自己否定からの解放ー自分を知り荒波を乗り越えたワタシの半生記41.劇団やったら?
子どもを保育園に預けたことをきっかけに、ワタシは『本当に自分がしたいこと』の探求をはじめた。
しかしその作業は、とても難しいものだった。
一体自分はどんなことができるのか
一体どんなことをしていきたいのか
「自分の棚卸し」とか「自分を知る」なんて言葉はなく、スピリチュアルなんて言葉も知らず、職場の同僚の”みえないヒトの声が聞こえる”なんて話にゾワゾワしていた頃。自分のことを深掘りすることは、まるで雲をつかむような、ふわふわとつかみどころのない作業で、いま思えば、ワタシは自分のことが全くわかっていなかったのだと思う。
それに過去の経験、例えば芝居をしていたとか、仕事中にその日あったことを文章に書き連ねていて、隣のオネエサマに「あなたは作家になるのね」と言われたこととか、風水師さんに「作家、いいですね~」と言われたことなんか、すっかり頭から消え去ってしまうのがワタシの特性というか、過去を引きずらない、過去をゼロにしてしまう悪いクセがある。
それでもその頃、どんなきっかけだったか忘れたがオンラインでwebライターの勉強をしていたこともあり、一応ライターという可能性はあるかな、とうっすら、感じていた。まあ、そうはいっても、だいぶ長いこと
(いやいや、ワタシなんか無理だろう…)
そんな思いが払しょくできず、実際に売り込むまではそこからも相当な時間がかかったのだけど。
ある日、定期的に職場に届く地域の広報誌に『丸の内のOLに子育ての楽しさを知ってもらおう!』といった趣旨の募集イベントが掲載されていた。それは子育て中の女性とOLさんがグループで語り合い、情報交換をするというような内容だったかと思う。
出産を機に、ワタシは、自分が子どもに対する偏見で「子どもは欲しくない」と思ったり、街で会う子ども連れの皆さんに優しくできなかったことを、とても反省していた。そして、もしかしたらそんなヒトがワタシのほかにもいるかもしれない、ワタシが思ってたより楽しかったよーと伝えたい…なんてことを思っていた。
そしてそのイベントが、まさに、それだった。
ワタシは早速主催者の方に連絡をとり、自分も参加してできることがあればしたいと伝えた。すると「では”働く母親代表”のひとりとしてOLさんたちに話をしてほしい」と頼まれた。当日とても楽しくおしゃべりをし、ワタシは主催者の方とお話しし「ぜひ、なにか手伝わせてください!!!」と熱意をぶつけた。
(この頃のワタシは、怖いものなしで何かに取りつかれたかのように”使命感”にあふれていた。ひょっとするとそんな星回りだったのかもしれない)
すると、主催者の方がそのワタシのアツさに負けたのか「では一度きちんと話を聞かせてもらうので時間を取りましょう」と言ってくれた。
この時のワタシは、その仕事を手伝わせてもらう気満々だったので、どんなことができるか、どんなことで貢献できるかを一生懸命考えていた。会社の面接とか派遣会社の面談などの経験はあるが、ワタシ個人が仕事がらみでそういう話をしにいくのが初めてだったので、当日、どんな風にふるまったらいいのかヒジョーに困ったのを覚えている。
今ではだいぶフツーになったが、その頃は珍しかったコワーキングスペースの面談スペースで、彼女はワタシに
「じゃあ、これまでどんなことをしてきたか、聞かせてください」
と言った。
(え? そんなこと聞くの?)
戸惑いながらも、ワタシはそれまでの人生を順を追いながら、
短大出て
正社員になってすぐ辞めて
役者修行して…
と、すべてをさらけ出した。
(会って2度目のヒトに笑)
話を最後まで聞いてくれた彼女は、こういった。
「話を聞いてて思ったんだけど…あなたはもう一度お芝居をやった方がいいと思う。例えばママでもできる劇団をつくるとか。それだって、お芝居やりたいママに向けて活動してるんだから、方向性は間違ってないと思うよ」
え…お芝居? 劇団?
てっきり彼女のやってることをお手伝いするんだと思っていたワタシは、ものすごく面食らってしまった。
腑に落ちない様子が彼女にも伝わったのだろう、彼女は、この活動は一人でできること、自分の得意な分野で力を発揮した方がいいと思うことなんかを説明してくれたうえで、ヒトの集め方やどんな風に進めたらいいかを親切に教えてくれた。
自分にとって突拍子もない展開に、ただただうろたえるばかりだったワタシだが、話を聞くうちにおかげさまで、だいぶイメージもつかめてきて
(やってみるか…)
と思えてきて、最後は「頑張ります! ありがとうございます!!」なんて調子よく応えている自分がいた。
そう、この素直で単純なところも、ワタシのいいところ特徴なのだった。
それでも家に帰ってから、何度も何度も(これでいいのか。ワタシは騙されてるんじゃないか)などと考えてみたのだが、どう考えてもこの話を信じて突き進んだところで、彼女にメリットがあるわけでもなく
(あるとすれば、自分の活動を手伝いたい!などと言ってくる厄介者を追い払えたというところだろうか)
やってみたところで特段のリスクがあるわけでもなく
まあ、やったことはないが、チャレンジしてみるか
そんな気持ちで、その頃盛んだった『mixi』にママ劇団をつくろう!というコミュニティを立ち上げたのだった。
ところで、ワタシはこの出来事を以前にも記事にしているのだが、ホントに考えれば考えるほど、ここで「劇団」という流れになるのが不思議すぎるというか、出会いも不自然なら、話を聞いて「もう一度芝居を」というアドバイスもナゾすぎて、この出来事はワタシのなかで大きなターニングポイントなのだろうと思っている。
ときどき、うえのヒトは『誰か』や『何か』を使ってメッセージを送ってくるという。彼女はそういうヒトだったんだろうなとワタシは思っている。
そして受け取る方は、それを「バカバカしい」とスルーするか、「ホントかわからないけどのってみるか」と取り組むかで、人生の進み方が違ってくるのだと思う。