20世紀最後のボンボン 第一部 東京篇 第十五章 話しかける
今日からお読みになる方のために
中で出てまいりますボンボンとは私の夫のことです。この物語のはじまりは今から約30年前、1991年くらいの話です。
私もなぜか赤ちゃんは男の子だとわかっていた。
ニックネームもカンクン君と決めたので、いつも話しかけていた。
朝になると
「ほおら、今朝もカンクン君にあいさつをしに小鳥がやってきましたよ。聴こえますか?」
とか、外を散歩しているときも、
「今日はいいお天気です。梅の花がちょっとだけ咲いてますよ。ほのかに香りがします。わかりますか?」
とか。
5カ月というと、お腹の中で動くので、
今までにも増して、何か生き物がお腹の中にいるという意識が増します。
これは信じられない現象です。
ですからちょっとでも動かない日があると、ボンボンに
「今日は眠っているのかなー。一日、動かないよー。」と
訴えます。するとボンボンは
「大丈夫ですよ。カンクン君も眠りたいときはあります。
そっとしておきましょう。今日は。」
といいます。
音楽はもちろんモーツアルトをはじめ、バッハもかけていました。
なぜか当時はバイオリンの曲も無性に聴きたくなっており、映画ツィゴイネルワイゼンでもおなじみのサラサーテもかけていました。
そのほか、ラフマニノフなどもきいていました。
ボンボンもお月さまの出ている夜など、カンクン君に童謡やドリカムの歌や自分の好きな歌を思い切り歌ってくれていました。
私もいろいろ考えてしまい、こんなに期待されて、人以外のものが生まれてきたらどうするのだろう?怪獣だったら、どうしよう。と
悩んだことも実際ありました。
けれども、お母さんがまずポジティブに考えないと、子供に影響するから、と考え直して、ちょっとでも、暗いことを考えそうになったら、身体を動かして、明るく明るく考えていくようにしました。
性格がここで、かなり明るいほうにシフトしたと思います。
第十六章 ギフトに続く