ゲーム周辺曲とは何か:ゲーム音楽という領域を拡張し続ける辺境のジャンルについて
ゲーム周辺曲とは、CM曲、タイアップソング、ゲーム原作メディアミックス作品主題歌、それらのカヴァーやリミックス、そしてゲーム音楽を原曲としながらゲーム外でアレンジされた楽曲など、ゲーム音楽として語られることがあまりない、でもまったく関係ないとも言い切れない、そういったカテゴリの曲を表す言葉として私が提唱しているものです。
ゲーム周辺曲の面白いところは、必ずしもゲーム関連曲とは限らないという点です。境界はかなり曖昧でここを区分けすることが本題ではありませんが、どちらかというと、ゲーム周辺曲はゲーム関連曲を包括している概念です。
たとえば、Molokoの「Sing It Back」はゲームのために書かれた曲ではありませんが、『beatmania APPEND GOTTAMIX 2』に収録されていたためそのゲームのプレイヤーにとっては充分にゲームに関連した楽曲です。そしてSAWAによる「Sing It Back -Extended Club Mix- Japanese Ver.」は、ゲームとの直接的な関連性はありませんが、『beatmania APPEND GOTTAMIX 2』プレイヤーが聴けば同様にゲームを想起させるでしょう。この現象と、TVでTOYOTAのCMが流れてまらしぃの「プレリュード」が聞こえてきた時に「『FF』だ!」と思うこととに本質的な違いはないと考えています。どちらもゲームとは直接関連しない場所でカヴァーされた楽曲です。
少し抽象的な言い方をすると、ゲーム音楽DJが何らかの理由を付けて/文脈を込めてゲーム音楽パーティーでその曲を流せるのであれば、それは少なくともゲーム周辺曲と言えるでしょう。
尚、これらの定義や考え方は「これは〇〇だから〇〇ではない」といった排他的な議論のためのものではありません。むしろその逆で、誰かがそう思えばあれもこれもゲーム周辺曲なのです。
ゲーム周辺曲とは、あらゆるゲーム音楽の最も外周にある薄ぼんやりとした境界線です。
中心にゲーム音楽(ゲームの中にある音楽)があり、そこから線で繋がったゲーム関連曲(ゲームの中から外へとはみ出た、あるいは外から中へとめり込む音楽)があり、さらにそのまわりに、ゲーム周辺曲(ゲームの中から離れていった、あるいは外から近づいてきた音楽)がある、というようなイメージです。
そして、あなたがゲームの中からはみ出た/離れていった音楽を発見するとき、あなたがゲームの外から近づいてくる/めり込んでくる音楽を観測するとき、あなたのゲーム音楽という領域が拡張します。
インディーゲーム『URBANO - Legends' Debut』にMIDICRONICAの「lunch box」がBGMとして使用されることが発表されました。
『ライザのアトリエ』がアニメ化し、オープニングテーマが三月のパンタシアの「ゴールデンレイ」になりました。
ザ・リーサルウェポンズが『ストリートファイターII』の「ケンのテーマ」に歌詞を付けた「昇龍拳が出ない」をリリースしました。
SEGAの音ゲー『CHUNITHM』に、エイプリルフール企画で鈴木雅之の「違う、そうじゃない」が収録されました。
元ナムコの中塚武がソロアルバムで『ニューラリーX』をサンプリングした「My Honey X」という曲を作りました。
「CABA Vol.3」という企画アルバムで声優の立花慎之介が「Eyes on Me」をカヴァーしました。
実写映画『ときめきメモリアル』で広瀬香美が書き下ろした「セピアの夏のフォトグラフ」を吹石一恵が歌いました。
倖田來未のリミックスアルバムでHOUSE NATION(Sunset In Ibiza)やTeddyLoidが「real Emotion」をリミックスしました。
『ソニックウィングス』のキャラクター、真尾まおのニューシングルが東京ゲーム音楽ショー2023で販売されました。
良かったら、あなたのゲーム周辺曲を教えてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?