100年前の乃木坂(六本木)を妄想する
旧ジャニーズ事務所と乃木坂
「乃木坂」というとアイドルグループの名称になっていて、実際の六本木にある「乃木坂」のことを調べようとググってもアイドルの情報ばかりが出てくる。
それほどまでに有名なアイドルの名称も、オーディション会場となったのが「乃木坂」に面した建物であったことから名付けられたとのことである。
この「乃木坂」は、六本木にある「ミッドタウン東京」から北上し青山の方向へ歩いたところにあり、そこから分岐し右へ下る坂道の名称である。ジャニーズ事務所(現スマイルアップ)が世間を騒がせたときに頻繁に空撮されていた「Johnny&Associates」と表示した建物も、実はここにある。
今年のゴールデンウィークに初めて六本木界隈を歩いてみた。このあたりは起伏に富んでおり、坂が多くびっくりするほどである。
乃木坂の不思議
この界隈を歩く中で、気になったのがこの乃木坂であった。歩きながら、この場所は昔はどうだった?と妄想をめぐらせてしまう性癖があり、乃木坂をみたときに不思議な感覚に襲われた。
それがこの場所である。
これは、乃木坂の下から乃木坂の上を見るように撮った写真である。左側が乃木坂であり、上を走る道(外苑東通り)に沿いながら上り、合流する。
そして、右側が「乃木坂陸橋」と表示されており、橋下を道が突っ切っている。「陸橋」とあったので、橋下の道がもともとあって、後で橋が架けられたと思ってしまった。
でも、なんとなくオカシイ気がした。上を走る外苑東通りは、昔は路面電車も走る幹線道路だったハズである。そんな時代に、こんな高級な立体交差などあるはずがない。古いのが上で、新しいのが下の道であるハズだ。
乃木坂の地形
そこで、このあたりの地形図を見てみることにした。下がスーパー地形で見た、乃木坂周辺の地形図である。やはり上を走る外苑東通りは高地上にあり、この乃木坂のあたりで低地と接する形になっている。つまりちょうど乃木坂周辺が東側(地図上右側)に面して断崖絶壁になっていることがわかる。
地図上に示す乃木邸・乃木神社は敷地内に高低差があり面白い。乃木邸は上側、神社は下側になっている。
これではっきりしたのは、「乃木坂陸橋」と言いながら、陸橋上を走る外苑東通りが昔からあり、陸橋下の道は実は後で掘られたトンネルなのである。
つまり、昔はトンネルはなかったのである。
では、赤坂方面(地図上右側)から、ここまで来ると、トンネルはなく、断崖絶壁にぶつかり、左に折れ乃木坂をゆっくり上っていく、そういう構造であったのだろうか?それも不自然な気がする。
昔の乃木坂を妄想する
試しに、スーパー地形の空中写真(年代別)で、過去にさかのぼってみた。
1945年には今の乃木坂が視認できる。しかし、1936年までさかのぼると、今のような外苑東通りに沿うように上るような乃木坂は見当たらず、直接交差するように見える。
さらに明治にまで遡り、今昔マップon the webでこのあたりの地図をみると、赤坂から来る道と外苑東通りは直交しているように見える。
今の外苑東通りに沿うようにゆるやかに上る乃木坂になる前は、断崖絶壁を直接上るとんでもなく険しい乃木坂だったのではないか、という説である。あくまで私の妄想なので、違ったらぜひ教えていただきたい。
なお、乃木坂は、江戸時代には「幽霊坂」とか「行合坂」「膝折坂」とも呼ばれたらしい。今の乃木坂は「腰折坂」と呼ぶほど急というわけではなく、この一帯にはもっとハードな坂は山ほどある。また乃木坂と呼ばれるようになったのは1912年に乃木希典が亡くなった時とのことである。もし坂が外苑東通りに直交していれば、これは乃木邸に接する坂なので、乃木坂と呼ぶに相応しいが、今の乃木坂は乃木邸から少し離れるように上っており不自然な気もする。
と、今昔マップの明治の地図は唯一有力な手がかりでありつつも、結局、今回は明確な確証は得られず、妄想の域を越えないまま、結論はでていない。
外苑東通りを走る路面電車
今回、このコラムを書くにあたって、いくつか調べて面白いものがネットにあったので紹介しておこう。
まずは、外苑東通りを走る路面電車の写真である。乃木邸前を路面電車が走っている。これは1960年代の写真とのことである。この路面電車は1910年代には開通していたとの情報である。もしも開通当時の写真があれば、乃木坂が直交していたであろう時代の有力な手がかりになっていたのだが、残念だ。
もう一つは、今の乃木坂陸橋の下の道の行先のことを書いたコラムがあったので紹介しておく。私が歩いた日は、このトンネルの先には行かなかった。しかし、このトンネルは、すぐに地上には顔を出さず、青山霊園の直前で顔を出すらしい。その顔の出し方がまた変わった構造であるらしいのだ。
乃木坂の東にはすぐ赤坂がある。なぜ赤なのかはよく知らないが、赤坂には坂がやまほどころがっている。このあたりは起伏に富んだ地形ならではであり、地形ネタがいくつも転がっていて楽しい。
帰りに乃木神社に参拝して帰宅した。
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