August 20, 2021 / タイトル考(追補)
《LUNATIC》は2008年に鋤柄さんと制作したSFアニメーション作品で、制作期間約一年をかけてオープニングといくつかの習作カットが仕上げられた。 とりあえず出来上がったオープニングパートを海外コンペに出すことにして、〆切りギリギリまで幾度かの夜を徹して編集し終えた僕は、床で仮眠を取っている本作の監督を叩き起こし一路大阪へと向かった。
00年代、映画祭コンペの大半はまだオンラインによるサブミッションが整っておらず、DVDやHDCAMなどのブツを直接輸送しなければならず、なんとかFedEx大阪営業所でPAL対応のDVD発送手続きを済ませ、祈るような気持ちでレジに¥10,000を奉納した。
無事に機上の人となった《LUNATIC 2008》オープニングの内容はパイロット版ともいうべき出来で、その時のデータは無断でサウンドトラックに突っ込んだアルヴォ・ペルトの《Te Deum》の一節と共にSD画質で手元に残っているが、世に開陳されることはないと思う、、、たぶん。
とさて、《深海の虹》(2019)が完成し、いよいよ《LUNATIC》の制作に再び取り掛かろうとする春の日。 脚本と制作スタイルを思考するのと平行してタイトルを改めるべきだと妄執するようになった僕は、「LUNATIC」というワードは継承しつつそれと対になることばを探し始めた。単語を複数並べることで得られる意味の多義性、矛盾、破壊力。その効果はセルゲイ M. エイゼンシュテインが漢字の部首と旁の並びにモンタージュ論を見出したことに似ている。
産出されたアイデアは以下、LUNATIC Mori(羅語で死)、LUNATIC Patrie(仏語で故郷)、LUNATIC Sphere、LUNATIC Stella、LUNATIC Heaven、LUNEARTH、LUNA-tic…など多言語構成から造語から分節を変えてみたり。
最終的に本作のタイトルは《LUNATIC PLAN(e)T》になったが、これすらもまだ暫定的である。結局作品が完成してみないとこれで良かったのかどうか分からない。
《深海の虹》のライナーノーツは、脚本脱稿と同時に用意されていて、作品完成後そのまま世に出した。が、本作の制作スタイル(これについてはまた別段でまとめたいと思う)を考えると、最初にあらすじを説明したりすることは不可能である。優れたSF作品はノスタルジーを孕んでいる(「未来はつねに懐かしい」)のではないかと考え始めて幾星霜、プラネットという言葉がふと浮かんだ時、何やらレトロな響きだなと思いつつ英語のスペルで書き出してみると、、、PLANETの中に植物PLANTを見つけてこれしかないんじゃないか!と、どこか天啓にも似たエピファニーを感じて今に至っている。
昨日、スキマキライブラリーから拝借した《ファンタスティック・プラネット》(1973)を久々に鑑賞した。本作を描くなかで、この名作も潜在意識に働きかけていたのかも?と感謝して。 《LUNATIC PLAN(e)T》がルネ・ラルーの魔術とともにあらんことを。
2021年8月20日 松村康平識
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『LUNATIC PLAN(e)T』は宇宙を舞台にしたSFファンタジーです。現在は脚本の骨組みが完成し、アニメーションの制作に取り掛かり始…
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