治療抵抗性うつ病に対する単回投与シロシビン療法の研究
NEJMに掲載された第2相二重盲検試験では、治療抵抗性うつ病患者233名を対象に、シロシビンの単回投与(25mg、10mg、1mg[対照群])の効果を検証しました。対象となった患者は2-4種類の抗うつ薬治療に反応せず、95%が複数回のうつ病エピソードを経験し、86%が1年以上の長期エピソードを有していました。
主要評価項目である3週間後のMADRS(Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale)スコアの変化量を見ると、25mg群で-12.0点、10mg群で-7.9点、1mg群で-5.4点の改善が見られました。25mg群と対照群との差は-6.6点(95%信頼区間:-10.2〜-2.9)と統計学的に有意でしたが、10mg群では対照群との有意差は認められませんでした。
安全性については、投与日に最も多く報告された有害事象は頭痛(24%)、嘔気(22%)、めまいと疲労(各6%)でした。特に注目すべき点として、自殺念慮や自傷行為が全群でみられ、高用量群でより多い傾向が観察されました。
研究の限界として、活性対照群がないこと、民族的多様性に乏しい参加者構成であること、自殺リスクの高い患者が除外されていることが挙げられます。また、25mgと10mg投与時の主観的な効果の強さは、二重盲検構造の有効性を低下させる可能性があります。
著者らは、25mgの単回投与が3週間後の抑うつ症状を有意に改善する一方で、有害事象にも注意が必要であると結論付けています。今後、より大規模で長期の試験、および既存の治療との比較試験が必要とされます。