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「あなた、コロナにかかってますよ」10話

たまたまなのか、なるべく住所の近くに入院先を充ててくれているのか、病院はタクシーで5分ほどの場所だった。息子の通っていた保育園のすぐそばにあるその病院は大学附属病院ということもあり、しょっちゅう前を通っていたものの一度も利用したことはなく、こんなタイミングで中に入ることになるとはーーとヘンに感慨深い。
「迎えが来るまでこのまま待っててください」
とタクシーの運転手さんに言われしばらく待つ。やがて病院スタッフの人が館内から出てきた。タクシーを降りるよう促され、疲れ果てた私は荷物を一切持たず身一つで降りてしまった。(あ!)と思ったがもうめんどくさくて、、、そのスタッフさんはホテルのベルボーイのように車内から私の荷物を持ってくれた(笑)。

両手に荷物を持ったまま、彼は「じゃあまずはCT撮りますから」とCT室に案内してくれる。またもや期せずして”生まれて初めて”のCT撮影。元気なときならもう少し好奇心旺盛にあちこち機器をじっくり観察し、もう少し感想もあると思うのだが、まあ、弱っていたからこそムダに動きたくならなくてよかったのかも(じっとしていられないタイプなのだ)。
ただ、私その時はじめて気がついたのだ。X線の検査を受けるときみたいに「息吸って止めてくださいね」と言われるのだが、まったく息が吸えないことに。そう、いつの間にか深呼吸というものができなくなっていた。

彼に連れられてようやく、入院生活を送る病室に入った。もともと6人部屋らしく入り口の名前を入れるプレートは6人分あるが、おそらく収容人数は減らしているのであろう、名前は私のものだけ。誰もいない部屋の窓際に案内され、カーテンで仕切られたその空間がなんだかこじんまりしているけどとても居心地がよさそうに感じた。
(いや、病院で居心地がいいってのもナンだけど)
その後も入院するにあたり、心電図やら尿検査やらレントゲンなど一通りの検査を行うのだが、もう言われるがままなされるがままである。同意書なんかもサインさせられたが、どんな内容なのかもまったく把握できないまま。

とりあえずベッドに横たえられた瞬間に、よほど具合が悪そうだったのであろう
「えーいもう酸素つけちゃえ!」
と言われ、あっという間に酸素チューブをつけられたのだけは覚えている。あの、鼻に牛さんのような管つけられるやつである。もちろんこちらも初体験。これまで当たり前であるが自分のことしかみえてなくて、自分を客観的にみることも出来ず、ただただその瞬間を生きることしかしてこなかったが、ここへきて初めて(あら?私ってもしかして重症なのかしら)と頭をよぎる。
だってドラマであれ装着されたら重症でしょう?
まあ…息が吸えないんだから間違っても軽症ではないよね、客観的にみると。実際鼻から酸素が送り込まれるようになって、なんだかすごーくラクになった気がしたのだった。
その後も採血やら点滴やら私の腕に何度か針がささり(痛い)あっという間に私の腕は管だらけ。本格的な治療が開始されたのだった。

あっという間にこの状態


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よっしー@自分軸セラピスト
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