秋色
心は、湖のように冷たく、透き通って光が差し込む。
凍った輪郭は形を定めて強固にする。ガラスのようにただそこにあり、うすい影をつくる。
ひよどりの声が反響して、秋を形作る。色づく葉、銀杏の黄色、紅葉の赤、楓の橙色、鮮やかな水色の空に、真っ白な鱗雲。透き通る風にのって虫の声。
いつまでも吹き抜ける風は肌に寒く、日差しは暖かい。枯れ葉の香りが鼻をかすめる。
りんご、梨、ブドウの収穫。
湖のほとりは静に波が押し寄せて、さざ波が広がる。魚は肥えて冬に備える。ドングリ、栗、ぎんなんの実。
朝は白く、夕は藍色。矢のようにはやい月日。
心は秋を写しとり、深い哀愁や郷愁を透明な湖の深いそこから引っ張りあげる。遠くにあるたいせつなもの、いつもあるけど見えないもの、かつて知っていた世界の美しさ。もう過ぎ去ったものを再び浮かび上がらせて、そして終わらせる。
目をひらいて、耳をかたむけて、体に秋を透過させる。錦の色づき、寂しげな日差しの名残、短い夕焼けの光。
枯れ葉の香り。山の香り。爛々と輝く月の光。星の影。季節をめぐらせて、死に近づく。
2024.4.17
春にかいた秋色。