津田恒美の不思議な弱さ

昨日もカープは抑え不在の厳しい状況を露呈するかのような大逆転負け。

対ベイスターズ戦。
2点リードの9回にマウンドに上がった一岡投手が、前日の対タイガース戦で見せた投球とは程遠い投げっぷりで佐野選手にサヨナラ満塁本塁打を浴びた。

点差は同じ2点だった。9回の厳しいマウンドとはいえ前回同様にいくらかは余裕はもてたはずだ。しかし、同じ状況でも投球はまったく別人のそれだった。

実は前回セーブを挙げたのちに「抑えをやっている投手はすごいとあらためて感じた」とコメントしていたのが気になっていた。
その言葉からは、無我夢中で投げて結果は出せたけれど、抑えのマウンドの怖さを知った。そんなニュアンスを受け取ったからだ。

次のマウンドが心配だ。そう感じた予想が現実のものとなってしまった。怖いもの知らずで上がったマウンドと、怖さに怯えて上がったマウンドでは、まったく別ものになるのは必然だった。

マウンドの一岡投手は、明らかに怯えていた。その象徴が先頭打者に与えた死球だったろう。
ちょうど解説がベイスターズで絶対の、というよりメジャーでも抑えで鳴らした佐々木主浩氏だったのだが、彼もそのメンタリティを投球に見てとって、抑えは無理ではないかとの評価を下していた。

前任の菊池保投手は、「三振を取れる球がない」ことが致命的だった。しかし、一岡投手はそれを持っている。
前回登板の時は、空振りをブリブリ取りまくって三者凡退。三振2を奪っていたのだ。
一岡投手は「抑えてやるという強い気持ちがなかった」ことが、今回の失敗につながった。

とはいえ、カープで一時代を築いた絶対のストッパー・津田恒美投手だって、決して気持ちの強い方ではなかった。どちらかといえば、弱い部類の人間だった。
その弱さを克服するために座右の銘にしたのが「弱さは最大の敵」だったのは、よく知られたことだ。

彼には、とにかく打者を圧倒できるだけの球威はあった。そして「弱気」を自ら克服していった。
そうはいっても、それは簡単にできることでもないのだろう。

津田の弱さには不思議なところがあって、極まると強さに通じるような「強靭な弱さ」があったように思う。
だからこそ、普段はシャイで大人しい彼が、マウンドに上がる際はスイッチさえ切り替えれば気持ちの強い投手になれたのだろう。

その津田だって、きのうの一岡投手のように負けにつながった失敗を何度もしていた。
ただ失敗に学んでからは、向かっていく気持ちだけは切らさなかったように思う。

一岡投手もそうなれるかどうか、それは本人しだいだろう。マウンドでは誰も助けてくれるものはない。経験を糧に自ら道を切り開いていくしかないのだ。

今カープは厳しい状況にある。その中でもし一岡投手でも誰でも、津田のような改変をしてくれれば、そこに私はきっと津田の再来を見ることだろう。


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