20世紀最後のボンボン 第十部 ヨーロッパ テーマ旅行 第十二章 ローマ
カプリがあまりにも想定外のすばらしさで、
私たちは今度いつ来るかとか
来るときは家を買うぞとか
プライベートジェットで来れないなら来ないほうがいいとか
好き勝手なことを言いながら、
せっかくユーレイルパスも持っていたし、
私は列車が好きなので、列車に乗ることにした。
それでも、やはりイタリアは危ないかもしれないと思い、
一等車に乗った。
乗客はビジネスマンか日本人かの二択で、
安心していると、何のことはない、
次の駅に着くと、ジプシーが物乞いだけの理由で、
乗ってきた。
ルーマニア人だかマケドニア人だかという噂だったけれど、
何回も私たちの車両にまわってきた。
当時の私たちは絶対に日本人には見えないだろうという
絶対的な自信があり、カンクン君が強い調子で、英語で
NO!と言ってくれたので、全く被害はなかった。
イタリア人のビジネスマンたちはお金を恵んでいた。
カンクン君はまた列車に乗るのかと怒っていて、
他の列に離れて座っていた。
フィレンツェの街も通りかかり、降りていきたかったが、
今回は思いとどまった。
それでも窓から懐かしい風景を見ていると、
何か大勢のジプシーがもめていて、
今回は行かないでよかったのかもしれないと思った。
ローマの駅にはたくさんの思い出があった。
1990年のローマは私にとっては本当にフェリーニの映画のように
全然訳が分からない世界で、解読不能の活気に満ちあふれていた。
テルミナ。
けれども、2013年のローマはグローバリズムの影響かアメリカでよく見かける
掲示板がモールごとにあり、英語でどこでも通じてしまい、
世界中のどこの都市にもあるようなつまらない風景が目の前にあった。
便利だけれども、チョーつまんない場所になっていた。
だいたいイタリアの通貨がユーロになっているのが間違いの始まりだと思った。
イタリアはヨーロッパの文化の元を担っているわけだし、
どうしてもユーロになってはいけなかったんだろうと思った。
ヨーロッパを何で一つにしないといけないのか訳が分かんないと思った。
もちろん、FXを日課にしている私には経済学的にはユーロが必要なのは
痛いほどわかっていたが、それでも、結局ユーロになっても得をするのは
ドイツだけだし。というか勤勉なドイツはどういう状態でも裕福なのに
決まっているのは公平な配分ではあるが。
タクシーで、ホテルまで行ったが、道が悪かった。
1990年には歩いて、駅のそばのユースホステルのようなところに行ったので、気づかなかったが、石畳がめくれている個所もあった。
地下鉄を掘り始めて、遺跡が見つかったから、そこで地下鉄も
行き止まり石畳もそのままだという話だったが、
イタリアってこんなに貧しかったのかとしみじみ思った。
アメリカもシリコンバレーに20年いたせいかもしれないが、
少なくともイタリアに関して、熱量が下がっている感は
否めなかった。お金がないだけではないように思う。
イタリアはベルルスコーニが首相で、散々めちゃくちゃやってきた。
貴族階級は相変わらず、豊かに暮らしているのはわかるが、それでも、
EU加盟で、各地から移民が入り込み、荒れているのではないかと
感じた。
もちろんローマ帝国の頃もイタリアにはいろいろな人種が
入り込んでいたと思うが、政治力の衰退が現在のイタリアを
覆う病気のようにも思えた。それはこのあとのベニスのところでも
書くつもりだが、アジアとイスラムの圧倒的な力は
ヨーロッパをも、侵食しつつあるように思えた。
ローマの休日にも出てきた「スペイン広場」など、一連の場所にも
行ってみたが、映像の魔術で、やはり1990年に見たより、もっと
狭い場所だったし、1990年には何か私自身が、全然世の中のことを
わかっていないこともあり、かなりの誤解があったのではなかったかと
思った。学生時代に、地球の歩き方という本がはやっていたが、
そのころの旅行と今の旅行は全然違うし、たとえ、ずっと日本に
すんでいる人でももう一度行くと、各地の印象がかなり違うのではないかと
感じた。それは何がそうも違って見えるのか、今は言葉にできないでいるが、そのうちまた思いついたら書いていこうと思う。
ローマでの通訳はバリバリのベテランで、このあいだ、
スカイツリーに行ったことを話してくれた。
スカイツリーは一生行かないのではないかと思うが、
東京に対する認知度がかなり高まっているのだと感じた。
そのベテランの案内で、バチカン市国も見に行き、
とてもいい時間を過ごせた。バチカンの近くのローマのレストランには
司教がたくさん行くので、おいしい店が多いという地元民ならではの
情報に基づき、夜、行ってみたが、それはおいしいのなんのって。
ウッディ・アレンのローマでアモーレ(To Rome with Love)
とミッドナイトインパリ(Midnight in Paris)
を思い出していた。
街角から謎の幻想タクシーが現れそうな素敵なローマの夜更けだった。
あの二つの映画はとてもよくできていた。
またいつかレビューを書きたい。
20世紀最後のボンボン 第十部 ヨーロッパ テーマ旅行 第十三章 ヴィラ・デステ (1)に続く