スイスワインの地⑥ DREI-SEEN:3つの湖
3つの湖沿いにあるブドウ畑はなだらかな丘陵地帯に広がっていて、
4つのAOCを持ちます。
※AOCとは”Appelation d'Origine Controlee”の頭文字。日本語で『原産地統制呼称』の意味。
湖があるために気温を和らぎ日光を反射させるので、夏のピークの暑さは軽減され、ブドウの木への霜の影響は緩和されるエリアです。
また、Molasseと粘土質土壌により、質の良いPinot Noirの生産に成功しています。
三つの湖の生産地について
AOCを面積の広い順に見ていきます。
AOC Neuchâtel
Neuchâtel湖の西岸に接するこのエリアは、最も広い面積(約610ha)を
形成しています。
主にPinot Noir(ピノ・ノワール)が栽培され、白ワインもChasselas(シャスラ)が有名です。ただし、特産品としてスパークリングワインや多くの賞を受賞したシャルドネも生産されています。
Pinot Noirからは赤ワインだけではなく、このエリア発祥のロゼワイン、L'œil-de-perdrix(ウィユ・ド・ペルドリ)が生産されます。
AOC Lac de Bienne
Bienne湖に接するこのブドウ畑は約220haにわたります。哲学者ジャン=ジャック・ルソーが滞在した、St-Pierre半島も含まれます。
このエリアの特徴である石灰岩が大半を占める土壌で、ChasselasとPinot Noirが主要品種です。Pinot Noirは属製のタンクか木製の桶、またはオーク樽で熟成されるため、個々に風味が異なります。
2000年代にブドウ畑が再編成され、小規模ワイナリーの実力が発揮しやすくなりました。また、AOCのルールに柔軟性があるため、かなり多様な品種のブドウが生産されています。
ただし、特に一流の生産者は様々なブドウを栽培できる好奇心にとらわれず、伝統的な品種で堅実なワインづくりを重ねているそうです。
選ばせていただいた写真は、良くスイス人画家によって描かれるスイスらしい空(灰色でどんよりしている)だと感じます。
AOC Vully
スイス高原の丘にその名を由来するVully AOCは、Neuchâtel湖とMorat湖の間に位置する150haのAOCです。
Vaud(フランス語圏)が50ha、Fribourg(ドイツ語圏)は100haを占めます。
恵まれた気候と、対比が面白く、ワインの質が高い(ダイナミズムのある)エリアとして愛飲家に知られています。
対比
フランス語⇔ドイツ語
Neuchâtel湖⇔Morat湖
Vaud⇔Fribourg
伝統的なワイン栽培技術⇔若いブドウ栽培者たち
Vullyで選ぶなら、Pinot NoirかGewürztraminerでしょうか。
Pinot Noirは土地の雰囲気がよく出ており、Gewürztraminerはライチのような独特なアロマを持つ、フルボディからミディアムボディの白ワインを生み出しています。
AOC Cheyres
Cheyresのブドウ畑はNeuchâtel湖の南岸に接しており、約14haヘクタールのみを占めます。
『3つの湖』エリアの中でも、Fribourg州の唯一のブドウ畑です。
この地域はワイン生産に非常に適した局所気候(Microclimate)の恩恵を受けています。
Cheyresはワイン畑自体は小さく、生産者さんたちはワインだけで生計を立てることは難しいと、Broyardワイン生産者協会の前理事は述べていました。
エリアそのものは湖とGrande Cariçaie自然保護区に近いため、多くの観光客が訪れています。
このエリアの表現するワインの一つに、Grivevinがあります。
この産地を代表する黒ブドウ、Pinot Noir, Gamaret, Garanoirをオーク樽で数か月熟成して作られます。
Cheyresの風味がすべて詰まっており、オリジナリティが表現されています。
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