【MTT】ショートスタックにおけるプリフロップ戦略(1)30BB~20BBエフェクティブでのオープンレイザーの戦略
今回は何気に初のMTT記事となります。
MTTでは、優勝したり、事故で一気にBIG POTを落としてスタックされるといった一部の例外を除いて、多くの場合ショートスタックで戦うタイミングというのが存在します。
一般的に用いられる、ショートスタックの簡易戦略の最たる例がパワーナンバーで、ライブトーナメント等を見ていても大体20BB前後からこのPush or fold戦略を用いているプレイヤーが多いと感じます。
実際、このシンプルな戦略を用いていても、著しくEVLossがあるというわけではないのですが、GTO上の戦略というのはもう少し複雑な形になります。
今回はエフェクティブスタックを細かく分類しながら、各ESにおいてオープンレイザーがどのような戦略を取りうるのかを検証していきましょう。
▼検証の方向性
まず前提として、エフェクティブが浅くなってくると、大きく
・2BB open
・ALLIN
・Call
・Fold
あたりの戦略がミックスされるようになってきます。
実際のところ、一般的に用いられるPush or FoldでもGTO上著しく間違っていることはないと思いますし、
多くのプレイヤーが特にやや大きめ(15BB程度)のPushに対して適切に受けることができていないことからも、十分利益が出せる戦略と思います。
なので、あえてここまで複雑な戦略を実践する必要性は、ほとんどのフィールドでは大きくないとは思いますが、
より高いレベルのプレイを追い求めるという意味で、今回はより精緻なGTO戦略を紐解いていきましょう。
それでは、エフェクティブスタック別にオープンレイザーの取られうる戦略をみていきます。
▼具体的な戦略の検証
まず、検証の大きな論点となるところは、
・どれくらいのエフェクティブスタックからSB以外からのリンプインが正当化されているか
・どれくらいのエフェクティブスタックから一発入れのレンジが発生するか
という2点です。
一般的には、ポジションが後ろになるほどリンプイン・一発入れの選択肢が持たれやすいので、GTO Wizardでエフェクティブスタックをいじりながら検証していきます。
今回は20-30BBを検証するということで、このあたりになるとまだショートスタックと言えるかどうかは微妙なところですが、
まずはエフェクティブスタックが30BBの場合を見ていきましょう。
(※なお、本シリーズではICM・バブルファクター・バウンティその他の事情は考慮せず、純粋なチップEVで検証していくものとします。)
ブラインドを除き一番レイトポジションである、BTNのオープン戦略をみて見ましょう。
【30BB以上】
エフェクティブスタック30BBの段階では、BTN以前のポジションではまだ通常のRaise or Foldの戦略が用いられているようです。
さすがに一発でオールインするにはスタックが大きすぎるし、コールで入るほどのスタックでもないということでしょう。
そもそもなぜコールで入るかを考えると、これは私なりの解釈ですが、
「リンプ→コンプリートでも、AA等のプレミアをSPR的にポストフロップで十分入れきれる」
「そういったプレミアを隠れ蓑に、コールで入ることで参加レンジを広げられる」
という2点が成立することが大きな要因になっているものと思われます。
その上で、大前提となる"ブラインドをスチールする"という目的が、この段階で用いられるオープンサイズであればどのみちあまり果たせないので(BTNの2.1BB程度のopenであれば、BBは9割近いレンジでディフェンスするため)、オープンであろうがリンプであろうが変わらないといった事情があるからでしょうか。
【25BB前後】
こういったコールでの参加という選択肢が出てくるのは、大体25BB前後からのようです。
ただ、このあたりではまだ全てのポジションでリンプが用いられるというわけではなく、あくまでBTN(やCOの一部)等にとどまっています。
傾向として、エフェクティブスタックがある程度下がってくると、BTNから前のポジションにもどんどんリンプ参加という選択肢が増えてくる形になっています。
ここでも、基本的にまだALL-INという選択肢を使うにはスタックが大きすぎますが、
SBからの場合のみ、後ろに控えているのが1人だけ・ポストフロップでポジションがないという観点から、エクイティはそこそこ高いけどポストフロップのプレイアビリティが低いハンドの一部を中心に、いきなりオールインという選択肢が生まれ始めてきます。
【20BB】
基本的には25BBのときと大きく変わらないですが、このあたりからCOからのコール頻度が発生してくるラインとなっています。
そしてBTNからは一気にプレイングの幅が広がります。
よりOpen Limpが広く肯定されるようになる一方で、ローポケット、やや弱いAxとそこそこのブロードウェイ2枚系を中心に、オールインという選択肢が生まれてきます。
このあたりは、シンプルにプレイアビリティが低い一方、相手がイージーに受けれるハンドに対するブロッカー効果が大きいこと、
ローポケットはツーオーバー系の多くを叩き下ろした上で、強いツーオーバーにもEQ実現がピュアに可能となることあたりが理由としてありそうです。
また、25BB時と比較すると、参加する下限もやや変化が生じています。
Ax、ポケット等のプリフロ段階でのエクイティが高いハンド群のレンジが広がり、一方でX8oや弱いスーテッドなどをFoldに回す頻度が増えてきています。
このあたりは、一つはESが低くなるにつれ、プレイアビリティといった部分よりも単純なハイカードの強さが重視されてくる傾向が反映されているものと思われます。
また、当然ながらSBからのオールインという頻度も25BBと比べ上がってきます。
用いられるハンド群の性質としてはそれほどかわらず、相変わらずAx、ローポケットを中心に、弱いK・Qxやランダムにスーテッド系を少々使う形で構成されています。
一方、BTNの時と同様、下限にあたるどうしようもないオフスート群のハンドの参加率はやや下がってることも注目点でしょうか。
▼本日のまとめ
・ESが浅くなってくると(25BB以下)、特にレイトポジションではOPENのほかにLimpやALL-INといった選択肢が生まれてくる
・この段階でいきなりALL-INが肯定されるようなハンド群としては、ローポケット等プリフロップでのエクイティが高いハンド群・相手がイージーにコールできる部分をおさえた弱めのAxを中心に、EQRを実現する価値が大きなハンドを中心に構成されている
(続く)
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