中東・北アフリカ版「Rippling」を目指すCercliとは?
給与計算SaaSを展開する「Cercli」は9月2日、シードラウンドで400万ドルを調達したと発表。今回の出資にはY Combinator、COTU Ventures、Rebel Fundに加え、RampやRipplingの幹部も参加した。
Cercliは、コンパウンドスタートアップである「Rippling」のMENA(中東・北アフリカ)版を目指す。MENA地域の企業がグローバルな労働力を採用し、管理し、給与支払いを行うことを可能にしている。
有名スタートアップでさえ非効率
共同創業者のアキード・アズミ氏は、200以上の拠点でゴーストキッチンを展開する「Kitopi」でグローバル展開を主導した経験を持つ。彼は、複数の国で従業員の給与を管理していた。
「その過程で、現在解決している給与計算やその周辺の問題に直面しました。企業は全体の労働力に対して給与を処理・管理するシステムを持っていなかったのです」と語る。
この地域の有名なテックスタートアップが給与計算の非効率に悩んでいるなら、他の企業も規模にかかわらず同様の問題に直面していると考えたという。
ローカライゼーションが価値を生む
アズミ氏は、特定の労働法への準拠や、銀行口座を持たない従業員の給与処理が、ローカライゼーションによって価値を生む例だと語っている。
Cercliは、MENA地域の特定のルールや法律を遵守することで、ローカルおよびグローバルな労働力を持つ企業が給与計算や経費精算、オンボーディング、休暇承認などを管理できるようにする。
中でも、HR、財務、会計、法務、ITを統合し、コンプライアンスを確保するソリューションの必要性が高いとされるSMBに焦点を当てている。
「Ripplingに最も近いのは、私たちが非常に横断的に展開し、この地域の企業向けにHRと給与計算の全体的なスタックを構築している点です。これは、企業のバックオフィス業務を自動化するために、さらに大きな製品を構築するための足掛かりとなっています」とアズミ氏は言う。
新興市場での需要拡大
Cercliは、従業員数2名から500名までの幅広い顧客を抱える。今年初めにサービスを開始して以来、月次25%の成長を遂げ、現在までに、31カ国で従業員給与2,300万ドル以上を支払っているという。
給与計算やHRソリューションの需要は、新興市場で急速に増加。最近の買収事例も、このトレンドを反映している。
2024年8月、ニューヨーク拠点のフィンテック企業Payoneerは、シンガポールを拠点とするグローバルHR・給与計算スタートアップSkuadを6,100万ドルで買収した。また、3月にはDeelが南アフリカのPaySpaceを1億ドル強で買収している。
これらの買収は、一部の新興市場が統合に向けて成熟していることを示しているが、MENA地域のようにまだ発展途上の市場もある。
MENA地域向けに製品をローカライズしたRemotePassや、アフリカを対象としたYC支援の給与計算企業Workpayが、今後Cercliの競合となりえる。
MENA地域の覇権をどのスタートアップが握るのか、これからも注目したい。
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