スイスのブドウ品種① CHASSELAS / FENDANT:シャスラ
第一にお伝えしたいのはChasselasはそのまま、皮ごと食べても
甘くて美味しいブドウである、という点です。
そのため、何故辛口且つアルコール度数が低いワインが作られるのか
疑問に思っており、後日調べる予定です。
スイスを代表する、レマン湖エリア発祥の古い白ブドウ品種
土地の特徴を如実に表現するブドウの反映力と飲み比べの興味深さ
アジア圏の食事にもあうその包容力
景色や歴史と味わう楽しさ
原産地
2009年に、正式にChasselasの原産地がVaudであると証明されました。
シャスラ(Chasselas)に関する仮説は多数ありますが、現在では否定されているものもあります。
証拠なし、または否定された仮説
× その祖先は紀元前6000年頃、現在のイスラエルやヨルダンにあたる
ヨルダン渓谷で栽培されていた。
× その祖先は、5000年前にはエジプトでも知られていた。
× ルクソールの王家(エジプト王家の谷)の墓に描かれた壁画に
このブドウ品種が認識された(証拠なし)
× 古代ローマで最も重要なブドウ品種とされたAminea(アミネア)の
子孫がChasselasである(2009年に完全に否定)
証拠あり、または証明された仮説
ドイツの植物学者、Bock Hieronymus (1498-1554)が、1539年の著作『Kreütter Buch』でKleinfränkische, Großfränkische, Edel, Lautterdraubenという名前でこのブドウ品種に言及
1654年にNicolas de Bonnefons(ルイ14世の召使い)が彼の料理本『Les délices de la campagne』で初めてChasselasの名前を言及
Chasselasは、17世紀にはすでにFendantとしてレマン湖地域でその存在を知られていた。
Neuchâtel大学のスイスの生物学者 José Vouillamoz博士は、2009年に同僚のClaire Arnold共にChasselasのDNA分析を行いました。
その結果、この品種はオリエント起源ではなく、スイスのレマン湖畔に位置するVaudが発祥であると結論付けたのです。
それ以来、スイスにとってChasselasはより一層親しみの強いブドウとなりました。
現在のスイスではVaud, Valais, GenevaそしてNeuchâtelにおいて、Chasselasが生産されています。
名前の由来
Fendantの由来:
スイスValaisにおいて1966年から名称保護されているFendant。
Fendant = 割れる の意味を持ちます。
これは、ブドウの皮が非常に硬いため、指で押すと実が弾けるのではなく、割れることに由来します。
Fendantは、フランス人植物学者Johannes Bauhin(1541-1613)が1650年に死後出版された著作『Historia Plantarum Universalis』で初めて使用されました。
Gutedelの由来:
Baden等ドイツ語圏で呼ばれるGutedelにも由来があります。
Gutedel = 良い、高貴な
バーデン辺境伯Ludwig Wilhelm 一世(1677-1707)はトルコ戦争以来
ハプスブルク帝国のサヴォイ公 Prince Eugen(1663-1736)と
友人関係を築いていました。
サヴォイ公をバーデン辺境伯が訪れた際、ワインを愛する辺境伯は特に、Chasselasから作られた、”Fendant”と呼ばれるきらめく甘い白ワインを気に入ったと言われています。
サヴォイ公はChasselasの苗木をバーデンに送り、辺境伯がその領地に植えました。この白ワインは「良い」かつ「高貴な」ものとして認識され、最終的にGutedelという名前が生まれました。
DNA分析結果
Chasselasの親子関係はいまだ判明していませんので、似たブドウ品種のない
唯一無二のブドウといえるかもしれません。
Chasselasから作られたブドウの特徴
Chasselasから作られた繊細なワインはその土地の特徴を示すため、その地のテロワールを知ることができます。
可能ならば、楽しんでいただきたいことがあります。
日本料理(特に昆布出し、マツタケ等繊細な香り)とのペアリング
スイスの様々なエリアのChasselasの飲み比べ(ティスティング)
日本料理にChasselasが合うことは、現地のスイスワイン協会が明言しています。
また、私も、提供温度を調整することで、お鮨と完璧な相性を実現する
可能性を感じています。
飲み比べ(ティスティング)は、ワインがお好きな方にこそお試しいただきたいと思います。
同じブドウ品種のワインを、同じ国の中で比較することで、自身の好みもわかり、その土地柄も感じることができます。
なお、生産者さんの技量も当然ながら加味されますが、Chasselasに関しては土地が与える影響が大きいように感じます。
Vaudでは特に、気候もChasselasの風味に影響を与えるため、独特のアロマを持つChasselasが作られておりわかりやすいため、一部紹介します。
AOC Chablais(Vaud南東、Valaisに接する)
「pierre-à-fusil(火打石) 」と呼ばれる、マッチや鉛筆の芯を焦がしたような香りのシャスラを味わうことができます。
なお、この火打石の風味は、 Pascale Deneulin博士の研究によって二硫化水素由来であることがわかっています。
AOC Lavaux(レマン湖東側沿い)
骨格があり、ミネラル感とリッチさのあるChasselas。エリアによっては微発砲まではいかないが、炭酸を感じることもあります。
私の意見では、Eppesessが特に食事にあいやすく、飲み飽きしません。AOC Calamin Grand Cru:
甘みを強く感じるので、Grand Cruでも初心者の方に飲みやすいと思います。
AOC Dézaley Grand Cru:
辛口で、はちみつの香り。恐るべき熟成ポテンシャルを持ちます。
AOC La Côte(レマン湖西側沿い)
生き生きとしてフルーティな、シンプルなChasselasです。