと待ってくださいね、先生に代わります」
と何故かちょっと含み笑い気味で言われる。(この含み笑いの理由はいまだにわかってない)
そして、しばらくして出た医師に私は
「あなたコロナにかかってますよ!これからは保健所の指示に従ってください」
と一方的に宣言され電話を切られた。
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この時の自分が受けた衝撃、医師の高圧的でなんの配慮も感じられない口調が忘れられない。もう少し、やんわりと言ってくれるのかと思っていた。せめて「陽性でした」と言ってくれてたら少しは違ったのに、コロナにかかってますよ!って。結果を知らせる医者ってみんな、あんなもんなんだろうか……。
しばらく考え込んでしまって動けずにいたが、少し離れたソファに座っていた娘に
「ママ、コロナだって」
と報告する。なんだか口にすることでますます実感がわいてきてしまう。重い空気が立ち込める。この先どんな展開が待っているのだろう。私は、子どもたちは、いったいどうなってしまうのだろうか。
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