企業再生メモランダム・第58回 後ろを振り返らずに前を見よう 後編
「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。
「企業再生メモランダム・第57回 後ろを振り返らずに前を見よう 前編」では、「後ろを振り返らずに前を見よう」と題したメモの背景とメモの中身の一部について記載をしました。
後編では、残りのメモの中身について、ご紹介したいと思います。
メモ「後ろを振り返らずに前を見よう」の中身
2.現状はそう悪くはない!
今まで私は縁があって様々な会社の企業再生に関わらせてもらいましたが、現在の対象会社の経営陣は、社員想いの良い経営陣で、日々の経営もしっかりしていると考えています。
良い経営陣を理解するためにも、先に、悪い経営陣や厳し過ぎる経営陣について説明させてください。
(1)悪い経営陣
悪い経営陣とは、会社のため(社員のため、お客様のため、株主のため)ではなく、私利私欲のために行動します。私利私欲の動機とは、大きく分けて2つあります。それは金銭欲と名誉欲です。
経営者が自分のために会社の金銭を使うことは背任罪に該当し、警察に逮捕されてしまうようなことであり、絶対にあってはならないことです。
経営者が自分の名誉欲のために、社外に自分の名声を喧伝したり(自分の名誉の拡大)、社内の他者の良い企画を潰したり(他者への嫉妬)することも行ってはならないことです。
(2) 厳し過ぎる経営陣
厳し過ぎる経営陣とは、昨今のブラック企業と呼ばれる会社の経営陣のことです。中にはブラック企業ですが、会社の経営成績は抜群の会社もあります。
これらの会社は、スタッフに対して、厳し過ぎるぐらい常に上を目指させます。「(日常業務で英語を一切使わないにも関わらず、)グローバル化の世の中だから、英語を勉強しろ!」、「マネジメント・スキルが必要だから、経営学の本の感想文を提出しろ!」、「残業するな!でも、業務は今の倍こなせ!仕事の効率を倍よくしろ!」といった具合です。酷い事例だと、「業績が悪いから・・・スキルが低いから・・・おまえはクビ!」が横行します。
経営陣の言っていることは、一方から見れば、全て正解です。でも、これが毎日だと、多くのスタッフは疲弊して、うつ病になったり、離職したりしてしまいます。
では、良い経営陣とは何でしょうか?私は以下のように考えます。
(3)良い経営陣の条件
① 常に、最優先で、会社のために考えて行動していること(私利私欲ではなく、会社のため、みんなのために働く)
② スタッフ一人ひとりのことを考えて、その人に合わせた、成長を促すような厳しい目標設定をしていること(スタッフの成長のために厳しい目標を定める。)
③ 経営成績・財政状況を向上させていること(結果が全て)
④ 情報開示を徹底していること(自分に都合の悪い情報を隠さない。月次決算の導入など)
⑤ 説明責任を果たしていること(過程の説明、会社が考える真実の説明、ただ単に「やれ!」ではない。)
今の経営陣は、上記を全て満たして行動していると思います。対象会社の今の役員は、社内のこと、スタッフのことを熟知しており、スタッフの皆さんにとっても納得度の高い経営をしているのではないかと思います。
3.前を見て、目の前の仕事に邁進しよう!
1及び2で記載をしてきた会社を取り巻く環境は、実はスタッフ一人ひとりの仕事、やる気とはあまり関係ないことです。
隣の芝は青いということわざがありますが、現実は、隣の芝が青かろうが赤かろうが関係ありません。隣は隣でしかないからです。
しかしながら、私を含め、多くの人は、どうしても他と比較して楽なほう楽なほうへと逃げ道を探してしまうものだと思います。それをやめなければなりません。
「昔に戻ることはない!」、「現状はそう悪くはない!」ではなく、私たちは、一生懸命、自分の仕事や弱い自分と向き合って、自分たちの手で最高の仕事をして良い会社を創っていかねばなりません。
私たちは、本当に素晴らしい世間に誇れる仕事をしていると思います。
この仕事は、他社がどうであれ、また例え誰が株主であっても、誰が経営者であっても同じ内容です。お客様に求められ、地域社会に求められている大事な必要不可欠な仕事なのです。
この仕事の社会性・やりがいを改めて認識して、過去や他社と比較することなく、前を見て、目の前の仕事に邁進してもらいたいと思います。
それが現在も、そして将来も、私たちスタッフに求められていることだと思います。もっとシンプルに考えて欲しいと思います。
「後ろを振り返らずに前を見て働く。」
このことが素晴らしいことだとスタッフ全員が分かっていると思います。
※ 本連載は事実を元にしたフィクションです。
株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。