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サンタナ「キャラバンサライ」
浪人時代の愛聴盤だ。
「どこにも入れる大学ないで」
進路指導で担任にそう太鼓判押されるまでもなく、その事実は本人が一番よく知っていて、現役で受けたのは某大学の水産学部のみ。
砂漠の商人は思い浮かばなかったが、万が一にも合格したら海の男にでもなろう、と人生を賭けてみたのだったが、サイの目とちがって、受験では出ない目が出るはずもなし。担任のご託宣を証明する結果となった。
一応の受験勉強は少し前からはじめていて、それは翌年の受験に照準を合わせてのことで、科目少ない私立文系が狙い。
それでも最高峰に狙いを定めて、飯と風呂以外は机にかじりついての勤行。そのはじまりに、ステレオの前に大の字になってこのレコードを聴いていたのだ。
というのも、アルバムジャケットに描かれている隊商のように、カルロス・サンタナはこのころすでに宗教的な至高世界に向かっていたのだろう、その萌芽が砂漠に点在するオアシスのごとく曲曲に散りばめられていて、瞑想に誘うかのような構成となっていたからで、おかげで一時とはいえ、集中力が涵養されたように思う。
数か月で希望校教育学部の合格ラインに到達したのは、このアルバム様様だったわけだが、例の悪友Yが好都合にも盲腸こじらせて長期入院してくれていたからもあった。
ヤツが退院してからは、連れ立ってロック喫茶寿限無に入り浸り。肝心の夏休みからは遊び癖がすっかり身にしみて、成績はジリ貧。
ついに、わが隊商は目的のオアシスの手前で立ち往生してしまったのだった。