グラウンドに受け継がれる“魂の血筋”
日ハム 300000000 3
広 島 000020002 4
昨日のズムスタ、カープは対日ハム戦で劇的なサヨナラ勝ちをした。
3対2の1点ビハインドで迎えた最終回。丸の四球が呼び水となって日ハムのトンキンを攻略。いとも簡単にといった勢いで2点を奪って日ハムをうっちゃってしまった。
攻撃からすると丸の四球が分水嶺で、カープに逆転の機運が生まれ日ハムには「いやな流れ」となった。
一方で、守りから見れば初回に制球難から3点を献上してしまったカープ先発の岡田投手が立ち直ったのと、中継陣のふん張りが大きかった。
中盤は入浴中で、たまたまその回の守りから見たせいもあるのだろうが、8回に日ハムの主軸の中田、レアード、石井を抑えてアドゥワ投手がリズムよく三者凡退に抑えたとき、逆転の可能性は大きくなったように感じた。
そして、それが現実となった。
アドゥワ投手がここまで結果を残すとは、想像もできなかった。正直、驚いている。
初登板は回の途中からで、それもピンチの場面だったと記憶するが、そこでマウンドに送り出した首脳陣の考えを疑った。
しかしアドゥワは見事に火消しに成功。きっとあの場面で使うだけの根拠を首脳陣は持っていたのだろう。
最近、顎にヒゲが整ってきたアドゥワ投手の顔に見入っていて、今更のように気づいた。
「ああ、彼は衣笠さんと同じルーツの選手だったのだ」と。
衣笠さんの父親はアメリカ人だったが、そのルーツはアドゥワ投手と同じくアフリカだ。そして母親が日本人。
アドゥワ投手がマウンドで見せる、ひねり、ジャンプ、ダッシュといった動きのバネとキレに驚いて見入ること再々だったが、それはご両親からの遺伝とともに、ルーツとしての「血」も影響していのだろう。
衣笠さんが亡くなったシーズンに一軍に登録されて初登板。亡くなられた直後の4月26日の対DeNA戦で初ホールドを記録。
そんな流れを振り返ってみると、やはり巡り合わせを感じざるをえない。
遺伝子が個体に受け継がれていくように、野球の“魂の血筋”もグラウンドで繋がっていくのだろう。
衣笠さんは当然、アドゥワの出自はご存知だっただろうし、意識もしていたはずだ。
同じカープの高橋大樹選手は高校の後輩として、他の選手とはちがう眼差しで見ていたのだろうが、同じ出自であるアドゥワをどのように見ていたのだろうか。
それをいま知ることはできなくなってしまったが、特別な思いを寄せていたのにちがいない。
そう気づいた僕の、アドゥワ投手を見る目はこれまでとちがうものになった。
衣笠さんを慕う気持ちに重ねるように、彼を応援する意識は強くなった。
そしてこれからの彼の成長が、愉しみになってきた。