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2024年のエンタメを語る。私の10選(+α)
明けましておめでとうございます。
毎年、抱負を立てても忘れてしまう私だが、一年の振り返りの記録として、エンタメ作品の感想を語ることにする。
ということで、2024年に公開されたコンテンツ(映画・ドラマ・アニメ・ゲーム・本など)の中から印象に残ったものを、泣く泣く10作品に絞って、私見100%で語っていく。
映画
『ルックバック』(配信中:Prime Video)
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<あらすじ>
引きこもりの天才少女と輝く才能を秘めた同級生が出会い、漫画を二人で創り始めた瞬間、運命が大きく動き出す。過去と未来、創造と喪失が交差する中、二人の物語は想像を超えた結末へ突き進む。
<感想>
もはや語り尽くされた作品だろう。創作に無縁の人も感情移入できたのは、この映画の凄さを物語っている。だけど、創作者にこそ、この作品を観てほしいと私は思ってしまうのだ。創作には良くも悪くも誰かの人生を変えてしまう力を持つし、書き換えてしまう力だってあることを改めて直面させられる。そして、映画としては異例の58分だが、短い尺だと思えないくらいの深い感動と響き残る余韻。「巷で流行っているショート動画を批判する俺カッコいい」なんて愚の骨頂であり、冗長を削る覚悟を持たねばならないと思った。
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(配信中:Prime Video)
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<あらすじ>
クリスマス休暇に学校に取り残された嫌われ者の教師、問題児の生徒、心優しい料理長。奇妙な共同生活の中で、ぶつかり合いながらも絆を深め、孤独と心の再生を描く、笑いと感動に満ちた奇跡の物語。
<感想>
どうやら私はバディ作品が好きなようだ。2024年、最高の映画だった。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』や『最強のふたり』が好きな人は観てほしい。涙だけじゃなくて鼻水出るぞ。日々、会社や学校のヒエラルキーに毒されていると、人間関係で大事なことを見失うんだよな。好感度を上げようと、人前では自分に優しく接してくる奴はたくさんいる。けれど、本当に大事にしなければいけないのは、みんなの好感度が下がろうとも自分のために愛や友情を捧げる人なのだ。そんな当たり前を、改めて気づかせてくれた。
『チャレンジャーズ』(配信中:Prime Video・U-NEXT)
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<あらすじ>
元天才テニスプレイヤーのタシが試合中の大怪我で引退を余儀なくされるも、付き合っていた彼女に翻弄され、親友と繰り広げる愛と野心の危険なトライアングル。裏切り、情熱、勝負の駆け引きが交錯する、スリル満点のラブストーリー!
<感想>
「奇天烈映画」としか形容できないこの映画。そのため、世間では賛否両論の作品だ。最初はスポーツ映画だと思ってみたけど、あくまで一要素にすぎない。どうやら公式ではラブストーリーと謳っているけど、一体俺たちは何を見ているんだ…と言わんばかりの展開。結末は目が飛び出るかと思うほどの謎シーンで幕を閉じ、スタッフロールでは口を空けていた。しかしある日、この映画のシーンの数々がふと脳裏に甦るのだ。そうか、俺はこの映画が好きになってしまっているのか。
『悪は存在しない』
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<あらすじ>
自然豊かな山村で暮らす父娘の静かな生活が、リゾート開発計画の波に飲み込まれていく。美しい風景の中で浮き彫りになる人間の欲望と矛盾が、深い問いを投げかける濱口竜介監督の圧巻のドラマ。
<感想>
飛行機の中で見られる映画の中で、一際目立っていたこの作品。機内の小さいモニターで見ていることを忘れるくらい没頭し、衝撃の展開に余韻と考察が止まらなかった。気がつけば、濱口監督の『ドライブ・マイ・カー』を見ているときに感じた、身の毛のよだつような不穏な空気が私を包んでいた。本作にも出てくる車中のシーンは、まるで隣を走っている車中の会話を盗み聞きしているように思えてくるほど自然な演技が繰り広げられる。配信サイトでは提供されていない作品のため、視聴難易度は高いものの、上映されている映画館を何とか見つけ出して鑑賞してほしい。
漫画
『宝石の国』
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<あらすじ>
脆くて戦えない宝石・フォスフォフィライトが、自らの役割を見つけるために奮闘しながら、仲間と月からの侵略者「月人」と戦う壮大な冒険。美しい世界観の中で、仲間の喪失や自分の変化を経験する切なくも深い成長物語。
<感想>
まずは…完結していただき、ありがとうございました。時間と空間を途方もなく広々と使ったSF作品であり、これを美しく完結させてしまうのが市川春子さん(作者)が天才と呼ばれる所以。一巻を読んだ時に、この結末を誰が想像できたであろうか。きっと昔の私では、これを「ハッピーエンド」だと思えなかっただろう。時間が経つほどに、この作品が人生観に問いかける深さを実感させられる。キャラが多くてストーリーも難解のため、アニメを副読書の位置付けとして鑑賞していたのは良い思い出だ(アニメは漫画の途中の展開まで放送された)。
テレビアニメ
『響け!ユーフォニアム3』(配信中:Prime Video)
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<あらすじ>
全国大会を目指す高校吹奏楽部の少女たちが、友情、葛藤、そして音楽に全てを賭ける青春の真髄を描く物語。息を呑む演奏シーンと心揺さぶるドラマが織りなす、美しさと情熱に満ちた第3章がついに幕を開ける!
<感想>
まずは…この作品も完結していただき、ありがとうございます。途中で劇場版も挟み、3シリーズにも渡っているため、勧めづらいけれど皆んなに観てほしい。それほどに、私の推し作品なのだ。演奏シーンは勿論のこと、複雑な人間関係や家庭事情を抱える同僚の悩みを解決していく主人公が圧巻なのだ。青春モノなのに、伏線があるんだぜ?毎シリーズ、ラスボスがいるんだぜ?この作品の原作は小説で、最後は歴史に残る原作改変だと思う(SNSでは炎上気味だったけれど…)。ぜひ、自分の目で確かめてほしい。
ゲーム
『Stellar Blade』(PS5)
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<あらすじ>
滅びゆく未来の地球で、人類の希望を背負った戦士イヴが謎の生命体「ネイティブ」に挑む壮絶な戦いが始まる。美麗なグラフィックと緊張感あふれる戦闘が織りなす、心拍数MAXのSFアクションアドベンチャー!
<感想>
エログロなデザインが、「ポリコレ無視」と話題になったが、あくまでそれはおまけにすぎない。スタイリッシュで気持ち良いアクション。吐き気を催すほどのディストピアワールドに、薄気味悪いホラー展開。そうか、やっぱり私はSFが好きなのか。ソシャゲメーカーが、コンシューマーゲーム初作品でここまでクオリティ高い作品を作れることに驚愕。ゲーム業界では、シリーズ作品やリメイク作品が目立つ中、純粋にゲームとして面白かった新規IPとして、おすすめしたい一作。
バラエティ
『白と黒のスプーン ~料理階級戦争~』(配信中:Netflix)
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<あらすじ>
世界的に名を馳せる料理人の味は本物か?有名シェフ20人と無名料理人80人が、韓国料理界の頂点と賞金3億ウォンを懸けて繰り広げる熾烈なバトルの結末は――。
<感想>
これが、2024年で一番面白かったバラエティ番組になるとは…。だって、「異国の地のバラエティ」「料理番組」という、私が普段見ない2大ジャンルを占めているのだから。推しができるほどキャラが立つ出演者たちが作る料理を、韓国の三つ星シェフが一口食べてあっさりと脱落させていくという構図。飽きさせずに次々と出演者たちに立ちはだかる課題。途方もなく広大で立体的な撮影セットとナレーション無しでも観れてしまう動画編集。韓国では無名料理人80人が有名になってしまうほど過熱したコンテンツとなったようで、日本のテレビ製作者や出演者たちにも番組作りに衝撃を与えたようだ。
『あいの里 シーズン2』(配信中:Netflix)
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<あらすじ>
35歳から60歳の男女が沖縄の築150年の古民家で共同生活を送りながら、人生最後の恋を探すリアルな恋愛ドキュメンタリー。スマホ禁止、1日500円の食費での自給自足生活が織りなす、人間関係のドラマと予測不能な恋模様が、心を揺さぶる!
<感想>
一世を風靡した『あいのり』の製作チームが贈る、シニアたちの恋愛ドキュメンタリー。そういえば、里を「り」に読み替えると、『あいのり』になることに今更気づいた。シーズン1を見ていないのに、Netflixの1位になっていたので、ついつい見てしまった。恋愛という身近なテーマなのに、シニアたちが主役なので、感情移入ができそうで出来ないという程よい距離感が新しかった。理性的に考えれば、これを見て得られるものは何も無いだろうけど、寝る前のお酒のように肩肘張らなくても楽しめる。エンタメって本来、こういうものなのだろうと思う。
『M-1グランプリ2024』
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<あらすじ>
漫才日本一を決める最高峰の戦い。芸人たちの命を懸けた笑いと涙のドラマが奇跡の瞬間を生み出す、年に一度の祭典!
<感想>
令和ロマンによる初の連覇は、もはや語り尽くされた。私が本大会で特に印象に残ったのは、新審査員の石田明さん(NON STYLE)のトム・ブラウンの漫才を「普通の漫才で笑えなくなった人を救済するための漫才」とコメントし、M-1グランプリの点数としてはやや低めの点数を付けた。石田さんも個人的にはトム・ブラウンを好きだと言っていて、私自身も大好きなのだが、この評価には納得できるし、誰も触れてこなかったM-1としての審査基準をはっきり言語化したのは凄いと思った。人によって「ジョーク」だと思える許容範囲が大きく違うのだから、型破りなものとドレスコードを守るもので同じくらいの面白さなら、後者の方が評価されるというのはとても納得できたのだ。披露された漫才の中では、真空ジェシカが一番印象に残った。今までよりも万人受けするような内容なのに、彼らのコアな笑いが失われておらず、過去の大会で彼らが成し得なかった最終決戦進出を決められたのは私も嬉しかった。…と、お笑いを語るのは痛いと理解しつつも、どうしても語りたくなってしまう魔力を持つのがM-1だ。どうせ長文になると思って、2024年のエンタメ10選の最後に紹介することにした。
その他作品たち
奇しくも10作品に選ぶことができなかった作品をそのままにしておくのも消化不良感があるため、せっかくだから、他に印象が残った2024年公開の作品たちに一言コメントを入れることにする!
・映画
『夜明けのすべて』:上白石萌音さんと松村北斗さんの演技と距離感があまりに絶妙!
『オッペンハイマー』:納得のアカデミー賞。しかし、ノーラン映画は相変わらず、一度で理解不能!
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』:ジョーカーが監獄内を盛り上げるシーンに心が躍った私も、この作品に毒されていた一人なのだと思った。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」:タイトルの誤字がないか、何度も確かめてしまう。あのちゃんの演技がうますぎて震える。
・ドラマ
『地面師たち』:オープニングの入りで、神ドラマだと確信した。
『イカゲーム シーズン2』:色々言われているけど、1話は圧巻だった(よね?)
『フォールアウト』:核戦争後の世界観という共通項があるのに、北斗の拳とはまるで違う(両方面白い)。
・漫画
『生活保護特区を出よ』:過酷な環境であっても、娯楽がなければ生きていけない。
・本
『漫才過剰考察』:M-1の漫才が近年高度で複雑になってきてるなぁという直感が、言語化された。
・ゲーム
『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…(リメイク版)』:原作は1988年。既にこんな面白い作品が完成していたとは。
『超探偵事件簿 レインコード』:ダンガンロンパ好きなら必修。最後までやれば必ず理由がわかる。
・バラエティ
『ゴールデンコンビ』:個人的には、真栄田賢さん(スリムクラブ)が優勝です。
『キングオブコント2024』:巨匠無き今、お笑い界は賞レースの審査基準が注目された一年だった!
さいごに
皆さんは、2024年のエンタメはいかがだったであろうか?
過去一で長文になってしまった。年内に記事を出そうと思っていたのに、気づけば満員電車に揉まれる日々が始まってしまった。
しかしまだ、年明け気分が抜けきれておらず、心の中で「休みたい」と呟く人が大半だろう。
この週末は、エンタメとともに、年末年始のロスタイムを過ごしてはどうだろうか。
そして、心に残る作品との出会いが、皆さんの2025年を豊かにしてくれますように。