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京都音楽博覧会2024 レポート 下巻

上巻ではここ10年ほどの音博の流れと、2024年に印象に残った出演アーティストについて書いた。

下巻では肝心かなめの2組のアーティストについて書く。
音博主催者であるくるりと、イタリアナポリからのアーティスト
Daniele Sepe & Galactic Syndicateについて書きまくる。


くるりとサポートメンバー

くるりのメンバーは変遷を経て😁、現在2人(ボーカル/ギター/作詞作曲 岸田繁・ベース/コーラス/編曲/社長 佐藤征史)。

サポートメンバーは、ギター松本大樹(まっちゃん)、キーボード野崎泰弘(のっち)、ドラム石若駿(若様)。
ライブの即興感は、音大卒ののっちと芸大卒の若様が軽やかにひきうける。お二人の力はいわずもがなである。理論を知ったうえでの即興なのだ。もう天才なのだ。若様のことを語りだすと10,000文字超えるのでやめておく。

私はまっちゃんが大好きだ。彼がスライドギターを開催中は、わたしの目がまっちゃんのギタテクを凝視している。ボーカルそっちのけでギターソロで舞台前方に出てくるまっちゃんに「きゃーーーー!♡」と黄色い声援を送っている。
このメンバー以外考えられない5人の男たちで2024年夏のライブハウスツアーも走り抜けた。

2024音博でのくるりと演奏者

京都音博はライブハウスとは規模も動員数も違う。観客もコアなくるりファンだけではない。そこにめがけてくるりたちは毎年趣向を凝らす。
交響曲を2本手掛けた繁氏にとって、管弦楽とのコラボレーションは自然な展開だ。今年は弦楽カルテット(バイオリン・ビオラとチェロ)が入った。第一バイオリンの後藤博亮さんは中学時代”くるりのコピバン”をやっていたというくるりファンだった。ここにも夢の実現者が。
その上、「Daniele Sepe & Galactic Syndicate」からダニエレ・セーペさんが入る。彼はイタリア・ナポリのサックス/フルート奏者であり、作詞作曲もする。

経歴を書いているだけでなんだか繁と似ている。ダニエレさんは「Galactic Syndicate」というそれはそれは信じられないくらいかっこいい楽団とボーカリストを率いて日本上陸したのだ。
「ナポリからシンジケートがやってきた!」とくるりファン界隈はとってもざわついた。

Daniele Sepe & Galactic Syndicate

Elektrika Pisulina (電気かたつむり!?)

くるりは自身のラジオ番組や単独ライブの登場時に「Elektrika Pisulina」を何度も流している。以前から布石はあったのだ。

音楽好きなら海外の楽曲の影響を受けるのは当然のことだ。自身も作曲しているならなおさら。それで終わらないのが繁だった。
昨年のオフにナポリに行った繁はSNSのDMを勢いでダニエレさんに送ったそうだ。くるりのアルバム「天才の愛」のSpotifyリンクも「ペッと貼り付け」て。
きっと海外のテンションがそうさせた、マジのラブレターだったんだと思う。
すると30分もしないうちにダニエレから返信があったそうだ。ダニエレさんはマメ男だった。

Instagramの投稿を見ると2023年9月23日付近にイタリアを旅している繁。そこから2024年の奇跡へとつながっていく。

「憧れるのはやめましょう」って名言を、体現してしまったのか繁は。
私も憧れのその先に進む勇気を貰った。完全に貰った。

「La Palummella」ナポリの美しい蝶

ダニエレさんへの愛の告白!?がきっかけなのか、どういう経緯で楽曲提供にまでこぎつけたのかは今のところわからない。
しかしすごい勢いで進行したことは想像できる。決定している夏のツアー直前の2024年4月、くるりとそのスタッフはナポリに飛び、2曲を完成させた。

La Palummella」は元々ナポリ民謡で、歌詞もイタリア語それもナポリ弁だそうだ。それをDJ野村雅夫氏が日本語に訳し、アレンジをダニエレさんが担ったという。どれだけの合作でできた作品なんだ。

民謡の土着感がベースにあるが、楽隊の鳴りがさまざまで楽しい。そこにくるりらしいギターとベースとElektrika(電子ね)が入ってくる。
歌詞は愛する人への切ない想いを蝶の羽根に載せて届けたいというものだ。(日本語だからわかる笑)


私は初聴きのとき、
・宝塚の舞台:ナポリの夜の海沿いコテージ、満月ではない。
・男役:(白のシルクシャツと黒パンツ)しっとりかつ情熱的に「La Palummella」を歌い上げている。
・娘役:(花に蝶が舞う柄のコットンワンピ。世間知らずのお嬢)アウトロ付近でそっとやってきて抱擁。
という演出を想像した。😂😂


壮大でドラマチック。確かにくるりの楽曲にはない部類だ。
Xで流れくる投稿をみると絶賛組ももちろんいるが、一定数の人がとまどっているようだった。
感覚は道標」の公開のときとは明らかに違う反応だと思った。「感覚」はくるりらしいくるりなので、ファンはただ身をゆだねて聴ける

「感覚は道標」くるり14枚目のアルバム

「La Palummella」は真剣に聴く

一瞬で好きになるほどリスナーは古典音楽を聴き慣れていない。
ロックやポップスばかり流れるFMで聴くと、唐突な感じを受ける。規則正しい拍子のイントロでおっ?と止まる。

この曲はしっかり耳をそばだてて聴くと良さが溢れ出す。歌の主人公の心の内が、繁の少し不安げな声を伝ってこちらの心に響いてくる。片思いしていなくても泣けてくるのだ。
同時に外国曲のカバーの域を超えた、くるりの仕込みがそこかしこに埋められている。それに気づくたび、くるりの音楽を愛おしく思うのだ。真剣に対峙するべき曲なのだと感じる。

岸田さんの歌い方の変化

今回イタリアから帰国しての夏のツアーでは、声の響かせ方が変化したように思う。
生で「La Palummella」を聴くと、イントロのドラムの正確さ美しさ、大きく展開して歌の本編に入るところなどに、ぞくぞくした。
雲の切れ間から抜けたグライダーがナポリの街の上を滑空しているような浮遊感がある。(そうか…蝶だった…)
腹の底から頭のてっぺんへ、上空へと抜けるような歌声。声楽的な歌唱を意識している繁が、別時空を目指し続けているのがまぶしい。

この音博でくるりはダニエレさんたちとのセッションを数多くこなした。ナポリの人たちが情熱やパッションをたくさん輸入して配っているに違いない。くるりたちもなんか違う。演奏中のクールさをかなぐり捨てた場面を多く見た。

音博アイコンの「京」ちゃんと音博フォント。かわいい。

10月12日土曜日 1日目

Daniele Sepe & Galactic Syndicate


ロックやポップスにしか馴染みがないフェス参加者は最初は少し戸惑うかもしれない。ただ彼らの音は間違いがない。”音楽博覧会”に我々はいるのだ。これが博覧会の醍醐味か!!!と脳が理解したなら、もうシンジケート一派の手下だ。

この曲はインド系?マハラジャ並みの群舞が始まっても違和感がない。と思いつつ中盤まで聴くとポリフォニーが展開される。青空を見上げながら踊りつつ聴いていると、多幸感が溢れだすのだ。

1日目、ダニエレさんのステージの終わりに、くるり登場。
Camel('Na Storia)」は、くるりの名曲「キャメル」のセルフカバーだ。今回、Daniele Sepeがリアレンジした。

なんてエレガントなキャメルだろう✨️とうっとりしながら聴いた。途中でダニエレさんのフルートが入ることで、暖かく懐の深い趣きになっている。キャメルに無国籍感とジャズ要素が溢れ出ていた。
まっちゃんのマンドリンが美しかったなあ…ともかくキラキラしたキャメルだった。

La Palummella」、オペラッタの一部のような面持ちと発声で歌う繁。(やっぱり舞台を連想する私の脳)
配信を熱心に聴いていたので、歌いだしちょっと出とちりした?いやわからん。私の勘違いにちがいない。

ダニエレたちと共に音博の舞台で披露する「La Palummella」は格別だったんだとおもう。固唾をのんで見守った。

↑ダニエレさんがセットしてくれた音博のセトリ↑  マメ男がすぎる!

くるり

ばらの花」という楽曲は、くるりファンガチ勢には「それよりマイナーリーグの曲やってくれていいねんで?」という位置づけだ。実際今年の純情息子(ファンクラブ)限定ライブでは演奏されなかった。

ただこの音博での「ばらの花」はイントロからいつもとは違うことがわかった。それはメインボーカルを追いかける弦楽四重奏の流麗な演奏の力。アウトロでダニエレさんが吹くフルートが夕暮れに響く。私が聴いた中で一番美しいばらだと思った。
編曲って、新たに息を吹き込んで原曲が持っているきらめきを更に際立たせることなんだな。

ブレーメン」は確か途中で一瞬のブレイクをおいてた気がする。ハッとするよね。いっときも油断ならない。悲しいけれど前を向く歌詞と弦楽が絡み合って、天女の羽衣がふわぁぁぁっと梅小路の上空を舞うような。素敵なアレンジだったな。もう一回聴きたい。

Time」、丁寧に丁寧に歌詞を紡ぐところ心に響いたなあ。
間奏で繁が「ダニエレーー」とサックスを促してたところ、腰砕けになるわほんまやめてかっこよすぎる。そしてダニエレさんの二刀流の粋さ!このままブルーノートで演奏お願いします。

California Coconuts」「ロックンロール」「潮風のアリア」、この流れのセトリにしたの誰なの?くるりか。ほんま涙腺崩壊するから。
なんで岸田繁って人は、心のひだの緊張をゆっくり解き、緩めるような歌詞とメロディを作りはるんやろうかと泣きながら思う展開だった。緩まると出るよね涙ね。
潮風のアリア」はイントロからダニエレさんのサックスがきて、涙腺崩壊(何回言うてるねん)
琥珀色の町、上海蟹の朝」はまたもやダニエレさん召喚。ラップにフルート入ってくるってなんて素敵なマリアージュなんだ。その上、ヒューマンビートボクサーSHOW-GOもいるんよ。大贅沢じゃ。どこまでかっこよくなるんだこの曲。

そして1日目の音博は終わった。明日もあるのに贅沢音楽を食べすぎた。

10月13日日曜日 2日目

Daniele Sepe & Galactic Syndicateとくるりとのセッション

上巻でも書いたのだがmiletちゃんが病欠したために時間が空いたのだ。
ダニエレたちだけのステージだけの予定が、その後くるりとのセッションがセッティングされた。

12日の1日目と同様「La Palummella」と「Camel('Na Storia)」が演奏された。
ダニエレたちの演奏とコーラス編成が分厚く支える音博バージョンのこの曲たちは幸せだと思う。それを梅小路で聴けることはどれだけ贅沢なことか。

1日目より安心して聴けたな、「La Palummella
「舞い踊れ!」と今日は歌いきった!!!!しげる!!!ブラボー!!!

3曲目は、この記事の冒頭でもYouTubeを貼った「Ekektrika Pisulina」だった。

ライブで聴くともう身悶えするぐらいのかっこよさ、ダニエレさんのサックスももちろんだが、今回来日したボーカルは男性で厚みと安定感のある歌いっぷりが終始さすがだと感じる。そこにコーラスが乗り、ドラムにキーボードにと、どんどん盛り上げていく。
昨日も同じ曲やってるのに、なんだ今日は?!ものすごいかっこいい!
なんだかトランス状態になってきた梅小路公園。
後半につれてBPMがどんどん速くなっていく。小憎い演出だぞ!
トランスはオーディエンスだけじゃなかった!あのくるりたちがギターやベースを演奏しながらぴょんぴょん飛び跳ねているじゃないか!!!

舞台上でくるりが飛び跳ねている(2度目)。にわかには信じられない。
これは…やっこさんたち、ものすんごい演奏を楽しんだな!!!!!
私たちも電気かたつむりをめちゃくちゃ楽しんだ!!!!!!これがライブの醍醐味。この瞬間の強烈なアドレナリン放出はなかなか味わえない。


くるり

miletちゃんの空きを埋めるがごとく、早めに2日目オーラスのくるりがやってきた。

Morning Paper」から始まる音博2日目のくるり、ああ…かっこいい。
若様のドラムと”On Base 佐藤征史”のテクニックが存分に味わえて、 ”On Guitar 岸田繁”が暴れまわるところがいつも好き。私はヘドバンしまくって暴れまわっている。

In Your Life」の安心感はなんだろう。 ”道はたしか”に、歩むリズムが心拍数みたいで安心するんだと思う。心拍それはBPM。
これからもくるりを追いかけ続けようっていうモチベーションを与えてくれるのが、「In Your Life」という楽曲なんだと思うわけです。

California Coconuts」、1日目も演奏されていたけれど、2日目で大号泣してしまった。それはなぜだかわからないけれど、ほら心が温かい気がして。歌詞にひっかけてみたが、言語化不可能だ。この歌詞は亡くなりそうな?人の視点でみた世界なので、いろんなことが梅小路の空を駆け巡るわけですよ。またも空を見ながら名曲を聴き、泣く。

音博で聴く「京都の大学生」は格別だ。その上、イントロののっちのピアノソロが終わったと思ったら、ダニエレさんがサックスで引き継いだ!しびれまくった。シャンゼリゼの野外ライブかと思う洒脱さ。
Daniele Sepeのサックスには情熱と色気が溢れている。そして前進する力。推進力。
なぜか繁、「じりじりと!」「音立てて!」と魂の叫びのような歌唱をしていて、観客が悶絶してぎゃあぎゃあ叫ぶ珍現象が。音博の醍醐味だなあ。
またも過去一の「京都の大学生」を頂いたと思う。

2日目も美しすぎる「ばらの花」と「ブレーメン」は、鮮やかなアンサンブルだった。弦楽アレンジは天に召される心地よさ。バイオリンのピッツィカート、ばらの花びらにかかる雨みたいだったなあ…。

「ぽんぽんとかよいしょとか言うてるけど、胸がいっぱい」
「憧れの人に会えたり、まさかのことが起こったり。
願ってたり思ってたりしたら叶うんやな、と」

京都音博2024/10/13 岸田繁の言葉(記憶を書き留めてるので不確か)

奇跡」。この曲のあいだ、ちょいちょい繁の声が震える。アレンジしてもらった自分の曲の弦楽の美しさで泣くやつがあるか!繁!(;_;)
それを見ていた私は勝手な曲解で涙が止まらなくなった。滂沱の涙とはこのことかと、自分でもびっくりした。
アウトロの弦楽が呼応して進んでいくさまは奇跡のように美しく、永遠に聴いていたかった。

音博最終曲の「宿はなし」、ここでも弦楽カルテットが素晴らしかった。
最後の「鈴の音は抱いた身体のーーー」のあと、繁ためたよねー(;_;)。
曲が、音博が終わってしまう。永遠にためていて欲しいくらいだった。
アウトロで弦楽カルテットが「宿はなし」の歌詞部分を輪唱するところ、梵鐘の残響がくるくると回りながら天へと昇るイメージが湧いた。神々しかった。なんだかいろんな宗教が混ざってるな私の感想。

天上の音楽を何曲も演奏してしまい、聴いてしまった京都音博2024のおわり。

平和と音博の効き目

「一期一会」という単語を繁が使っていたが、この2日間のこの場所での数々の音楽は全てが全力で楽しくかっこよく、観客としてとても楽しんだ。
ステージ上ではクールなイメージがある演者のみなさんも、今回は本音が出たり感極まったり、ええ言葉をたくさん伝えてくれたりした。

繁の想いは妄想から始まったのかもしれない。名も無い感情を音楽を愛する全てのひとに届くよう、形にした。あの音博が結実したのは強く願い行動したからこそなんだ。だからこそ誰もが心震える博覧会になったんだと思う。

「20年ダニエレの曲を聴き続けていた。シゲルも音楽のジャンルにボーダーを作らないんだね。と言ってもらって嬉しかった」

京都音博2024/10/13 岸田繁の言葉(記憶を書き留めてるので不確か)

Daniele Sepe & Galactic Syndicateが何者か知らずとも、彼らの音楽を聴けば虜になり、心をつかみ離さない。そこはかとないラテンのリズムに、日本のみんなも踊らずにはいられなかった。唯一無二の経験だった。

Daniele Sepeさんたちが暮らすナポリは、ヨーロッパの隣での止まない戦いが遠い存在ではないのだろう。彼のInstagramを見ていると静かに主張していることがある。広い公園で音楽を聴きながらのんびりできることを当たり前だと思ってはいけないのだ。ボーダーを作ることなく、みんなに等しく音楽が聴ける世界であることを願わずにはいられない。

あの音と光景を共有した人たちはみんな、音博の灯火を大切に地元に持ち帰ったんだろうな。2024年のエポックメイキングな音博を心に秘めて、自分の街で日々の生活に戻っただろう。それが音楽家が一番望んでいることではないかな、と思うのだ。

来年も晴れの梅小路で元気に集えるように、全ての方々の健康と平和を願いながらまた一年、頑張らなければね。くるりありがとう。

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(いつもは繁呼びなので、聴いた曲たちを思い出すと私の本性が繁って呼び捨てに…。敬称略ってことで許してね)

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