法律婚との違いは? 気になる「事実婚」を調べてみた #結婚ってなんだろう
「私たちには、事実婚ってこれ以上ないってくらい最適な選択肢なんです」
こう語ってくれた知人がいました。
多様性が謳われる世の中ですが、結婚に関してはまたまだ画一的なイメージで語られることが多いです。だからこそ、“ふたり”の関係性に合わせた選択肢を知っておくことで、個々人の中にある「こうあるべき」を超えていけるのではないでしょうか。
このような想いから、編集部では様々な結婚の形をお伝えし、「#結婚ってなんだろう」を考えていきたいと思っています。
まず取り上げるのは「事実婚」。いわゆる法律婚とはなにが違うのか、事実婚を選択した人の想いはどういったものなのか。
実際に事実婚を選んだ方の声も交えているので、ぜひ「自分にとっての結婚」を考えてみてください。
事実婚ってなにを指すの?
そもそも事実婚とは、婚姻届を出していないものの、実質的には「夫婦同様の関係にある関係性」を指します。反対に、婚姻届を出した婚姻関係は法律婚と呼ばれます。
とは言え、これだけだと分かりにくいですよね。「同棲となにが違うの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
より詳しく述べると「ふたりがお互いに婚姻の意思を持って夫婦としての共同生活を行っている状態」を、事実婚と呼びます。
単に恋人と一緒に暮らす、とだけ認識している状態は、事実婚とは捉えられません。
言い換えると、本人同士に夫婦としての認識があれば、事実婚と呼べるということです。さらに、事実婚の公正証書があれば、法律婚と同じように社会保険の扶養に入ることも可能になります。
事実婚を選ぶ大きな理由
法律婚ではなく事実婚を選ぶ理由には、どのようなものがあるのでしょうか。様々ありますが、メリットとしてよく挙げられるのは次の2点です。
1)苗字を変えなくて良い
現在の日本の法律では、入籍すると、ふたりのどちらかが苗字を変えなければいけません。
苗字を変えるとなると、クレジットカードやキャッシュカードなど、多くのものにおいて名義変更が必要になります。名義変更をするだけでお金や時間をとられたりと、馬鹿にはできない労力がかかってしまう。
また、苗字を含んだ名前というものは、大切なアイデンティティでもありますよね。
生まれてから慣れ親しんできた大切な名前。それなのに、どちらかが必ず苗字を変えなければならないことに違和感を持つ人もいらっしゃいます。
2)パートナーの家族と姻族関係にならなくてよい
パートナー本人のことは大好きだけど、相手の家族とは一線を引いておきたい。もしくは、自分の家族とは距離をおいて欲しい、という方も事実婚を選ばれることがあります。
入籍となると「家と家でするもの」という認識が強いですが、事実婚は”ふたり”で完結する関係。事実婚では、互いの両親との関係性が発生しないまま、婚姻関係となります。
このため、ご家族の問題から、事実婚を選ぶカップルの方もいらっしゃいます。
事実婚で気をつけたい点
反対に、事実婚の選択において気をつけるべき点は、どのようなものがあるのでしょうか。
1)親権の問題
事実婚夫婦の間に生まれた子どもは、自動的に母親の戸籍に入り、親権は母親に与えられます。
父親が親権を得るには、「認知」のステップを踏み、家庭裁判所での手続きが必須。この手続を踏まないと、父親の扶養や相続を受ける権利は発生しません。
そのため、子どもを考えているカップルは注意が必要になります。
2)経済的な問題
事実婚では、所得税の配偶者控除を使うことが出来ません。そのため、お互いの経済的自立が必要になってきます。
また、入籍していない場合は、夫婦間で相続権が発生しません。遺言を残せば、パートナーへの相続も可能になりますが、その場合でも法律婚では存在する配偶者控除は適用されない形となります。
苗字を変えなくて良い、などの自由な側面だけではないことは、気に留めておくと良いかもしれません。
事実婚を選んだ人の声「自分の幸せの形が分かっていたから、事実婚を選択をした」
事実婚という制度は知っていても、実際に選択した人が周りにいる方は少ないと思います。
気になるのは、実際に選んだ人の声。
そこで、「ふたりの教室」に参加してくださっている、かなみんさんにお話を伺いました。
かなみんさんは、昨年3月にパートナーとの事実婚を選択した方。法律婚でなく事実婚にした理由や、周囲の反応はどんなものだったのでしょうか。
ー事実婚を選んだのはなぜだったんですか?
元々結婚する必要性を感じていなかったんですよね。ふたり一緒にいられるだけで十分で。子供が欲しいわけでもなかったから、法律上の夫婦となるメリットって特にないよね、とふたりで話していました。
ーその中で事実婚とはいえ、婚姻関係になられたきっかけはあったんですか?
きっかけは私がフリーランスになったことです。やっぱり社会的に不安定な肩書きになるので、お互いを支え合えるよう、彼に”社会的に頼れる関係”になってほしくなったんです。事実婚とはいえ、婚姻関係になるのでいざというときには扶養などに入れますし。
お互いのライフスタイルに合わせて、事実婚を選択したという流れです。
ー自然に事実婚が選択として浮かんでいたと。
入籍となると、心理的ハードルが高すぎるんですよね。私と彼との関係はそのままでいたいんですけど、両家挨拶とか、それ以外のものがふたりの間に訪れるのが嫌だったんです。
ーなるほど、本当にふたりに合う形だったんですね。ご両親の反応はいかがでしたか?
母親は泣いて喜んでくれましたね。事実婚でも、娘が婚姻関係になったこと自体が嬉しかったみたいです。
父親は少し複雑そうでしたけど、私が幸せなことは全て受け入れてくれてるから。特になにかを言われたことはありません。
ーやっぱり親世代にとって、子どもが公的な夫婦関係を得ることは安心感があるんでしょうかね。でも最終的に受け入れてくれてすごく素敵ですね……! 友人や知人からの反応はいかがでした?
これが面白いように2つに分かれたんです。「え、事実婚したんや。ええなぁ、面白い!」と言ってくれる人と「え、なんでそんな中途半端な」と言う人。
それぞれの結婚観が表れていて面白いですよね。私たちは納得して選んでるのに、中途半端って言われるんや、って。
ー中途半端……。そう言われて面白がれるのは驚きです。
私たちからしたら、事実婚ってこれ以上ないってくらい最適な選択肢。でも、それが誰にでも合うかって言われたら違いますしね。
自分の幸せの形が分かっていたから、私は事実婚という選択をしてよかったと思います。
事実婚を選んだかなみんさんのお話、いかがでしたか。
もちろん法律婚が良い、事実婚が良い、という良し悪しの話ではありません。大切なのは、ふたりに合った形を選ぶこと。
パートナーと一緒に生きていきたいと思ったとき、それを法律婚という形だけに当てはめようとすると息苦しいと感じることもあると思います。けれど、選択肢を知り、ふたりで生きる道を広げることで、あなただけの幸せの形を選び取れるのではないでしょうか。
「結婚するならこうしなきゃ!」ではなく、新たな選択肢を手にして、大切なパートナーと話し合ってみて欲しい。強くそう思います。
【参考文献】
『事実婚 愛の新しい形』(著:渡辺淳一、集英社新書)
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