文具が好きで
手書きで文字を綴る機会はめっきり減った。
学業を修めていた稚魚時代ならいざ知らず、成魚となって久しい今、文書作成から私信や手帳管理までデジタルで完結してしまう。この文章だって仕事の空き時間にスマホから書き溜めしてる。便利。
筆記具を持ち出す必要もないし、書き直しも手軽。うろ覚えの漢字だってよしなに変換してくれる。
日常ではメモ書きするのに使うくらいだから筆箱の中身はボールペンとマーカーペンでもあれば十分。きっと特段こだわらなければわざわざ専門店に行かずともコンビニの文具コーナーでも揃うだろう。
日本の文具(特にボールペン!)は低価格でも優秀だし。価格帯100円〜200円あたりの選択肢の広さとハズレの無さは世界に誇れると思う。
安価で安パイ、間違いない。それで済ませても必要十分。だけどそれだけじゃつまらない。
お手頃のも押さえておくけど、逆にこだわって一生使うってくらい惚れ込む品も欲しい!これが私の厄介な性質で稚魚時代から変わらない文具オタクとしての基本。足るを知るは大切。でも贅沢と余白の中からしか得られない心の栄養があると信じてる。
まず何か文具が欲しいとなれば調べることから始まる。書籍とネット記事、周りの有識者への聞き込みを経て「どこどこメーカーの〇〇モデルが欲しい」が決まる。買うからにはその製品の成り立ちや優れた点・競合品の中での立ち位置などの情報を浴び、物欲に抗おうとするなけなしの理性をふきとばす。この時点でたいてい近所の文具店には求める品は取り扱いが無い。高級品を選びがちという意味ではなく、ド定番で流通量の多いものじゃない、ちょっとニッチなものを選びがちなので、地方の書店に併設くらいの文具コーナーではなくガチな大型専門店とかに行かねばとなるのだ。
しかし、ときめいたオタクは止まらない。
もちろんこのご時世、通販できる場合もある。が、実物が見れるなら自分で確かめてから買いたい。
こういう時の執着と行動力だけは人一倍ある。
日頃とことん外出が面倒で必要に迫られないかぎり家にこもっていたいくらいだけど、文具店なら話は別。ついでにどうせ身なりしっかり武装して出るならなるべく一度の外出で他の用事もあれこれ済ませておきたい。こうして出かける日のタイムスケジュールだけはギチギチに詰まり、それを律儀にこなそうと奮闘するからぐったり疲れ、帰宅後はもう当面セルフ外出自粛で良いなと出不精が加速する。
わかっちゃいるけどゼロか百。
程よい塩梅が一番むずかしい。
さて、店舗でお目当てのブツを見つけてほくほくしてからが魔境のはじまり。「ミッションクリア。レジに直行!」とは行かない。なにせ琴線に触れるブツが置いてあるくらいのお店。ちょっと見渡すだけでも心踊りそうな誘惑しかないのだ。紙質にこだわったノート、絶妙なニュアンスカラーのインク、多機能なペンケース、刻印オーダーできる革のブックカバーなどキリがない。
用途が限定的すぎる物も私の中では価値が高く、例えば紙の角を丸く切り落とすだけのパンチや黄金比が測れるなどコンパスなど足を止めては商品の説明書きを熟読し、自分で買ったらこう使おうと妄想する。期間限定や在庫限りの文字にも当然弱い。
甘美な物欲にうかされつつ会計待ちの列にたどり着き、ほっとひと心地ついて視線がぶつかった先の
"当店限定オリジナルデザインのメモ帳"も流れるように使う用と保管用の名目で同じものを二つ買う。
両手にずっしりと荷物を抱え
「今後しばらくは散財せず冷静にいこう」
と軽くなってしまったお財布に誓うが、帰宅して戦利品を眺める頃にはすべて忘れてふりだしに戻る。
こうして増え続けるとっておきの文具たち。
せっかくだから今後記事で紹介しようと思うので気になるものがあれば覗いてみてね。