ブックロード。遣唐使と日本の未来
「本」について調べていて、「ブックロード」ということばを見つけた。
中国からアラブ、ヨーロッパまで至る古代の貿易ルート、シルクロード。
その名の通り主要交易品はシルクで、各国の使者は絹製品を求めて中国を訪れた。
それに対し、日本人が中国で求めたのは書物。だから日本との交易ルートの呼び名は、海のシルクロードよりブックロードの方が相応しい、
と、中国の歴史学者、王勇教授が提唱された概念だそう。
言われてみれば、遣隋使・遣唐使の目的は「先進技術と仏典」と中学校で習ったような記憶が…
しかも、当時の日本ではすでに養蚕が行われていて、品質は劣るものの絹製品を交換材として中国に持ち込み、それを元手に書物を入手していたのだそう。
「欲しいものがあったら、本(知識)を手に入れて、自分たちで作っちゃえばいいじゃん⁇」
いやいや、古代日本人、頭よすぎじゃない⁇
製品よりもノウハウを手に入れる方がリターンは大きいと考えたのか?はたまた単なる知的探求心?コレクター魂?
理由は分からないけれども、昔から日本人は本好きだった模様。
中国で失われた古書が日本には残存しているというのも割と古くから認識されていて、北宋時代の文人・欧陽脩の詩にも詠われているそう。
近現代に入ってからも、こっちが持ってない古書写させてと日中間の意外な交流手段になっているらしい。
ブックロードを提唱したのが中国人の学者というのも興味深い。
王勇教授の日本文化に関する論文には、日本人が気づいていないような視点があり、とてもおもしろい。
知識を求め、命懸けで海を渡る。
よく考えてみるとものすごい話なのに、日本人にとってはそんなに突拍子なことでもないようにも感じる。先進国にはやっぱり行ってみたいし、どんなにすばらしい絹製品だっていつかは朽ちてしまうのに対し、知識は後代に残るから。
もし自分だったら?
ふんだんな予算を与えられ、命を懸けて、日本の未来のために何かを持ち帰る使命を与えられたら、何を持ち帰るだろう?