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金色のコルダシリーズ20周年と「黄金色の記憶」

 2003年9月19日に「金色のコルダ」が発売されてから20年が経った
 筆者は金色のコルダシリーズのすべてを追ってきたわけではないが、それでも無印をはじめシリーズ作品をプレイし、呉由姫先生によるコミカライズ版を読み、アニメを視聴し、現地イベントに参戦し、そして最新作であるスタオケをプレイしているユーザーのひとりとして、シリーズのあれこれを振り返ってありがたくも懐かしい気持ちにさせられている。

 シリーズ最新作であるスマートフォンアプリ「金色のコルダ スターライトオーケストラ」では、シリーズ20周年を記念した期間限定イベント「黄金色の記憶」を9月14日から24日まで開催中である。

期間限定イベント「黄金色の記憶」

BGMが「金色のコルダのテーマ」の時点でとびそう…

 スタオケではすでに過去作登場キャラクターの一部が「伝説の演奏家」として少しずつ実装されてきたが、こちらのイベントに合わせて一気に志水桂一・衛藤桐也・八木沢雪広・火積司郎が追加された
(「伝説の演奏家」はあくまでも過去作プレイ済ユーザーに対するサービスにとどまっており、ストーリー内では現役世代である朝日奈ら「スタオケ」キャラたちの直接の絡みはない)

 現時点でまだ「伝説の演奏家」として実装されていない過去作キャラクターもいるが、本イベントではほぼ全員が登場(下画像参照)し、しかもそれぞれ過去作から抜粋されたイベントシーンが用意されている。おいおい過去作プレイ済コンミスの情緒をはちゃめちゃにするつもりか!?

総勢23名のSDキャラ、かわいいがいっぱい
WALKで主人公の姿が「日野香穂子」「小日向かなで」仕様に切り替わるのも趣深い……

 基本的には「金色のコルダ」「金色のコルダ2f/アンコール」「金色のコルダ3」で個別のエンディングがあったキャラクターが登場しているようだ。そのいずれにも該当しないトーノが一覧の最後尾にいるのは、スタオケに登場するキャラクターの中にファータにまつわる人物がいることに由来するのだろうか。

 イベントで稼いだポイントを様々なアイテムに変換できる交換所にも、ゲーム内スチルがずらりと並ぶ。解像度の荒さが懐かしすぎる……。

シリーズ過去作移植の難しさ

 「黄金色の記憶」が始まったのが9月14日。そして9月19日に「金色のコルダの日」を迎えることから、個人的には「こんなに過去作への懐旧の情を掻き立ててくるってことは、19日にシリーズ過去作の現行機移植を発表するつもりなのでは?」という予感を覚えた。

 なんといっても、初代「金色のコルダ」は2003年、コンシューマーゲームとしてのシリーズ最新作である「金色のコルダ4」は2016年のゲーム。遊べるゲーム機もその時代に合わせて普及してきたPS2、PSP、PSVitaなど、すでにサポートが終了したハードばかりなのである。
 現在、女性を含むライトゲーマーに広く普及しているゲーム機といえば2017年に出たNintendo Switchだろう。「遙かなる時空の中で7」「アンジェリーク ルミナライズ」など、ネオロマンスゲームの新作もこちらで発売されている。
 そんなわけで、現時点でファンとしてシリーズ過去作の移植が望めるとしたらNintendo Switchが最も可能性が高い、ということになる。

 が!
 シリーズ20周年を記念した4Gamerのインタビューに対し、ルビーパーティーブランド長である襟川氏は次のように答えている。

襟川氏:
 今後の展開で今お話できることはないのですが,私の“野望”として過去作の移植やリメイクがあります。「コルダ」の1作目から,ここ最近のタイトルまでを何とかまた遊べるようにできないかなとずっと考えているんです。

4Gamer:
 それはぜひ実現していただきたく!

襟川氏:
 実は,数年に1度は試算もして検討しています。ですが,作りたいという気持ちだけでなく,ビジネスとして成り立つのかというのも無視はできません。言い方は良くないですが,単純に出すだけでは,ものすごくアコギな商売をしないと収益が出ないんです。そうではなくてもっと,今までのファンの皆さんに感謝の気持ちも込められたらなと思っているんですが……それなりの対価も考えなければならなくて。ベストな方法がまだ確立できていないんです。

「金色のコルダ」シリーズ20周年&「スタオケ」2.5周年! 横浜で生まれ育ち,名作となった「コルダ」の軌跡とこれからを襟川芽衣氏に聞く

 というわけで、移植は現在企画としても持ち上がっていないらしいことがインタビューで示された。直前に「もしかして、もしかする!?」という予感が高まってしまっただけに、「あああ~~~~~……」感が強い。筆者がキュゥべえと契約した魔法少女じゃなくて本当によかった。

 ……とはいえ、ビジネス面での事情はよく理解できる。おそらく襟川ブランド長の言う「アコギな商売をしないと利益が出ない」というのも、要するに想定される購買者数が少なすぎて、極端な話10万円級のプレミアムボックスを販売しないと採算が取れないという意味なのだろう。
 そもそもコンシューマーゲームがなかなか売れないご時世であり、その中でも女性向け恋愛ゲーム市場は縮小傾向にある(というか、スマートフォンアプリに移行しつつある)。しかもネオロマンスゲームは伝統的にやりごたえのある本格シミュレーションゲームであることから、新規ファンからは敬遠されるのは仕方がない。となると売上が過去作ユーザー頼みになるわけだが、過去作ユーザーでも「好きだし、やればおもしろいのはわかっているけど、こんなに時間と労力がかかるゲームはもうできないな……」と購買意欲を失うケースは多いだろう。

 実のところ、筆者もこのタイプに当たり、結局「金色のコルダ4」をプレイする機会を失ってしまった(一応手元にはあるんだ……)。
 仮に過去作シリーズが満を持して移植されたとしても、プレイするための余暇を捻出するのが難しいいまの生活の中では、おそらく攻略サイトに張り付いて弾き出した最高効率プレイで股がけしながら1周プレイするのが関の山だろう。しかもシミュレーションゲームの場合、一度プレイを中断してしまうと、育成方針を忘れてしまうというのが致命的である。過去作をじっくりプレイできたのは、余暇がたっぷりある学生時代に出会えたからにほかならない――と改めて気づかされて「し、仕事やめてぇ~~~!!!!!」と全力で思ってしまった。
 十分な不労所得のあるニートになりたい!!! 5000兆円(非課税)欲しい!!!

 新作「金色のコルダ スターライトオーケストラ」が、タイトルに「金色のコルダ5」をつけることなく、キャラクターデザインを一新し、隙間時間に手軽に遊べるスマートフォンアプリとして配信されたことで、「金色のコルダって有名な長寿シリーズだから、なにも知らない自分は手を出せないと思ってた」「コンシューマーゲームだったら手を出さなかった」という人が新たにファンとなってプレイしてくれているのはとても喜ばしいことだと思う。
 ただし、スタオケで「金色のコルダ」シリーズに初めて触れてハマったというフォロワー数名が「(ファンコミュニティ全体に)閉塞感が漂っている感じがある」「宗教っぽさがある」という感想をもらしていたのが、実に的を射ていると感じた。要するに歴史が長いせいで敷居が高く、過去作からのファンも硬直化しがちな側面があるのだ。コロナ禍以前まで頻繁に開催されていた現地イベントもそれに拍車をかけていたと思う。パシフィコ横浜は文字通りネオロマンスのメッカである。なんにせよ、新しくファンになりそうな人が「入りづらい」と感じるのはよろしくない。

 究極のところ、コンシューマーゲームという媒体である限り、ゲーム機の“寿命”は無視できない。例えこのタイミングでシリーズ過去作をNintendo Switch版を発売したとしても、Nintendo Switchの販売・サポート終了の時期がいずれやってくる。そのときも旧作ファンはまた「現行機種に移植してほしい」と叫ぶことになるだろう。そうして旧作ファンの要望に応えて移植をし続けることでコンテンツを延命していくのは、あまり現実的とは言えないのではないか。

「金色のコルダ」シリーズ過去作の“履修”

 過去作の移植は現時点ではないと明言されてしまったわけだが、スタオケで……というか「黄金色の記憶」の開催によって「過去作に興味がわいた」という新しいファンもいると思う。だが「ソフトがたくさんありすぎてどれから手をつけたらいいかわからない」「やってみたいけど遊べるゲーム機or時間がない」という問題もまた浮上する。
 追加要素を足してバージョン違いやファンディスクを発売することで作品世界を深めてきた経緯があるとはいえ……いくらなんでも多すぎるし、そのたびにタイトルに「f」とか「Special」とかいろいろ増えて古参オタクもよく混乱するからしゃーない。

 一般論として、ゲームは「最新機種に移植されたもの」が最も遊びやすいと言われているが、「金色のコルダ」シリーズもこの例に違わない。その点も加味しつつ、手っ取り早く「金色のコルダ」シリーズを“履修”したい人に筆者がおすすめしたい媒体を列挙する。

漫画「金色のコルダ」

 「金色のコルダ」シリーズのキャラクターデザインを担当した呉由姫氏がコミカライズした漫画が、全17巻で完結済だ。特に1~10巻までは“セレクション編”と銘打たれており、ゲームの「金色のコルダ」(無印)の内容を丁寧にまとめた内容になっている。
 11~17巻は主人公(日野香穂子)がヴァイオリンの演奏を本格的に志し、並行して月森蓮との間で恋が成就する過程が描かれる。

 アニメ「金色のコルダ ~primo passo~」Prime Video / dアニメストア)も漫画版10巻までの展開に沿ったストーリーになっているので、絵だけでなく音楽・声も楽しみたいという方はそちらもおすすめ。

PSVita「金色のコルダ2ff」

 「金色のコルダ2ff」は初心者にもおすすめ。自由度の高いアンサンブルで仲間と音楽を作り上げていく楽しさは、スタオケにも通じるものがある。コンサートを成功させることで学院の危機を救うメインストーリーも非常に熱く、筆者としてはシリーズ中最も印象の強い一本となった。
 文化祭やクリスマスなど、学校行事や季節イベントも盛りだくさん。ステータス画面をこまめにチェックすることで恋愛・友情もうまく進展させられ、充実の高校生活を送ることができるだろう。

PSVita「金色のコルダ3 フルボイス Special」

 「金色のコルダ3」の内容を不足なく楽しめる一本。星奏学院オーケストラ部の仲間たちとアンサンブルを組み、期日までに楽曲を仕上げ、他校の強敵に打ち勝って全国大会の優勝を目指そう。
 Vitaを持っていない、あるいはゲームを十分に楽しむ暇がない人にはアニメ「金色のコルダ Blue♪Sky」Prime Video / dアニメストア / Hulu)や呉由姫先生の漫画「金色のコルダ Blue♪Sky」「菩提樹寮のアリア」でストーリーやキャラクターを追うことをおすすめするが、個人的にはやはり“あの夏を勝ち抜く”という体験を一度はしていただきたいなと感じる。

 「3」で推しキャラや推し校ができたら、彼らが個別に掘り下げられた「金色のコルダ3 AnotherSky feat.神南/至誠館/天音学園」を遊ぶとよい。こちらは主人公(小日向かなで)が星奏学院以外の高校に入学した設定のifバージョンで、それぞれ入学した先の高校のキャラクター+αを攻略することができる。
 もちろん、一目惚れレベルのキャラクターが星奏学院以外にいるのであれば、「3」をすっ飛ばして「AS」をプレイするのもいいだろう。

※PSVitaのゲームソフトは中古で入手することもできるが、プレミア価格がついていることが多いのでおすすめしない。PSストアを通じて定価でダウンロード版を買うのがよいだろう。2023年9月現在、PSVitaのダウンロードソフト購入時にクレジットカードは使えないので、事前にウォレットにチャージしておく必要がある

ともあれ

 過去作移植がされるにせよされないにせよ、現行で動いているのはスタオケなので、引き続きスタオケの更新を楽しみにしつつ、とりあえず手元のPSPやVitaを大切にしながらシリーズを応援していこうと思う。

 「金色のコルダ」シリーズに限らずネオロマンス作品全体の傾向として、「やりごたえのあるゲームとしての楽しさ」「メインストーリーの安定したおもしろさ」「キャラクター描写の丁寧さ」が備わっていたと思う。だが先に書いたように「ゲームとしての楽しさ」を追求するタイトルになかなか手を伸ばすことのできない昨今、基本無料のソーシャルゲームアプリという手軽なスタイルを採るのもやむを得ないことだろう。その分、後者ふたつに力を入れて運営してくれているので、「そういえば私、ネオロマンスのこういうところが好きだったよな」という実感がある。実際、先に出した4Gamerのインタビューで、襟川氏が次のように答えているのが印象的であった。

4Gamer:
 ちなみに,「コルダ」を人間に置き換えるなら,どんな大人に育ったと思いますか?

襟川氏:
 音楽に真摯に向き合うところは昔から変わらないけれど,いろいろな経験をして柔軟な大人になったんじゃないかなと思います。少しのケガも許さない月森 蓮から,一ノ瀬銀河や金澤紘人のような,挫折を知った大人になったイメージです。
 細かくパラメータを調整していたコンシューマから,より親しみやすい遊び方をするスマートフォンになったけれど,本質は変わっていないという感じでしょうか。音楽を裏切らないという芯は変わっていないと思います。

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 先に書いたとおり、筆者は「金色のコルダ4」を手元に置きながらも結局遊ばずに終わってしまっている。じっくり腰を据えて挑むシミュレーションゲームが自分のライフスタイルに合わなくなってしまったからだ。それでも、ソーシャルゲームアプリになったことで、過去作から連綿と続くよさ(本質)を、手軽に提供してもらえることで再び遊び続けられるようになったのは改めてうれしいことだったなと思う。
(こういうところが「宗教っぽさ」と言われる所以ではないのか? ボブは訝しんだ)

 でもなんだかんだで移植は諦めたくないので引き続きいい子で待ってます!! 解像度の上がったデカい画面で「金色のコルダ」全員の珠玉エンドを……見たい……!!!


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