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大うつ病に対するPsilocybin支援型精神療法の効果
大うつ病(MDD)は、世界で3億人以上が罹患する重大な公衆衛生上の課題です。現在の治療法には効果や治療継続性に限界があり、新たな治療アプローチの開発が求められています。本研究では、精神療法とpsilocybin投与を組み合わせた治療法の有効性を検討しました。
研究は、Johns Hopkins Bayview Medical Centerの精神薬理・意識研究センターで実施されました。21歳から75歳のMDD患者27名を対象に、即時治療群(n=15)と治療待機群(n=12)に無作為に割り付け、8週間にわたる比較試験を行いました。
治療プロトコルは、支持的精神療法(約11時間)の文脈の中で、2回のpsilocybin投与セッション(セッション1:20mg/70kg、セッション2:30mg/70kg)を実施しました。主要評価項目は、GRID-Hamilton Depression Rating Scale(GRID-HAMD)によるうつ病重症度でした。
結果として、27名中24名(89%)が介入を完了し、治療後1週目と4週目の評価を受けました。参加者の平均年齢は39.8歳(SD=12.2)で、16名が女性(67%)でした。ベースライン時のGRID-HAMDスコアの平均は22.8(SD=3.9)でした。
即時治療群では、治療1週間後および4週間後のGRID-HAMDスコアが有意に低下し(それぞれ8.0[7.1]、8.5[5.7])、待機群の同時期のスコア(23.8[5.4]、23.5[6.0])と比較して大きな効果が認められました(5週目:Cohen's d=2.5、95%CI:1.4-3.5、p<.001;8週目:Cohen's d=2.6、95%CI:1.5-3.7、p<.001)。
特筆すべきは、psilocybin投与後、1週目で17名(71%)、4週目で17名(71%)が臨床的に有意な反応(GRID-HAMDスコアが50%以上減少)を示し、1週目で14名(58%)、4週目で13名(54%)が寛解(GRID-HAMDスコア≤7)に達したことです。
副次的評価項目であるQuick Inventory of Depressive Symptomatology-Self Report (QIDS-SR)でも、最初のpsilocybinセッション1日後から急速な改善が見られ(16.7[3.5] vs 6.3[4.4]、Cohen's d=2.6)、その効果は4週間後まで持続しました。
安全性に関して、重篤な有害事象は報告されませんでした。一過性の血圧上昇が1セッションで観察されましたが、医学的介入は不要でした。その他の有害事象として、psilocybin投与中の感情的・身体的な困難な体験や、投与後の軽度から中等度の一過性の頭痛が報告されました。
本研究は、MDDに対するpsilocybin支援型精神療法の有効性を示す重要な知見を提供しています。支持的精神療法は、psilocybinによる神経可塑性の促進と相乗的に作用し、より深い治療的変化を可能にする可能性があります。特に、安全な環境での強い感情体験や洞察が、うつ病の改善に寄与すると考えられています。特に、従来の抗うつ薬療法と比較して、より大きな効果サイズと持続的な改善が得られたことは注目に値します。
Davis, A.K., Barrett, F.S., May, D.G., Cosimano, M.P., Sepeda, N.D., Johnson, M.W., Finan, P.H., & Griffiths, R.R. (2021). Effects of Psilocybin-Assisted Therapy on Major Depressive Disorder: A Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry, 78(5), 481-489. https://doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2020.3285