
化粧と魔女見習い
出勤のため、出かけるため
毎日毎日化粧をする。
あの時間が案外嫌いではない。
でもあれってなんのためにやってるんだろう。
「女性は化粧や準備にお金や時間がかかるからデート代は男性が出すべき」理論あるけど、全くピンとこない。
別に男性のために化粧してる訳ではなく、自分の意思でしてるし。
かと言って、世界に自分1人だけになったとして、誰にも自分の顔を見られることがなくなったら、わざわざ化粧をするとも思えないな。
大学生になってから化粧をするようになったけど、別に好きと思ったことはなかった。
周りに合わせてやらないといけないかなって
見よう見まねでやってただけ。
手先が不器用だから上手くできないし、上手下手より化粧をしているということに意義があると思っていた。
そんな化粧を面白いなと思うようになったのは20代後半、コロナ渦だった。
友だちと会えない、出かけられないから、自分に時間をかけるようになった。
ちょうどそのころパーソナルカラーがSNSで話題にのぼるようになり、いろんなメイク方法やコツを紹介する動画や投稿をたくさん目にするようになった。
そんなのを見ながらいろいろ試してみるようになった。
「こういう色選んだことなかったけど、案外似合うんだな」とか
「自分中顔面が長い顔だったんだな、チークも涙袋も今までやったことないけど中顔面短縮効果あるならやってみようかな」とか
「自分の丸い唇好きじゃなかったけど活かせてそうだな」とか
新しい発見がいっぱいあってとても面白かった。
それと同時に、学生時代に見てきたお化粧が上手で綺麗な子たちは、ちゃんと研究して練習してあのかわいいを作っていたんだなと理解した。
みんな最初から上手な訳ないんだ。
自分は不器用なんじゃなくて、その努力をしてこなかっただけだったんだなと実感した。
でも何歳になっても学べるもんね。
今は気付けてラッキー!
(ちなみに髪も27歳くらいにようやく巻けるようになった)
だから今は化粧するの結構好き。
友だちと遊ぶ時、コンセプトやテーマカラーを決めて、それに合わせたメイクするのとかめっちゃ楽しい。
友だちにプレゼントしてもらった化粧品を使う時に、その子のこと思い出してふふふってなるのも好き。
前の夜に泣いた日でも、朝、化粧をして、最後に口紅を塗ったら、きゅっと外用モード切り替わる。
だから化粧は自分の気分を上げるものでもあるし、遊びでもあるし、一種の鎧でもあるし、社会と自分を繋ぐ橋でもある。
いろんな面があるから、化粧する理由は一つじゃない。
化粧が本当に億劫でできない時は、メンタルか体かその両方かがすごく弱ってる時だからすぐ休むべき。そのバロメーターでもある。
化粧嫌いではないと書いたけど、自分のすっぴんが嫌で仕方ない訳でもない。
もちろんここがもっとこうだったらなって思う箇所は山ほどあるし、シミやたるみの気配も感じるけど、お気に入りのパーツもあるし、何より30年使ってきたこの顔に愛着がある。
すっぴんも自分だし、化粧した顔も自分。
ただ、化粧する前とした後で顔が変化するのが面白い。
化粧をするとき、幼い頃に好きだったアニメで、少女が魔法で魔女見習いに変身するシーンを思い出す。
魔法少女が問題を解決するため、敵と戦うために変身するように、外に出るため、何かと、誰かと、社会と対峙するために自分も変身する。
魔法じゃないから一瞬で変身できないし、変身してもポロンもタップも使えないけど、かかる時間も含めて外の世界と繋がるための、外用の自分になるためのステップ。
今は化粧好きって言ってるけど、この先、考えが変わって化粧なんか一切しないって言い出すかもしれない。
それはそれで別にいい。生きていくのに必要不可欠なものでもないし。
ただ、今と同じマインドでいる間はいくつになっても化粧を楽しいって思えてたらいいな。
年を重ねるごとに似合う色とか変わるだろうし、メイクのトレンドも変わるだろし、その時の自分がしたい化粧をしててほしいな。
何はともあれ、今日も化粧をして、
鏡に映った自分を見ながら最後に「よし」と
小さく呟いて、外に出る。