音楽紹介:UKガラージ系のゲーム音楽と音ゲー曲(DJミックス付き)
こんばんは。ゲーム音楽DJ/キュレーターのすいそです。
11月2日(土)、「SHOXXXX」という音楽好き音ゲーマーが集うクラブイベントに出演してきました。そこで流したゲーム音楽DJセットを振り返りながら楽曲紹介をしていきます。
今回のセットは「UKガラージ」という音楽ジャンルを軸に、その要素を取り入れた楽曲や周辺ジャンルも織り交ぜたものになります。
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はじめに:音楽ジャンル「UKガラージ」について
UKガラージ(UK Garage / UKG)はハウスから発展した音楽ジャンルです。シンコペーションを用いたシャッフルリズムが特徴で、今日では特にツーステップのアクセントが入ったものを指すことが多いイメージがあります。
影響を受けたり与えたりした様々なジャンルとの関連性など色々話したいこともあるのですが、いったん端折ります。
こまけぇことは以下略で、ここからは1曲ずつ紹介しながら、選曲理由や好きなポイントを語っていきます!語るぞ!
01. Nasty! (Horny Stallion's Hard Mix) / baby weapon feat. Asuka M / beatmania IIDX 4th style
BPM127。baby weaponこと上野圭市が2008年にリリースしたアルバム「Rewind!!」から。ゲームでのジャンルはダンスポップですが、かなりハネてます。
イベントではTT的に前半のピークタイムにしてもらっていたので、1曲目から音ゲー曲でツカミにしていこうという理由の選曲でした。あとこのごっついウォーキングベースを箱で聴きたかったというのもありました。ビートがとにかく気持ちいいです。
02. Snacko Island Party! (Snacko Island Remix) / かめりあ / Snacko
BPM128。『Snacko』は2023年にSteamでリリースされた牧場生活系シミュADVです。この曲はそのサントラに収録されているリミックスのうちのひとつ。
音ゲーマー的にかめりあというとマッシヴでアグレッシヴでマキシマムでクレイジーなイメージですが、この曲はびっくりするくらい陽の気に満ちたボタニカ系のサウンドですね。音色やテクスチャの端々から作風の本質にある職人芸を感じます。ログドラムのような丸みのあるビートが特に好きです。
03. Seven (Explicit Ver.) / Jung Kook / JUST DANCE 2024
BPM125。ミックスでは前後に合わせて128まであげてます。BTSメンバーでもあるジョングクが2023年にリリースしたシングル曲。
もともと大好きな曲だったのですが無事『JUST DANCE 2024』にも収録され合法化。NewJeansらによってK-POPシーンからUKガラージが世界的なポップスのスタンダードなスタイルとして再認知を得ている今、この流れで絶対にかけたかった曲でした。ベースのアタックが強めなのが信頼できます。
04. come again / JamFlavor / REFLEC BEAT
BPM130。UKガラージといば00年代初期のJ-POPでも流行しました。その象徴がm-floの「come again」だったと思います。ただ、今回は原曲を流すのもベタすぎるなと思いJamFlavorというユニットのカヴァーを持ってきました。
スーパーアンセムともなるとカヴァーやリミックスが無数に存在するのですが、今回改めてかなり色々聴き比べて吟味しました。その中で、原曲の持つガラージの要素を最も受け継ぎつつボーカルやトラックに個性のある曲がこちらでした。ヤンチャなのにさっぱりとしたフロウが聴き心地よくて好きです。
05. survival dAnce / 4s4ki / モンスターハンターNow
BPM130。4s4kiが今年(2024年)リリースしたシングルで、『モンスターハンターNow』CMソングです。原曲は説明不要のTRFによる大ヒット曲。
今回の肝でした。ゲーム音楽の拡張をテーマにDJやキュレーションをしている自分にとって、ドンピシャな音楽性と属性を持った曲でした。
ハイパーポップ、ベースハウス、フューチャーリディムなどを取り入れつつも骨子はUKガラージ的なハネ。その参照先には、原曲がリリースされた当時(90年代中期以降)のJ-POP群もありつつ、先述のK-POPシーンからの今日におけるグローバルなブームもあると思っています。その上で、それらへの目配せをまったく感じさせないオルタナティヴなサウンドと構成。削ぎ落しまくった上でサビのメロをドロップにして尚且つもっかいサビやるのズルすぎるでしょ。
06. City Never Sleeps (HyperJuice Remix) / Dirty Androids, HyperJuice / REFLEC BEAT groovin'!!
BPM132。原曲はDirty Androidsによるドラムンベース。こちらは彼のアルバム「MOMENTS」に収録されたHyperJuiceによるリミックスです。
ドラムンベースとUKガラージは関わりの深いジャンルです。その親和性を新たな解釈で打ち出しているのが本当に素晴らしいです。BPMを落としているにも関わらずこの疾走感。原曲のソリッドで都会的な雰囲気も増幅されているように感じます。
終始渋めの構成でもキマっていたとは思うのですが、ちゃんとビルドアップがあるのがいいですよね。ドロップの入りが気持ちええのよ。
07. vs SAYU (NO STRAIGHT ROADS 1 YEAR ANNI MIX) / James Landino, Nikki Simmons, Alex Moukala / No Straight Roads
BPM132。EDMにロックで戦う音楽アクションRPG『No Straight Roads』楽曲のリミックスです。
アレンジに関わったのは原曲プロデューサーJames Landino自身と、彼同様ゲームミュージックフリークであるAlex Moukala。
ドラムンベース、ヴェイパーウェイヴ、パワーポップときて今度はこう来るかという衝撃。ゲームバージョンだけでもアレンジが多数あるので、よかったら色々聴き比べてみてください。日本語版もあります。
このアレンジは全編UKGというわけではないのですが、リリースカットピアノとサイドチェインで歯切れのいいシャキシャキのビートがかなり今回の流れと相性がよく、ドラムン原曲という共通点でも「City Never Sleeps」と繋ぎたくなる曲でした。
08. S・S・L ~スーパー・スペシャル・ラブ~ / Shoichiro Hirata feat. Yumi Kawamura / pop'n music 7
BPM132。オシャレJ-POPの名手・平田祥一郎と『ペルソナ3』などでお馴染み川村ゆみによるタッグ。ゲームではジュニアR&Bという不思議なジャンルが冠されていますが、まあガラージはR&Bの子孫……と言えなくもない……ので合ってるといえば合ってる……のか本当に。
平田祥一郎楽曲ではほかにも「Give Me A Sign」や「M-02stp.ver1.01」、「Luv 2 Feel Your Body」などツーステップ系が色々ありどれも最高なのですが、ポップン曲を入れたかったのでこちらにしました。それと、今回候補から最終的にやむなく外した『ペルソナ』関連曲への想いも込めて。
09. The Sunleth Waterscape (UKG Dub) / kyo / FINAL FANTASY XIII
BPM132。『FF13』の大名曲「サンレス水郷」のファンリミです。
オリジナルのイメージを活かしたアトモスフェリックなUKGアレンジ。ハイハット始め空間系を感じるパーカッションが気持ちいいですね。ベースも原曲より前に出ていてクラブ鳴りいい感じでした。途中コテコテのドやかましいアーメンが入る展開もかなり好きです。
10. Title Track / Alec Falconer / Buck Bumble
BPM134。NINTENDO64の3Dシューター『Buck Bumble』のタイトル曲です。
なんとこのバージョンは2022年リリース。ゲームから24年経ってます。どうやらAlec Falconerという音楽プロデューサーがUbisoftや作曲者のJustin Scharvonaと交渉しオリジナルデータからクラブエディットを作ったらしく、当時一部ゲーム音楽フリークの間で話題になりました。
かなりオールドスクールなUKガラージですが、かの『beatmania APPEND YebisuMIX』や「beatmania TOMOKI HIRATA」と同じ1998年のサウンドということで、ゲーム音楽でUKGミックスやるときは絶対に入れたいと心に決めていた曲でした。成就。
11. Shapeshifter / Avans / beatmania IIDX 31 EPOLIS
BPM134。恐らく、最新のアーケード音ゲーUKG(的要素を持つ曲)だろうと思っています。後半、比較的クラシックな音ゲー曲ゾーンがあるのですが、新しい曲もあってこそと思いここにこれを持ってきました。
うっとりコードでメロっと聴けちゃうんですが、ビートに着目するとすごく繊細で無彩色。そこから次々カオスに展開していくのがゾクゾクしますね。『DEEMO II』に収録された同氏の楽曲「All In」や「Dubblethink」等と比較してもかなり『IIDX』に焦点合わせて手数を増やしてきているのがわかって職人だなーと感じます。
12. Desires / 3R2 / Lanota
BPM135。『Rabi-Ribi』『Little Witch Nobeta』『Peeping Dorm Manager』などインディーゲーシーンでも活躍する3R2のアルバムから。
ニューロファンクばりのうねりと歪みのベースが強烈。そんでこんなにソウルフルなヴォーカルが乗っているのにアッパーすぎないトーンでまとまっているのが好きです。とても気に入ってます。
13. Portable Tragedy (Nu Dope Edit) / D.N. / ラジルギ2
BPM135。2024年3月リリースのマイルストーン系譜シューティング『ラジルギ2』の1面曲、そのエディット版です。雑誌「ニンテンドードリーム」付録CDに収録。
ゲーム音楽でこのジャンルのセットをやるなら『ラジルギ』は絶対に外せないピースでした。2005年から始まり、シリーズとしてはあまり途切れることなく様々な展開が続いていましたが、正式なナンバリングとしては19年越し。時代を超えたリブート感がまさにUKGらしいですね。
テックハウスやレイヴ系のサウンドが「Desires」からの流れにもうまくハマった気がしています。
14. VJ ARMY Part 4 Girl In The Rain / good-cool / beatmania IIDX 6th style
BPM135。「VJ ARMY」を構成する4つのパートをセパレート&エクステンドさせるという、音ゲーマーの妄想を実現させたような稀代のEPから。
30秒にも満たない原曲のパートを、まるで初めからこうだったかのような自然な展開で拡張していますが冷静に考えて相当ヤバイです。18年越しにカメラを引いたら誰も知らないヴォーカルがすぐ側に立ってて急に歌い始めたわけですよ。お前もしかしてずっとそこにいたのか。
原曲ではドラムンベースからツーステップへと変遷しているのが何気に肝です。ドラムンベース、UKガラージ、ツーステップの関係性については次項にて。
15. jelly kiss ('Kobo's step style) / Togo Project feat. Sana / beatmania IIDX 6th style CS
BPM135。サントラ限定アレンジのため動画は原曲です。
リミキサーはkoboこと小堀修一。近年では『Hi-Fi RUSH』でごりごりのギターサウンドを手掛けていますが、KONAMIに関わっていた時代は「PATRIOTISM」「I FIGHT ME」「Searching...」「Happy Life」などドラムンベースを主に提供していました。『メタルギアソリッド4』でもパーカッシヴな曲を多く手掛けています。
本稿はじめのジャンル紹介では端折りましたが、超ざっくり言うとアメリカのハウスがUKのドラムンベースと融合してUKガラージが誕生し、さらに発展したのがツーステップです。
このアレンジもハイハットやキックがかなりドラムンベース的な配置になっていて、オフビート一族の血筋をしっかり感じますね。
16. traces -tracing you mix- / TaQ remixed by kors k feat. U / beatmania IIDX 9th style
BPM136。原曲は『beatmania IIDX 7th style』収録のトランスです。あの原曲を聴いてツーステップにしようと思い、それを実現させたセンスと胆力に永遠に拍手を送りたいくらい、本当に稀有で秀逸なリミックスだと何度聴いても思います。
今でこそkors kの音楽的アンテナ力や造詣の深さを我々はよく知っていますが、『IIDX』の2曲目の提供でこれですからね。エンターテイナーすぎて奮い立たされます。
ベタな繋ぎとは思いつつも、やってみたら最高すぎて何より自分がアガったので信じてよかったです。
17. ネオンライト (feat. 星宮とと) / TEMPLIME / MUSE DASH
BPM135。KBSNKとtempuraによる音楽ユニットTEMPLIMEが2019年にリリースし、その名を世に知らしめた象徴的楽曲。
いわゆるインターネットミュージックやKawaii系、またはVシンガーの文脈で聴かれることの多い曲だと思うのですが、自分の出るイベントではそっち寄りの楽曲って全然流れないんですよね。どちらかというと他界隈のアンセムという印象があり、自分としては分け隔てなく聴いているだけだったのですが、相対的に面白味のあるアクセントになるかもと思って終盤の流れに持ってきました。
あとシンプルにビートが強くてロングミックスが気持ちよく決まるので、前後の繋ぎが楽しかったです。
ちなみに同じTEMPLIMEと星宮ととの組み合わせでは『DANCERUSH STARDOM』に「Tropical White」が収録されていて、今年『CHUNITHM LUMINOUS』に「lucky omen」が、『DEEMO II』に「SUICHU」という曲が収録されました。どれもイチオシです。
18. Juvenile Days (Feat. Chaerin) / LEVEL NINE, Seibin, OSUM / 勝利の女神:NIKKE
BPM135。今年7月に実装されたゲーム内イベントのテーマ楽曲でした。その後のエヴァコラボイベントでもインスト版がマップBGMに使われていたので、人によっては今夏相当回数聴いたであろう曲。自分もひと月くらい毎日聴いていました。
NewJeansを経由した今日、こういう青春をイメージさせるサウンドとしてUKガラージがもう普通に使われてるんですよね。いい時代になりました。この曲はジャージークラブ的な五つ打ちも入っているので、かなり狙っていると思ってます。
『NIKKE』は音楽も本当にクオリティが高くて、イベントごとに新曲がドカドカ追加されるヤバコンテンツです。今年からリアルタイムで楽曲のデジタル配信が随時行われるようになったので、アプデの楽しみが倍増しました。
UKG系でいうと、ショップBGM「I FEEL SO ALIVE」や去年の夏イベのミニゲーム曲「Sweet bite」などちらほらあり、どれもオススメです。
19. Light of Life / polluX Musiq / 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL
BPM135。『スマブラSP』メインテーマ「命の灯火」のファンリミです。この曲がこんなにツーステップと相性がいいとは思わんやん。
セトリを考えているタイミングでちょうど「桜井政博のゲーム作るには」が最終回を迎え、候補曲だったものがめでたく当確になりました。個人的に、時事ネタをちょこっと挟むというのは新曲を積極的に扱うのと同じくらいDJのマインドとして大事にしています。
20. Ain't It Good (Remastered Radio Edit) / Tomoki Hirata / beatmania APPEND YebisuMIX
BPM134。音ゲー、延いては日本のUKガラージのパイオニア。今回はこの曲が前提であり、この曲があってこそ完成するミックスでした。
2年前(2022年)に突如「Ain't It Good (Goo Goo Garage Mix)」がリリースされ、TLの全員がこの曲を聴いてるんじゃないかという現象が巻き起こったのですが、こちらのリマスター版はなんと2024年9月リリース。本イベントのゲストを発表した直後でした。結果的に、このセットの中でもっとも新しくリリースされた楽曲になりました。
何年も前からずっとUKGセットをやりたいとは考えていたのですが、最高のタイミングでやることができました。すべての縁に感謝です。
UKガラージはアタックの強い、レガートをあまりしないベースが肝だと個人的に感じています。そのメリハリと、タメ、食い、ハネによって生まれる独特のグルーヴが好きです。密度ではなく隙間を聴かせる音楽とも言えるかもしれません。
そしてこの曲ではビートだけでなく、ヴォーカルもブラスもクラビネットもそれに参加していて、どの音を追っかけても気持ちいいんですよね。音ゲーマー的な譜面感覚でいうところの、小節線に乗らないノートの妙みたいなものがあります。
さて……ここからは完全に裏テーマというかエゴ的な話です。
今回新旧織り交ぜながらも、古い曲のリミックスやカヴァーを多く使っていた意図として、UKガラージそのものが昨今のリバイバルと再スタンダード化によって完全に時代を飛躍・超越したジャンルになったと思っていて、それを感じてほしかったからというのがありました。
「SHOXXXX」は懐かしめの音ゲー曲がよく流れるイベントではあるのですが、懐古主義だけに留まらない、新しい音楽(これは単に最新の音楽を指すだけではなく、DJの選曲や繋ぎによって生まれる新鮮な解釈という意味も含まれます)との出会いの場でもあると思っています。
自分たちのDJによって、音楽面白い、楽しい、新しい音楽もっと聴きたいと少しでも思っていただけたらとてもうれしいです。
最後に:イベントと自分のことについて
「SHOXXXX」は音楽好き音ゲーマーが集うイベントです。大体年に2回くらい東京で開催しています。振り返り配信や増刊号も含めてオンラインでもちょこちょこやっています。Xのイベントアカウントで情報発信していますので、ぜひフォローお願いします!
自分は今後も「ゲーム音楽」「音ゲー曲」×「音楽ジャンル的解釈」「周辺曲(リミックス・版権曲)」のスタイルでやっていきます。DJだけでなく、このnoteでもキュレーション記事を書いたりしているので何卒です。
そんな感じで、それではまた。