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聴けば聴くほど酷い男だと思ってしまう~木綿のハンカチーフ~

こんにちは。

『木綿のハンカチーフ』という有名な歌謡曲がございます。太田裕美が歌っている曲で、1975年にリリースされました。サザンオールスターズのデビュー曲『勝手にシンドバッド』が1978年リリースですから、その3年前ですね。

たまに聴きます。有名な曲ですから、カバーもされています。ここでは、桑田佳祐バージョンを紹介しましょう。

しかしこの曲、聴けば聴くほど、彼氏への怒りが湧いてきます。それぐらい、彼氏が自分勝手で嫌な彼氏をしています。ですから、今日は、そんな彼氏の言葉を批判していきます。

曲の構成

この曲は歌詞が4番まであります。それぞれ、彼氏の言葉に彼女が返事をするスタイルになっています。コール・アンド・レスポンス。

それでは歌詞を見ていきます

1番

まずは、1番。彼氏の言葉から見ていきましょう。

恋人よ ぼくは旅立つ
東へと向う列車で
はなやいだ街で 君への贈りもの
探す 探すつもりだ

『木綿のハンカチーフ』1番彼氏側

「東へと向う列車」で旅立つので、このカップル(当時、カップルと言っていたんですかね? アベックだったりして)は北関東以北ではない地域ですねきっと。このカップルが北関東以北に居住していた場合、そこまでしんみりしませんよね。いつでも帰ってこれますから。

では、これに返事する彼女を見ていきましょう。

いいえ あなた 私は
欲しいものはないのよ
ただ都会の絵の具に
染まらないで帰って
染まらないで帰って

『木綿のハンカチーフ』1番彼女側

あぁ、彼女、素敵ですね。彼氏に、芋っぽいままでいてほしいと願っております。まあ、人間なんて変わるものですが。良くも悪くも。

では、次にいきましょう。

2番

2番の彼氏の声を聞きましょう。

恋人よ 半年が過ぎ
逢えないが泣かないでくれ
都会で流行りの 指輪を送るよ
君に君に似合うはずだ

『木綿のハンカチーフ』2番彼氏側

半年も帰ってないんですよこの彼氏。いきなりとんでもないことをしていますね。きっと、この彼氏は年度が変わるときに引っ越しているでしょう。ということは、4月から半年も帰っていない(帰っていたとしても会ってない)ことになります。4月から9月まで、ゴールデンウィークもお盆も超えているので、帰省するチャンスは2回もあったのに会っていない。ちょっと不穏な状態ですね。

では、彼女の返事を見てみましょう。

いいえ 星のダイヤも
海に眠る真珠も
きっと あなたのキスほど
きらめくはずないもの
きらめくはずないもの

『木綿のハンカチーフ』2番彼女側

彼女は物質的なものをほしがっているわけではないのですよね。彼氏から「愛」という形のないものがほしい。パパ活しても得られないものをほしがっているわけです。素敵ですね。

3番に行きましょう。

3番

次に彼氏はなにを言うのでしょうか?

恋人よ いまも素顔で
くち紅も つけないままか
見間違うようなスーツ着たぼくの
写真 写真を見てくれ

『木綿のハンカチーフ』2番彼氏側

ここで、彼氏からの彼女批判が入ります。「みだしなみしっかりしろよ、だらしないな」ぐらいな言葉でしょうかね。口紅をつけなくてなにが悪い。素顔で何が悪い。「お前は口紅もつけないのか」と言うよりも「口紅を付けたらもっとかわいくなるだろうに」ぐらいプラスに言えば、彼女も考えるかもしれません。そして、「かっこいいだろ」と見せびらかすようにスーツを着た写真を彼女に送っているわけです。見た目重視の彼氏ですね。たぶん、もう心は離れています。彼氏に残っているのは彼女への支配欲だけ。

さて、彼女はどんなアンサーを出しているでしょうか?

いいえ 草にねころぶ
あなたが好きだったの
でも木枯しのビル街
からだに気をつけてね
からだに気をつけてね

『木綿のハンカチーフ』3番彼女側

あの、西にいた時代のあなたが好きだったと言う彼女。あなたが好き「だった」の、と言うということは、彼女も少し心が離れていますね。でも、彼氏を貶さないだけ好印象です。

最後、4番の歌詞を見ていきましょう。

4番

ついに4番です。野球なら4番は一番打てる打者を出しますが、これは4番までの曲ですので、どちらかというと試合が9回に入るみたいなものですね。(意味不明)

恋人よ 君を忘れて
変わってく ぼくを許して
毎日愉快に過ごす街角
ぼくは ぼくは帰れない

『木綿のハンカチーフ』4番彼氏側

もう、彼氏は彼女のことをしばし忘れてしまっている。人間、時が経てば変化しますから、変わってゆくことには誰も文句言えません。みなさん、楽しいことに流れていきますからね。「いい経験」よりも「いい思い」をしようと躍起になりがちなところが我々の悲しいところ。

ところで、この「毎日愉快に過ごす街角」は誰と過ごしているんですかね? まさか、別の女が出来た? それとも風俗嬢? ちょっと気になるところではあります。

これに対する彼女の返事を見てみましょう。

あなた 最後のわがまま
贈りものをねだるわ
ねえ 涙拭く 木綿の
ハンカチーフ下さい
ハンカチーフ下さい

『木綿のハンカチーフ』4番彼女側

「涙拭く」と言うことは泣いている、すなわち悲しがっているわけです。彼女、彼氏がどれだけわがまま言おうと、自分は彼氏のことを貶さずいて、相手のことを考えて行動しているところが素敵ですね。わがままでハンカチーフくださいは一見するとかわいいわがままですが、実際、彼氏側がこのハンカチーフを選ぶ際は、彼女のことを考えねばならないので、本気で選ぶなら彼氏にとってかなり大変なわがままとなります。まあ、この彼氏ですから、その辺のお店でたまたま目にした木綿のハンカチーフを送るか、次の彼女(わたしの中ではすでにいる設定)に相談したら「そんなのに返事しなくていいじゃん」とか言われて返事すらしない、ぐらいのことをしていてもおかしくないですが。

冷静に考えると

彼女も彼女で、彼氏に会いに行ってないんですよね。ずっと、待っているだけですよね。歌詞はきっと一部だけを取り出しているので断定はできませんが、ずっと彼氏からの連絡しかないのだとしたら、この女の人は消極的過ぎやしませんか? 昔の女の人は、わが国の文化的には待っていることが美徳だと思いますしそれが当たり前とされてきた時代だと思いますので、彼女になんの悪いところはないと思いますが、今の時代なら、たとえインターネットがなくても、会いに行かない彼女も彼女だと言えてしまいそうです。今はラインなどを使用すればビデオ通話もできますから、お互いが離れていても顔を見ておしゃべりできますよね。

作詞者は誰だ

ここで、作詞者がだれか気になって調べてみたところ、松本隆でした。この人は『君は天然色』や『赤いスイートピー』の歌詞を書いた人です。この人なら、1949年生まれですから、半年帰っていないという状況も理解できます。東海道新幹線が完成したのが1964年です。ということは、15歳までは新幹線がなかった。神戸出身とのことです。ということは「東へと向う列車」というのは、神戸から東京までの、本当に東海道線を端から端まで乗るような列車を松本隆は歌詞を書く際に想像しているでしょう。18キッパーの限界旅ほどではないにせよ、それなりの時間を在来線に乗る必要があります。当時は在来線特急があったはずですが、それでも在来線ですから、新幹線とは比較にならないぐらいの所要時間がかかっていたことでしょう。そりゃあ半年帰らないのもうなずける。(追記:神戸出身ではないみたいですが、この当時を知っていれば、西というのは「東京から移動に時間がかかる」の認識でいいです。)

また、最後、「悲しい」気持ちを直接的に表現せず、涙拭くハンカチをくださいという表現だけで悲しさを表現しているところが松本隆っぽくていいなと思います。この人、歌詞を書かせると天才です。松本隆は、歌詞から情景を想像させるのが得意な作詞者です。本人曰く(テレビで観ただけですのでうろ覚えですが)、情景を想像させるのに「色」を使うらしいです。赤いスイートピーも「赤い」ですし。「天然色」は何色なんですかね? 想い出は「モノクローム」ですが。

(最後に)この記事を書いていると意外に彼女側に落ち度があるのではないかと責めたくなってしまった

当初、この記事を書く前は、彼氏と彼女の過失割合は100:0ぐらいに思っていました。しかし、書いているうちに気持ちが整理され、どうも95:5ぐらいになりそうと思うようになったのでした。想定外でした。実際、失恋については誰が悪いとは意外と言い難いことが多いので、実際の恋愛でこれだけの過失割合になることはそうそうないです。しかし、これは完全に彼氏が悪いと思っていたので、この「完全に」の言葉がわたしから消えたこと、これは大きかったです。

補足:最初、「作曲者」と書いていましたが、松本隆は「作詞者」です。失礼しました。

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