記事一覧
美緒が心臓を止めないために
よく流れてくる美緒が山積みのダンボール箱の前で泣いているイラストはあの漫画のラストシーンらしい。え?終わり?これから美緒はどう生きていくの?とまさにあのシーンの美緒と同じく虚しく途方もない気持ちになった。これからの人生の話ではなく、漫画は美緒48歳が「美緒」になるまでの過程を辿っていくストーリーらしい。
作中で美緒48歳が生きていく未来が描かれていないならば、僭越ながら美緒31歳である私が書かなけ
ミカって呼んでいい?
御神本百合子はテーブル上の配置にとても神経質で、二人掛けには少し狭いほどの席を選んでも、必ずこの儀式めいたテーブルセッティングは行われる。中央に据えられた金の燭台から対称に水の入ったグラスをひとつずつ並べて、左端には気味の悪い笑みを浮かべた太陽のオブジェを、右端には三日月を据えて、それらはすべて定規で直線を引いたように整列している。
決まった席に座るなら来る時間を見計らって準備しておいてやって
こわい電気が流れています
金子玉美と自分の名前を署名するといつも誰のものでもない架空の人間のきんたまが脳裏にぶら下がるのだが、結婚して十数年このかた一度も「金玉」に触れられずに来ていた。
夫の転勤で奈良へ移り住むことになり、関西ではとうとう低俗な輩に出くわして「金玉!」と指さされ辱められるのではないかと、わたしよりむしろ夫が心配したものの運命の日はなかなかやって来ない。最早当人よりも悩み苛立ち焦がれていた夫が生粋の浪速
お姉ちゃんが「すいか」しか喋らなくなっちゃった
台風が来た次の日から、お姉ちゃんが「すいか」しかしゃべらなくなった。話せなくなったのではなく、自発的に意味のある言葉を発するのをやめたのだ。対話の全てが「すいか」に収束され、お姉ちゃんが感情を表現する言葉も「すいか」に置き換わったから読み取りようが無くなったけど、それでも「会話」は失われなかったのだから不思議である。
呪術廻戦にそういうキャラクターがいるからといって安直に結びつけるのはありが
スーパー・スーパー・ボール
窮地に追い詰められたり超常現象を目の当たりにした時なぜだか笑ってしまうように、あまりにもデカすぎる時、人は笑ってしまう。老婆が笑っているのは野菜がデカいからで、小学生が笑っているのはうんこがデカいからで、赤ちゃんが笑っているのは大人のきんたまがデカいからである。結婚式で笑っているのはケーキがデカいからであり、葬式で笑ってしまうのは写真がデカいからである。巨像、巨女に苛烈に恋焦がれたり心惹かれる者が
もっとみるきんたまの裏側の世界
床がいつも濡れているので、ユニットバスで暮らすほとんどの住民は裸足でいるか、トイレに行く都度いちいち靴下を脱がなければならない。ゴムのサンダルを置けばよいのだが、我々の世界にこのサンダルをカビさせずに維持できる人間はいない。
そもそも紙で新聞を読む人も減っているだろうし、ご時勢の事情で衛生観念が向上した昨今では見かけなくなってきているかもしれないが、トイレで紙の新聞を読んでいるお父さんの概念はま
わたしがお弁当屋さんになっても
友を見れば人となりが分かると云うが、うっせえわ、冷蔵庫を開けて見るほうがよっぽど分かり易いと思う。ひとり暮らしの冷蔵庫は生活と精神を反映する。家にだれかが遊びに来た際に、引き出しを不躾に開けられたり、ふと高校時代の文集を手に取られたりするのよりも、冷蔵庫の中を見られるがいちばん堪らなく肝が冷える。腐った野菜が入っていたりと訳あって見られたくないのではなく、べつに納豆とか玉子とかベーコンしか入ってな
もっとみるユッケトゥザフューチャー
ガラケーとユッケが出てくるドラマを見ている。まもなく12が発売されるというのにiPhone5Cを使い続けているとよく言われるのだが、ガラケーを松田翔太がパカパカやっているのを見ていると確かになんで替えないの?という気持ちになる。ユッケが出てきてユッケってテレビに映してよかったんだと思っていたら松田翔太の乳首も出てきて松田翔太の乳首もいいんだと思った。しかし先にユッケを見てしまっていたので、ユッケ!
もっとみる