リーダーシップ往復書簡 041
前回に引き続き、リーダーとして向き合わざるを得ない、正しさや倫理観について共に考えたいと思います。
昔から経営の世界では「経営者として大成する人間は、悪いことができて、悪いことをしない人間である」と言われています。
大成する経営者は、悪いことができるがしないとあるとおり、自分の心を律することができます。また、悪いことができるわけですから、悪いことをする人の気持ちが分かり、先回りして対策を講じることもできるのだと思います。
今までも繰り返し述べてまいりましたが、私の人間観は「人は善なれど弱し」で、これはリーダーにも当てはまります。人は、弱い部分が出てしまうと、善ではなく、悪になってしまうわけです。
そのため、リーダーはとことん強くならなければならないわけですが、現実的には、自分の中の弱い部分、つまり悪の部分を認めて、冷静に捉えて、御すことができる人格を育てることが大事だと思います。
仏教では「鬼手仏心」という言葉がありますが、この言葉は、鬼のように残酷な顔があるが、その背後には仏のような慈愛に満ちた心があるという人間の姿を表現しています。
この言葉からも分かるとおり、「鬼」と「仏」と一見矛盾する二つの人格が、一人の人間の中に共存することを意味しています。
あるべき姿としては、私たちは更なる高みを目指して、それこそ神を目指すべきだと思いますが、先達たちの教えを考えると、一足飛びに統合的で高潔な人間にはなれませんので、まずは自分の心のドス黒い部分を認めることが必要なのではないかと思います。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!
【Q.41】
ビジネスにおいて「善悪」を考えることはありますか?
<コメント>
よく「善悪」について考えます。
これについては、コンプライアンス(法令遵守)の概念よりも広いもので、ビジネス・エシックス(企業倫理)だと思います。
オレオレ詐欺や違法薬物の売買などの違法行為ならば、一般的なビジネスマン全員にとって、明らかに「悪」なので、さすがに論点にすらならなりません。
しかし、ビジネスシーンにおいては、合法的ですが、倫理的に正しいかを考える場面は増えてきているように思います。
ネットゲーム、SNS、飲食やデジタルデバイスなど依存症のユーザーを生み出すことが分かっていて、あえてそれを狙ったビジネスモデル、「痩せる」や「キレイになる」など過度にコンプレックスに訴えかけるマーケティング手法、情報弱者を食い物にするような金融サービス、そして、利益相反取引が当たり前の仲介サービスなど様々、ビジネスにおいて「善悪」を考えるシーンはあると思います。
一番の問題は、これらのサービスはとても儲かるのです。
合法で、さらに儲かれば、資本主義社会なので、なんでも良いという経営姿勢の経営者に会うとがっかりしますが、非常に多いと思います。また、「ベンチャー企業は、(法律的にも倫理的にも)グレーゾーンを突っ走るものです。」などとしたり顔で発言するベンチャーキャピタリストなどに会うと、嫌悪感を覚えます。
最近では、先ほどのようなビジネスで、一度、荒稼ぎして、そのお金を社会貢献や後進の育成に使いたいなどという若手経営者にもよく会うように思います。
投資家や金融機関などはビジネス・エシックスのガイドラインを整備したほうがいいと思います。倫理的にも人間として正しく、なおかつ、ちゃんと商売になることをしなければならないと思います。
法律や倫理観をすり抜けている悪事については、多くのステークホルダーのためにも、リーダーで食い止めなければなりません。常日頃から、リーダーは、フォロワーに対して、正しい価値観を伝えていかなければならないと思います。
※この記事は、2020年7月18日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。