エースをねらえ!
最近だと、テニスを扱ったマンガといえば『テニスの王子様』が一番に思い浮かんでくるんだろうけど、50代前後の私の世代だとこっちの方が多いんじゃなかろうか。
松岡修造がウィンブルドンのセンターコートに持ち込むほど推していた、『エースをねらえ!』を。
アニメで再放送を散々見ていたはずだった。
野郎が少女マンガなんか読むな的な昭和のガキたちの間でも、この作品はマンガを読んでも、アニメを見ても許される空気があった。
作品が世に出たのは、1973年。
当時の日本のテニス事情からして、日本人が世界から程遠くてお呼びでない時代。
キング夫人、クリス・エバート、コート夫人たちをはじめ、当時の世界のテニス界のトップ選手も実名で登場してくるし、主人公の岡ひろみが渡り合うのはスケールが大きかった。
ただし、アニメの記憶にあったのは最初のコーチ、宗方仁の死去前後だったので完全に把握してた訳でもなくて、マンガを通じて全てを知った。
それもクラスの子が読んでたのを、俺たちにも貸せという強引な頼みで。
でも、当時は面白いとは認めていたものの、今ほど手許に置いておきたいとは思ってなかった。
ましてやテニスをやろうとも思ってもいなかった。
それから数十年後。
テニスを始めたからにはと、暇があれば書店に立ち寄っては探していた。
意外と棚には置かれていなくて、店員に在庫を問い合わせるとございませんとか、取り寄せには時間がかかりますとかのつれない返事しかなかった。
その一方で『ベルサイユのばら』はちょいちょいあったのに。
本当に急ぐならばアマゾンでもよかったのかもしれないが、なんか嫌だった。
書店を巡って探し求めるという行為そのものが好きなのだ。
あったら嬉しいのは間違いないが、なければないでダラダラと過ごしてるのも。
そんなことを気長に続けていた。
しかし、こういう時の大きな書店はありがたいものだ。
神奈川県内でも随一の知名度を誇る『有隣堂』でさえなかったのが、東京に本店を置く『ジュンク堂書店』の某支店にはそれがあったのだ。
ただし、文庫本サイズのコミックではあったのだが。
それでも、ここで会ったが百年目。
大人気ない全巻通しの一気買いの快感。棚からポッカリと空くスペースを見ると。
随分と久しぶりだ。
恥を忍んで、良い歳したオッサンが少女マンガを買い求めたのは。
『動物のお医者さん』以来だろうか。
すぐにでもページをめくりたい衝動を抑えて家に帰るや否や時間を忘れて貪り読んだ。
『あぁ...なるほどなぁ...そりゃ松岡修造がハマる訳だわ』と基本路線はいわゆる『スポ根マンガ』なので冷めた目で読んでた半分、登場人物たちのセリフがグサグサと心に刺さる。
テニスの技術的なことは期待してるほど多くは描かれてない。
そんな中で、好きな登場人物は『お蝶夫人』こと竜崎麗香。
今時、こんなキャラいない。
クルクル髪の長髪をまとめて、お嬢様で強いし、お嬢様言葉を話すのは。
ただし、それはマンガだから成立するし、好感が持てるのであって、実生活では...現代の野郎からしたらドン引きしてしまう。
基本、私は気の強いお嬢様は苦手なのだ(苦笑)
読み終わって早速に2巡目に入りたい気持ちを鎮めて、いろいろと思いめぐらせる。
『あぁ...俺もテニスをしたい』と。
『もっともっとパカスカ打ち合いたい』と。
『ただただ上手くなりたい』と。
そうはいうものの四六時中テニスが出来る訳じゃない。
ないけど、不思議と気分はグッと上げ気味になる。
今回の買い物は正解だった。
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