タイトル

オールマン・ブラザース・バンド「AT FILLMORE EAST」

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1990年前後だったろうか、コピーライターとして独立して広島市内の繁華街袋町に事務所を構えた。

といっても古びた木造アパート三階の1Kで、さすがに畳敷はないだろうと、これを剥がしてフローリングにした。

それも廃校になった小学校から持ち帰った板材を自前で貼ったもので、ついでのことと天板渡してカウンター設え、事務所というより隠れ家かBER。
たぶん通りひとつ隔ててあった山小屋風居酒屋「たべるな」の趣味を真似てのことだったろう。

はじめは安物のコンポ買ってカセットテープ聴いていたが、そのうちオーディオセットとレコード持ち込んで聴くようになった。

そのライブラリーに1971年リリースのこのアルバムがあって、バーカウンターの客となった現代アートの作家が、「オールマン・ブラザーズ・バンドのライブは最高だ」と喜んでいた。

「あと1週間もつかどうか」
彼はバーボンだったか、ストレートで煽りながら、ポツリといった。

創作のパートナーであり性的な関係にもあったらしい女性が自死して落ち込んでいた彼を慰めようと、知人のH氏がわが BARに誘ったのだったが、その夜から1週間ほどしてパートナー追うように彼も自死してしまった。

全編サザンロックの軽快な曲に占められたこのライブ盤2枚組と、彼の行動がいつまでも結びつかず、それがかえって忘れられない記憶となっている。

そもそもこのバンドも、リーダーだったデュアン・オールマンがバイク事故で早世してもいたし、サウンドだってどこか哀愁の影がただよってもいて、それがまた音に独特の厚みをもたせてもいたのだろう。その影のように潜んだ引力が彼をあっちへと誘ってしまったのかもしれない。

ふたりが使ったアトリエの片付け手伝いに行って、彼らが最期を遂げた梁を見上げた時の、息詰まるような、なんとも切ない気持ちが蘇る。

その下には「愛の巣」となったらしいカーペットがまだ敷いたままあって、死とエロスの匂いがまだ残ってもいて…。


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